(香川愛生の駒音だより)失敗した事実は消えない:朝日新聞デジタル

ほぉ・・・


2017年11月28日 5時00分

香川愛生女流三段
香川愛生女流三段

12月以降、無料通信アプリ「LINE」に送信取り消し機能が搭載される。メッセージの宛先や表現を誤っても、ケアができるようになるが、気軽に失敗を取り消せるという点には、ちょっとした後ろめたさを感じている。

私が将棋を始めたのは小学3年のときだった。引き込まれた一番の理由は「待った」のできないルールだった。負けず嫌いで、失敗を受け入れられなかった当時は、ゲームでリセット機能に頼って、不本意な失敗をなかったことにするような子どもだった。

だが将棋は違った。実力者の友人に笑われても、手を戻すことは許されない。「負けました」とまで言わされたときは、暴れ出しかねない勢いだった。再戦を挑んでも悪手と負けを繰り返し、たくさんの駒を取られ、初めは苦痛だった。

失敗から逃げずに向き合い、その都度、反省もして得られたものは大きく感じられた。決して優秀ではない自分は、多くの失敗、努力を経て教訓や財産に変えられたと今なら思える。

そんな子どものころの、甘えたい、逃げたい気持ちを自覚しているだけに、今回の機能にも抵抗があるのかもしれない。メッセージを簡単に削除できたとしても、失敗した事実は消えない。せめて同じ間違いだけはしないよう、対局の着手の前にもう一度読みを入れ直すのと同様に、「送信」を押す前に手を止めてみたい。

(将棋女流棋士)

情報源:(香川愛生の駒音だより)失敗した事実は消えない:朝日新聞デジタル



へぇ・・・