伊藤沙恵新女流名人
2022.3/5 15:00
「七転八起」という諺がある。たとえ7回失敗しても、腐らずに頑張れば8回目には成功できるという意味だが、この「7」という数字は、人間の気力の限界を表している気がする。
7回で思いつくのは中国の三国時代、蜀の相承諸葛孔明が南蛮討伐に出た際、南蛮の王孟獲と戦い、負かす度に捕えては放つことを繰り返したという話だ。
その度に孟獲は「今度戦えば俺が勝つ」と言ったが、7回捕えられて許された時、初めて服従して家来になったという。負け続けると、人は完全に実力差を知り、もう勝てないと諦めるのが、通常は7回なのかと思う。
将棋界で有名なのは、米長邦雄永世棋聖が名人挑戦に6回敗れ、7回目にして49歳で、初の名人に就いたこと。この時は翌年羽生善治九段が挑戦者となり、その後も羽生世代が次々と名人に就いたから、本当に7回敗れたら悲願のままで終わっただろう。
また木村一基九段も、6回のタイトル戦で敗れ、7度目の王位戦で豊島将之王位(当時)から初タイトルを奪取した。つまり男性のタイトル戦では、6回の敗北が限度だった。
今回取り上げるのは、7転びならぬ8回転んでもなお、闘志が衰えずに挑戦を続け、見事女流名人位を里見香奈女流四冠から奪取した、伊藤沙恵新女流名人。
伊藤は屋敷伸之九段門下で、里見や西山朋佳女流二冠と同じく、奨励会の出身。奨励会では1級で終わったが、2014年に女流プロに転向してからは実力を発揮し、タイトル戦の常連となった。
初タイトル戦は、2015年の女流王座戦。相手は加藤桃子女流王座(当時)で、2勝2敗とフルセットに持ち込んだが、最後の1局を敗れたことで、タイトル奪取の苦しみはここから始まる。
伊藤が容易にタイトルに手が届かなかったのは、里見にほとんど勝てなかったためで、一時は10連敗を喫した。奨励会で三段まで行った里見との差は、当時大きかった。
7度敗れ、諺の8起き目は「マイナビ女子オープン」の対西山戦。ここでも2勝2敗から敗れ、さすがにもう諦めた方がと思われた時に挑戦者となったのが、今年の女流名人戦での対里見戦だった。
今回は今までの苦手意識を吹き飛ばすかのように、最初に連勝し、3局目は敗れたものの、第4局で普段指さない振り飛車を用いて快勝。初タイトルを獲得した。
正に「諦めなければ何かが起こる」を実証したのである。
情報源:【勝負師たちの系譜】「七転八起」超え 伊藤沙恵新女流名人の諦めない姿
「七転八起」超え 伊藤沙恵新女流名人の諦めない姿https://t.co/qmNBwwyVlg#伊藤沙恵新女流名人 #将棋
— zakzak (@zakdesk) March 5, 2022
初タイトル、おめでとうございます。
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