へぇ・・・
2021.3.28
年明けから王将戦、棋王戦と並行して進んでいた、渡辺明三冠にとってのダブルタイトル戦は、どちらも防衛で終了した。
前々回の本欄に、棋王戦第3局で挑戦者の糸谷哲郎八段の粘りを振り切って勝った瞬間、渡辺はこれで嫌な流れを断ち切ったと指摘したが、まさにその通りとなったのである。
まず王将戦では、挑戦者の永瀬拓矢王座に3連勝から2連敗と追い上げられていて、内容も完全に相手のペースにハマっていただけに、これはひょっとすると大逆転もあるかもと見られていた。
かつて渡辺は竜王戦で羽生善治九段相手に、3連敗から4連勝という棋界初の奇跡的な逆転劇を演じたことがある。この時の最終局は、勝った方が永世竜王になる大一番だった。
今回の追い上げには、怪しい雰囲気も漂っていたのだが、棋王戦での勝利が転機となったと思う。
第6局は後手番の渡辺が、永瀬の得意とする角交換早繰銀からの速攻に対し、交換した銀を自陣に投入する堅い守りで対抗。永瀬は千日手で指し直しにするのが精いっぱいだった。
指し直し局はやはり角交換から、先手の渡辺は序盤早々に桂を五段目に跳ね出して先制攻撃をし、相手の体勢を崩してペースを握った。そして駒得をしながら手厚く指し進め、永瀬に粘りを許さず、王者の勝ち方でシリーズを防衛した。
すぐに棋王戦の方も、第4局が行われたが、糸谷は持ち前の怪力をすっかり封じられた形で敗れ、渡辺の防衛を許したのだった。
この2局を見る限り、渡辺に盤上の強さだけでなく、気持ちの余裕を感じたのは、私だけではあるまい。
以前から、王将と棋王は同じ棋士がタイトルを持つことが多く、かなりハードな日程を要求されるが、うまく乗り切れれば両方を防衛し、逆に精神的に追い込まれると、日程のきつさや疲れも出て、両方失うことが多かった。今回の渡辺は前者で、相乗効果によって、両方の防衛が成立したと見ている。
渡辺が他の棋士に対して大きな壁になりつつあるが、壁というからには最低でも四冠、できれば五冠は欲しいところだ。 4月からの名人戦での防衛戦も含め、今年中にそれが実現するかが大きな注目である。
■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。
情報源:【勝負師たちの系譜】渡辺明三冠のダブル防衛 他棋士の大きな壁として屹立
【勝負師たちの系譜】渡辺明三冠のダブル防衛 他棋士の大きな壁として屹立 https://t.co/yxOqLt0IWW
— zakzak (@zakdesk) March 28, 2021
指で9を示す
▲糸谷哲郎八段 vs △渡辺明棋王(棋譜中継・棋譜DB)
98手 7六金打まで、△渡辺明棋王 の勝ち
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