日産自動車の有価証券報告書を巡る役員報酬過少記載事件で、東京地検特捜部は21日、自己の取引で発生した損失を日産に付け替えたとして、前会長のカルロス・ゴーン被告(64)を会社法違反(特別背任)容疑で新たに再逮捕した。東京地裁は20日、前会長らに対する検察側の勾留延長請求を却下し、準抗告も棄却していた。このため、前会長は保釈される可能性が高まっていたが、不透明な情勢となった。
新たな再逮捕容疑は、ゴーン前会長は自身の資産管理会社が銀行と締結していた金融派生商品取引に関する契約で多額の損害が生じたため、自己の利益を図る目的で2008年10月、約18億5000万円の損失を日産に付け替えたなどとしている。
ゴーン前会長と前代表取締役、グレッグ・ケリー被告(62)らは、10~14年度の前会長の役員報酬計約50億円を報告書に記載しなかったとして先月19日に逮捕され、今月10日に起訴された。さらに同日、15~17年度の計約40億円を記載しなかった疑いでも再逮捕されていた。
2回目の逮捕分に関する勾留満期は20日だったが、地裁は検察側の延長請求を却下し、準抗告も即日棄却した。2人の容疑者としての勾留は期限の21日午前0時で効力を失ったが、起訴された被告として東京拘置所での勾留が続いていた。
当初、特捜部は2回目の逮捕分について年末休暇に入る前の28日に追起訴する方針を固めていた模様だ。地裁の却下決定で、追起訴を含めた捜査方針の転換を迫られたとみられる。
今回の再逮捕の対象にケリー前代表取締役は含まれていない。前代表取締役の弁護人は21日に保釈を請求する予定で、ゴーン前会長とは別に保釈に向けた手続きが進むとみられる。【巽賢司、遠山和宏、金寿英】