(香川愛生の駒音だより)新海作品の世界で指したら:朝日新聞デジタル

ほぉ・・・


2017年11月21日 5時00分

香川愛生女流三段
香川愛生女流三段

東京・六本木の国立新美術館で、「新海誠展」が開催されている。「ほしのこえ」から「君の名は。」まで、数々のアニメーションを手がけた新海監督の15年間の歩みと、その世界が展示されている。

新海監督の描く新宿エリアと、千駄ケ谷の将棋会館はご近所である。数ある展示の中でも新宿御苑や時計塔などの見慣れた風景や、そのほとんどに描かれる様々な空の表現の前には、思わず立ち止まってしまう。

将棋会館の対局室の窓からは、鳩森(はとのもり)八幡神社の深い緑、都心の冷たいビル群が見える。「夕焼け小焼け」のチャイムが鳴る黄昏(たそがれ)時、その時々の色に染まった空は、対局中だと妙に寂しく映ってしまう。盤上にのめりこむ空(から)の心がのまれそうになると、自分の弱さがむき出しになるような気がして、つい目をそらしがちであった。

しかし、展示会場では、登場人物の心が雨や雲模様に反映され、気持ちを抑えることなく感傷に浸った。ここでならちっぽけな存在となっても、美しい世界に優しく包みこんでもらえる気がして、強がらなくていいと思えた。

新海監督は、物語を美しく映すために、美しい背景で登場人物たちを包み込んでいる。桜が舞う一枚の絵を前に、こんな世界の中で将棋を指したら、新海監督の作品のように、人の心に切なく残る棋譜になるのかなと、夢のような思いがふくらんだ。(将棋女流棋士)

情報源:(香川愛生の駒音だより)新海作品の世界で指したら:朝日新聞デジタル



へぇ・・・