(香川愛生の駒音だより)タイトル戦に生きる羽生先生:朝日新聞デジタル

ほぉ・・・


2017年12月12日 5時00分

香川愛生女流三段
香川愛生女流三段

羽生善治竜王が5日、永世竜王の称号を獲得され、史上初の「永世七冠」を達成された。名人、竜王などの七つのタイトルでは、それぞれ規定の成績を収めると永世称号が付与される。将棋界の歴史的瞬間を目の当たりにして、思わず筆を執っているが、自分の表現の範疇(はんちゅう)を超えている偉業に、言葉を失ってしまう。

私自身、タイトル戦の舞台には4度立っている。その際は、何万回指したであろう初手を指すのにも血がざわめき、全身の神経が高ぶり震え上がった。命と魂を削られる感覚は体に刻まれている。だから、羽生先生の登場回数133回、獲得99期という数字は、目にするだけで倒れそうになる。大舞台に立つお若いその姿を拝見すると、先生にとっては命を削るという感覚ではなく、タイトル戦は生きることそのものなのだろうと思える。

時間の流れが速くなった昨今、ブームやフィーバーといった言葉で人や物が消費され、その時々で違ったヒーローが求められる。そんな中、羽生先生は私が生まれる以前から、偉大な功績と共に盤上を探究し続ける精神を今日まで、さらには次の世代に向けて残してくださっている。

儚(はかな)く移りゆくものばかりの世の中で、いつまでも残り続けるものはどれほどあるのだろうか。永世七冠という金字塔とその精神は、まさにその数少ないものの一つのように思えてならない。

(将棋女流棋士)

情報源:(香川愛生の駒音だより)タイトル戦に生きる羽生先生:朝日新聞デジタル



へぇ・・・