鈴木九段「もう振り飛車ではない」
日本将棋連盟の常務理事として対局場を訪れている鈴木大介九段(45)に、5局の現状について聞いた。佐藤康光九段は向かい飛車にした後、中住まいに構える独創的な布陣。振り飛車党の鈴木九段は「これはもう振り飛車ではないですね」と評している。
佐藤康光九段―羽生善治九段、独創性を発揮
木村一基王位―広瀬章人八段 矢倉模様
佐藤天彦九段―稲葉陽八段 矢倉模様
三浦弘行九段―渡辺明三冠 相懸かり模様
9:10
出だしから手が止まる
佐藤康光九段の先手で始まった佐藤―羽生善治九段戦は、▲7六歩△3四歩の出だしから佐藤康の手が止まる。8分考えて3手目▲7七角と上がった。羽生も7分考えて同角成と応じる。開始早々、かけひきがあった。
瞑想する佐藤天彦九段
佐藤天彦九段―稲葉陽八段戦は、佐藤天が初手を指すまで約1分瞑想(めいそう)。負ければ降級の可能性がある佐藤天が集中力を高めていた。
糸谷八段「少し寒いですね」
糸谷哲郎八段-久保利明九段戦は、糸谷が先に入室。ホテルから対局室に向かう際、記者は偶然、糸谷と同じエレベーターに乗り合わせた。「少し寒いですね」と糸谷は自分から話しかけてくれた。サービス精神旺盛な糸谷らしい、と記者は思った。一方の久保は、いつも以上に精悍(せいかん)な顔立ちだ、と記者は感じた。降級が決まった8回戦の対局の直後に、久保は「来期の順位戦に向け、今期最終戦も全力で行きたい」と話していた。全力投球する構えだ。対局が始まると、先手番の糸谷は気合をこめて、初手を指した。(佐藤圭司)
渡辺三冠、借りを返す勝負
8勝0敗で既に挑戦を決めている渡辺明三冠は、4勝4敗の三浦弘行九段と対戦。先手の三浦が相懸かりを選び、駒組みが進んでいる。ほどなくして戦いが始まる可能性もある。
渡辺―三浦戦は、2年前のA級最終戦と同じカードだ。その時は共に4勝5敗で、敗れた渡辺が降級の憂き目に遭った。渡辺にとっては、その時の借りを返す勝負でもある。
三浦の席の周りには、用意されたお茶だけでなく、ティーバッグやお湯が入ったポットなどが並んでいる。普段の対局と変わらない三浦のスタイルだ。
お茶を飲んでから△8四歩
3勝5敗の木村一基王位は4勝4敗の広瀬章人八段と対戦している。今期9期ぶりにA級に復帰した木村は、敗れると降級が決まる。勝っても、佐藤天彦九段と糸谷哲郎八段が共に勝つと降級となる厳しい状況だ。
まず注目は、先手の木村の戦型選択だった。今期の木村は、「初手▲2六歩」からの相懸かりを多用しているが、1月のA級7回戦の三浦弘行九段戦では、「初手▲7六歩」から矢倉を選んでいた。
初手に1分を使った木村の選択は▲7六歩。それを見た広瀬は、お茶を一口飲んでから△8四歩と指した。相手の意思を読み取り、一呼吸置いたようだった。その後、矢倉の駒組みが進んでいる。