【勝負師たちの系譜】静岡での「将棋界の一番長い日」　一斉対局で午前３時決着の熱戦－zakzak

いちばん最後は、豊島将之九段 vs 菅井竜也八段

2022.3/13 10:00

８勝１敗で名人戦への挑戦権を手にした斎藤八段（左）＝筆者撮影

Ａ級順位戦の最終一斉対局は、以前から『将棋界の一番長い日』として、棋界一注目される日である。ここ数年は、この日を静岡市の駅から近い１５代徳川慶喜公の住居跡、『浮月楼』で行われている。

静岡市は徳川家康公が、初代大橋宗桂に将棋所（家元）を認め、５０石の扶持を与えたということで、名人発祥の地として、名人戦や最終局を誘致している。

今年の一斉対局は残念ながら、すでに挑戦者が斎藤慎太郎八段。降級者は羽生善治九段、山崎隆之八段の２人と決まっていた。それでもＡ級棋士全員と、解説に渡辺明名人という豪華メンバーが揃うイベントは、他にはない。

昨年はコロナで前夜祭がなかったせいか、今年も前日の開幕式には大勢の申し込みがあった。開幕式では、棋士一人一人が簡単な挨拶をした。羽生九段は降級が決まって、何を言うかを期待した人もいたようだが、ここでは進退は言わず、明日の将棋を頑張るというのみで終わった。

ただ、ほとんどの棋士が言ったのは、タイトル戦のような雰囲気を作って頂いたことへの、感謝の気持ちだった。

挑戦や降級に関係ない人でも、勝敗が全く関係ない訳ではない。例えば糸谷哲郎八段などは、勝つか負けるかで、来期の順位は勝てば２位、負ければ５位まで下がる可能性がある。広瀬章人八段に至っては、２位から７位までの可能性があるのだ。

今期は順位の差での降級はなかったが、例年はよくあることなので、順位一つは来年の勝ち星一つと考えると、来期順位戦の開幕戦のようなものである。

結局最も早く終わったのが、斎藤―糸谷戦で、糸谷の勝ち。糸谷得意の角換わり早繰銀から敵玉頭に狙いをつけた構想がピタリと決まり、最後はプロ棋戦では滅多に出ない、華麗な必死が決まって快勝。

斎藤としては、全勝で挑戦したかったろうが、２期続けて８勝１敗での挑戦は見事。全勝での挑戦は過去、奪取の可能性が高いが、開幕式の時に渡辺にそれを言うと「全然関係ない」という態度が面白かった。どうやら藤井以外なら、という意味に聞こえた気がした。

最後まで残ったのは、豊島将之九段―菅井竜也八段戦で、午後１０時４２分に千日手成立。３０分後に指し直して、終局は午前３時１８分。朝９時からの開始だから、通常（午前１０時開始）なら朝４時過ぎの終局と同じだ。

順位一枚と、プロとしての意地で、まさに一番長い日となったのである。

情報源：【勝負師たちの系譜】静岡での「将棋界の一番長い日」　一斉対局で午前３時決着の熱戦（1/2ページ） – zakzak：夕刊フジ公式サイト

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— zakzak (@zakdesk) March 13, 2022

▲豊島将之九段－△菅井竜也八段

千日手局
111手 6四歩まで、22時42分千日手成立

▲菅井竜也八段－△豊島将之九段

指し直し局 23時12分対局開始
初手は、▲菅井八段５六歩、△豊島九段 8四歩

終局は4日の3時18分
166手 2二金まで、△豊島九段の勝ち

2022-03-04 第80期順位戦Ａ級

☗菅井－☖豊島　千日手指し直し局　終局

この局面で菅井八段が投了し、豊島九段の勝利となりました。終局時刻は３時18分。消費時間は、☗菅井５時間59分、☖豊島５時間59分。勝った豊島九段は５勝４敗、敗れた菅井八段は３勝６敗です。

◆豊島九段の談話

――千日手局も含めて、すごく長い戦いでした。感想をお願いします。

豊島　千日手局は、悪い局面が多かったかなと。指し直し局は二転三転して……。

――諦めかけたところもあったんでしょうか。

豊島　馬を切られて（113手目☗３二馬）、いきなり危ないですね。☗３九角で☖同金みたいになるのかなと思っていたんですけど、馬を切られて駄目にしてしまいました。

――どこで勝ちになりましたか。

豊島　最後のほうは、手が全然見えていないので。最後は端を突いた手（164手目☖１六歩）に☗同角でも分からないなと思っていたので。

――今期の順位戦を振り返って、いかがですか。

豊島　内容が悪い将棋が多かったです。

◆菅井八段の談話

――長い一日でしたが、いまの感想は。

菅井　指し直し局は勝ちだったんですけどね、段々と手が見えなくなってしまいました。

――最後のほうは時間もなかったと思いますが。

菅井　いやあ、ちょっともう、すごい悪い手をいっぱい指した気がします。

――今期の順位戦を振り返って、いかがですか。

菅井　終盤で逆転負けが多かったですね。

――来期については、いかがですか。

菅井　はい、頑張りたいと思います。