勝った佐藤康光九段(右)と羽生善治九段。両者の表情からは疲労の色が見て取れた=27日、静岡市葵区、村瀬信也撮影

第78期 順位戦A級 最終一斉対局


23:51

糸谷八段「幸運でした」

糸谷八段―久保九段戦は午後11時51分、久保九段が投了(負けの意思表示)。糸谷が119手で勝ち、今期A級の成績を4勝5敗として、自力で残留を決めた。この結果、残る一つの降級枠は木村王位と決まった。

勝った糸谷八段は、本局を振り返って、「あんまり、やってない将棋なので、ちょっと、こわかったんですけど。桂を取ったあたりは少し有望かなと思っていたんですけど。その後、全然分からなくなってしまって。最後は、歩を打つ(101手目▲6二歩~103手目▲5二歩)のでは負けにしたかな、と思ったんですけど。ただ、(自玉の)寄り方がよく分からなかったので。実戦は幸運でした」と話した。本局を制した糸谷八段は、自力で残留を決めたが、今期A級を振り返って、「苦しいスタートで、途中で勝てたんですけど、逆転負けもあったので、そのあたりを来期は頑張りたいと思います」と話した。

記者から「佐藤天彦九段も、木村さんも勝たれてたんで……」と言われると、「そうだったんですか」と糸谷八段は思わず苦笑い。「それは……。じゃあ、負けたら落ち(=降級)だったんですね」と漏らし、「まあ、負けたら、普通は落ちるものなので。そう思って、やってました」と語った。

敗れた久保九段は本局を振り返って、「やりたい課題の局面だったので、やってみようと思ったんですけど。その瞬間、難しいというか、悪くしたかなと思ったんですけど。やってるうちに、結構、大変かな、と。途中、終盤は、もう、ちょっと、よく分からなかったですね」と述べた。今期A級については「また来期、頑張りたいと思います」と答えた。(佐藤圭司)



 


木村王位「つらいですけど、また頑張りたい」

糸谷哲郎八段―久保利明九段戦が終わった時、木村一基王位は既に自室に戻っていた。電話をかけることがはばかられたため、記者は「コメントなしでも結構です」と断りながら木村にメールを送った。すると、木村から電話があり、コメントをしてくれた。

「精いっぱいやったので仕方ないところです。できの悪いのが多かったですね。(佐藤)康光さんのも勝ちを逃して、(佐藤)天彦さんとのはすっぽ抜けがあり、久保(利明)さんとのは踏み込めばいいのに逃した。つらいですけど、来期また頑張りたいです」

勝って対局を終え、「やることはやった」という心境だったのか、明るい声だった。



 


渡辺三冠「結果を重視したいと…」

9戦全勝で名人挑戦に花を添えた渡辺明三冠は「後手番なので、極端に(形勢が)悪くならないようにと思って進めていた。駒得になって、いいかなと思った。今まで取れなかった星で、2年前に降級してしまった時には想像していなかった。今まではA級で挑戦争いができなかったので、内容は二の次で、結果を重視したいと思っていた」と話した。

三浦弘行九段は「読み筋通りの進行だったが、大局観が悪かった。開幕から年末まではいい将棋が指せたと思うが、年明けから悪くなった。来期は1年を通して納得のいく将棋を指したい」と話した。