福島第一原発 トリチウム水の放出に反対意見多数 公聴会

福島第一原発 トリチウム水の放出に反対意見多数 公聴会 | NHKニュース

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福島第一原子力発電所にたまり続けている「トリチウム」という放射性物質を含む水の処分をめぐり、国の有識者会議は30日、一般から意見を聞く初めての公聴会を福島県で開き、風評被害を招くなどとして海に放出する処分方法に反対する意見が多くあがりました。

福島第一原発 トリチウム水の放出に反対意見多数 公聴会
福島第一原発 トリチウム水の放出に反対意見多数 公聴会

福島第一原発で出る汚染水を処理したあとの水には、取り除くのが難しい「トリチウム」という放射性物質が含まれていて、原発の構内でおよそ92万トンが保管され、増え続けています。

この水の処分について国の有識者会議は、一般から意見を聞く初めての公聴会を開き、初日の30日は福島県富岡町の会場におよそ100人が集まりました。

国では海への放出や地中への処分といった選択肢のうち、薄めて海に放出する方法が最も早く、低コストで処分できるとする評価結果をまとめていて、公聴会では事前に選ばれた多くの市民や団体の代表が、海に放出する方法について反対の意見を述べました。

このうち、地元で漁業に携わる男性は「せっかく試験操業の実績を積み上げてきたのに、トリチウムの放出により、なし崩しにされることにおそれを感じている。さらに風評被害が上乗せされる」などと述べ、海への放出に反対しました。

また、福島県漁連の代表は「われわれは風評の払しょくには想像を絶する精神的、物理的な労苦を伴うことを経験している。海洋放出は試験操業で地道に積み上げてきた福島県の水産物の安心感をないがしろにし、漁業に致命的な打撃を与える」と述べ、海洋放出に強く反対しました。

一方、大阪から来た研究者の男性は「人体への影響レベルを超えない範囲内でしっかりと管理し、海洋に放出すべきだ」などと放射線量を監視しながら海に放出する方法を支持するという意見を述べていました。

国の有識者会議は31日も福島県郡山市と東京都内で公聴会を開き、あげられた意見を参考に検討を進めることにしていて、今後、どのような処分方法を国に提言するのか注目されます。

福島県漁連会長「積み上げたものすべて無に」

公聴会を終えたあと、福島県漁連の野崎哲会長は「トリチウムを含む水が海に放出されれば、福島の漁業は壊滅的な風評被害の影響を受け、8年近くかけて積み上げてきたものがすべてなくなってしまう。これから有識者会議の小委員会で議論は続いていくと思うし、すぐに放出という決定にはならないと信じている。私たちは一つ一つ漁業の復興を積み上げていくしかないが、その中で海洋放出をされては困ると言うことを、国にしっかり伝えていきたい」と話していました。

委員長「反対意見を重く受け止める」

公聴会のあと、国の有識者会議の委員長を務める名古屋学芸大学の山本一良副学長は、トリチウムを含む水を海に放出する処分方法に対し反対の意見が相次いだことについて、「反対の意見を重く受け止める。福島第一原発の状態をよくするために役立つかということも考慮に入れつつ、検討していきたい」と述べました。

公聴会ではタンクでの保管を続けるべきだという意見も上がりましたが、「原発構内の場所が非常に厳しくなっているのは事実だ。永久に置いておくという選択肢は考えにくい」と述べ、処分の必要性を強調しました。

また、処理した水には、トリチウム以外の別の放射性物質が残されていることについて公聴会では不信の声が上がりましたが、山本委員長は、有識者会議としても説明が不足していたとの認識を示したうえで、これらは化学的に取り除けるとして「残っている放射性物質は、なんらかの処理を複数回、重ねていかなければいけない」と述べました。

福島の漁業者から不安の声

福島県内の漁業者たちからはトリチウムを含む水の海への放出に不安や反対の声が聞かれました。

新地町の46歳の漁業者の男性は「いままで試験的な漁を苦労して続け、消費者の理解を積み重ねてきたのに、トリチウムを含む水が放出されるとその信頼が失われ、漁の本格操業までさらに時間がかかるおそれがある。国は安全と言っているがその信頼性もわからないままの放出は絶対反対だ」と話していました。

また、漁協の地区の青年部長を務める新地町の36歳の漁業者の男性は「漁業は自分の息子や将来の子孫につなげていく大事ななりわいだ。トリチウムを含む水が海に放出されて再び風評被害が生まれれば、次の世代に引き継いでいけるか分からなくなるのでやめてほしい」と話していました。

築地の卸売業者 買い控えに懸念

東京・築地の魚介類の卸売の担当者は、トリチウムを含む水が海に放出されれば、風評による消費者の買い控えは避けられないのではないかと懸念しています。

福島県産の魚はかつて「常磐もの」と呼ばれ、高値で取り引きされていましたが、震災と原発事故のあと、取り引き量は大きく減りました。

それでも、漁協や県などが放射性物質の検査を積み重ねてきたことや首都圏などで安全性のPRを続けてきたことが評価され、徐々に市場に出回る福島県産の魚介類は増えてきたといいます。

しかし、大手のスーパーや量販店ではいまも原発事故の影響が残っているということで、トリチウムを含む水が海に放出されることになれば風評による買い控えは避けられないのではないかと懸念しています。

東京電力「国の方向性踏まえ対応」

東京電力は「地元をはじめとした皆様からうかがったさまざまな意見を踏まえて国の有識者会議で議論され、検討が深まっていくものと考えている。今後、国から大きな方向性が示されると認識しており、当社としてはそれを踏まえ、地元や関係者の意見をうかがい、丁寧なプロセスを踏みながら適切に対応していきたい」とコメントしています。

風評問題の専門家「住民合意が重要」

風評問題に詳しい東京大学の関谷直也准教授は、福島県の漁業の現状について「今はまだ試験操業の段階で、本格操業に向けた重要な時期。どうやって漁業の流通を回復させ、いわゆる“常磐もの”を回復させるか。重要な時期にさしかかっている」と話しています。

そのうえで、仮にトリチウムを含む水が海に放出される場合、「経済的な被害が出るという前提の上でないと、この問題は考えられない」とし、「どのタイミングで汚染水を処理するか、それによって経済的影響、社会的影響の度合いというのは変わってくるので、その時期は考えるべき重要なポイントだ」と指摘しています。

そして、処理方針の決定に向けては「いちばん影響を受ける漁業者、住民がどのように考えているのか、その意思をきちんとくんで決定するのが重要だと思う。科学的な安全性ということだけではなく、社会的、経済的な影響が非常に大きいと思うので、どれだけ住民や漁業者の合意を取れるのかがいちばん重要だ」と話しています。

情報源:福島第一原発 トリチウム水の放出に反対意見多数 公聴会 | NHKニュース


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