フランスが福島原発前後のカリフォルニア産ワインを放射能鑑定してみたら… | ギズモード・ジャパン

放射能が検出されないのは、大戦前の超ビンテージワインのみ。


ワインは究極の長期保存食。

ヴィンテージワイン。何十年も昔のぶどうに含まれていた、微量で無害な放射性炭素を測定することで、その年代はかなり正確に鑑定できます。この手法が一躍注目を集めたのは、世界で一番高いワイン、ジェファーソン・ボトルの鑑定で使われたことがきっかけでした。

ワインの鑑定はハイテクの出番

初代大統領ワシントンのためにワインの買い付けなども行っていた第3代大統領トーマス・ジェファーソンは、アメリカ初のワイン収集家としてその名を知られます。そのイニシャル「 Th.J 」が刻印されたシャトー・ラフィット1787は、「革命前のパリで在仏大使当時に購入したものがパリで見つかった」として1985年に競売にかけられ、経済誌フォーブス発行人マルコム・フォーブス氏が16万ドル近い高値で買い取り、今に至るまでワイン1本の値段の世界最高記録となっています。

これで話題を聞きつけたコーク一族の大富豪ウィリアム・コーク氏も約50万ドルでボトルを4本購入し、長年自宅のセラーで試飲会を開くたびに取り出して自慢していました。

ところがある日、ボトルを一般公開するにあたりボストン美術館に鑑定書を求められたコーク氏がトーマス・ジェファーソン財団に問い合わせてみたところ、記録魔のジェファーソンの記録に一切残っていないことが判明。収集品にお金に糸目をつけないコーク氏は詐欺を絶対許さない男でもあります。発見者とされるドイツの収集家ハーディ・ローデンストック氏を詐欺で訴え、世界的なスキャンダルとなりました。

けっきょく、調査を依頼された元FBI捜査官が防弾のアタッシュケースでアルプス地下深くの研究所まで運び、1週間かけて鑑定したのですが、放射性同位元素セシウム133は検出されず…。

世界で初めて原爆実験が行われた大戦当時よりは古いワインとわかり、最後はエッチングの加工が18世紀にしてはハイテク過ぎるという話になっていたのですが、渦中のローデンストック氏は疑惑をついぞ一度も肯定することなく今年6月に他界、真相を墓場まで持っていってしまいました。

福島原発事故の影響はわずか

仏産ワインで検出されるセシウム137の含有量。これでワインヴィンテージは大体わかる
Image: 2018-07-22 – Fukushima and California Wines

そんなこともあってワインとセシウムは切っても切り離せない関係にあります。そこでこのたび、フランス国立科学センターの核物理学者Michael Pravikoffさんがたまたま店でカリフォルニア産ワインを手にとったときに「福島第一原発事故の痕跡は出るんだろうか?」とふと閃き、2009年~2012年産の18本の放射性物質をボルドー大学のチームで調べてみることにしました。

すると、事故後は微増したものの年々減っており健康には影響がないことがわかりました。あまりに微量なため、ワインを高温で煮詰めて灰に含まれる成分を調べ、やっとのことで数値を得たそうで、 「世界各地の自然界の濃度に比べてもまだ低いほどだ」とNYタイムズに語っています。どちらかというと、ロゼよりは赤のカベルネソーヴィニヨンの方が多いみたい。

まあ、しかし、こういう論文が公開され、「痕跡あり」というタイトルで広まると、「煮詰めてやっと検出された」という詳細まではわからなくて「痕跡あり」というタイトルだけが広まっちゃいますよね…

上のチャートを見るとわかるように、戦後のワインはみな放射線の痕跡があるんです。世界中の大気に含まれているのだから。含まれていないのは、ジェファーソン・ボトルとかの超ヴィンテージだけ。

核実験が狂ったように行われていた冷戦当時のワインがピークで、1957年産ワインなんて今の何百倍も含まれています。核実験禁止後は年々漸減していて、福島第一よりチェルノブイリの事故の方が影響は深刻でした。

チェルノブイリのときは欧州産ワインが不買運動になったり大変だったので、同じことがカリフォルニアでも起こっていないかと思ったのが研究動機なのだとか。いやはや…。

Source: NY TimesMIT Technology Review

情報源:フランスが福島原発前後のカリフォルニア産ワインを放射能鑑定してみたら… | ギズモード・ジャパン


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