(大志 藤井聡太のいる時代)激闘編:10 45歳苦労人、スーパースター相手に「奇跡」:朝日新聞デジタル

NHK杯ね


2019年9月15日05時00分

今泉健司四段=2018年6月、日本将棋連盟提供
今泉健司四段=2018年6月、日本将棋連盟提供

「やってみたい相手でした。でも、(勝つ可能性は)いいとこ2割だと思いましたよ」

藤井聡太七段(17)との初対戦について、今泉健司四段(46)はそう述懐する。

2018年7月15日に全国放送された「NHK杯テレビ将棋トーナメント」の1回戦。45歳と15歳の両者が、将棋ファン注目の舞台で顔を合わせた。

中学生でデビューした藤井とは違い、今泉は棋士になるまで回り道を強いられた。年齢制限でプロになれず、アマチュアの頃には介護の仕事も経験した。プロ編入試験を経て四段になったのは15年、41歳の時。藤井とは親子ほどの年の差があるが、「苦労人がスーパースターに挑む」という構図だった。

先手番を握った今泉は、得意戦法の「中飛車」をぶつけた。うまく攻め込み、終盤で好機を迎える。相手の玉将に迫るか、守りを固めるか――。「相手が藤井七段だということを、意識してしまった」。藤井の終盤力を恐れて指した守りの手がまずく、形勢は逆転した。

だが、藤井も間違える。自分の玉が危険な状況で反撃に転じたため、形勢の針は再び今泉に傾く。159手の激闘の末、白星をつかんだのは今泉だった。「(NHK放送センターがある)渋谷のセンター街で『よっしゃー』と叫びました」。一方の藤井は取材に対し、「時間がなくなってから、冷静な判断ができなかった点が悔やまれる。今泉四段は力強い将棋という印象を受けました」と振り返る。

放送の3カ月後にあった2戦目は今泉の完敗だった。ただ、本人自ら「奇跡」と表現する勝利は今も色あせない。NHKは藤井戦までの今泉の軌跡を追った番組を制作。今年5月の放送後、今泉の元には「介護の経験を語って欲しい」という講演の依頼が舞い込んだ。「一将棋指しとして幅が出てきたことがうれしい。藤井七段と僕とでは、できることが違う。僕は、僕にしかやれないことをやっていきたい」

=敬称略

(村瀬信也)

◆毎週日曜に掲載します。

情報源:(大志 藤井聡太のいる時代)激闘編:10 45歳苦労人、スーパースター相手に「奇跡」:朝日新聞デジタル


今泉健司四段 vs △藤井聡太七段(棋譜を見る



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