勝った佐藤康光九段(右)と羽生善治九段。両者の表情からは疲労の色が見て取れた=27日、静岡市葵区、村瀬信也撮影

第78期 順位戦A級 最終一斉対局


青野九段「糸谷君の立場だったんですよ」

A級順位戦で残留争いをした経験を語る青野照市九段(左)。共に立会人を務める桐山清澄九段もすぐ横で話を聞いていた=27日、静岡市、村瀬信也撮影
A級順位戦で残留争いをした経験を語る青野照市九段(左)。共に立会人を務める桐山清澄九段もすぐ横で話を聞いていた=27日、静岡市、村瀬信也撮影

今期A級は久保利明九段(44)の降級が既に決まっている。前期成績に基づく順位が1位の佐藤天彦九段(32)、4位の糸谷哲郎八段(31)、10位の木村一基王位(46)のうち1人が降級となる。A級に11期在籍した立会人の青野照市九段(67)は、ほぼ同じ状況での残留争いを経験している。

「私は、『今日の糸谷君』の立場だったんですよ」

第43期のA級順位戦(当時の名称は「名人挑戦者決定リーグ戦」)。1985年3月11日の最終戦を迎えた時点で加藤一二三九段(80)、青野九段、田中寅彦九段(62)の3人が2勝5敗で並んでいた。この時の降級枠は1人。前期成績に基づく順位は加藤九段から順に2位、8位、10位で、青野九段は自身が敗れ、田中九段が勝つと降級となる。自身が敗れ、木村が勝つと降級が決まる糸谷と同じ立場というわけだ。

では、その結果は?

「全員負けて、寅ちゃんが降級したんですよ」

加藤九段は勝浦修九段(73)、青野九段は森けい二九段(73)に敗戦。3人が2勝6敗で並び、田中九段が降級した。

「あ、その時の寅ちゃんの相手は、桐山先生だったんじゃないかな」

その記憶は正しく、田中九段が敗れた相手は、今回青野九段と共に立会人を務める桐山清澄九段(72)だった。検討室ですぐ隣にいた桐山九段も、それを聞いて笑みを浮かべていた。(村瀬信也)