プロ棋士になって62年の今も現役。8月には20代の若手から白星を挙げた。積み上げた勝ち星は歴代3位の1323勝=東京都渋谷区、郭允撮影

(人生の贈りもの)わたしの半生 将棋棋士・加藤一二三:1 76歳:朝日新聞デジタル

1/全9回


2016年11月14日 16時30分

プロ棋士になって62年の今も現役。8月には20代の若手から白星を挙げた。積み上げた勝ち星は歴代3位の1323勝=東京都渋谷区、郭允撮影
プロ棋士になって62年の今も現役。8月には20代の若手から白星を挙げた。積み上げた勝ち星は歴代3位の1323勝=東京都渋谷区、郭允撮影

■「生きる伝説」対局・TVにマイペース

――最近、テレビ番組でよく拝見します。

バラエティー番組「アウト×デラックス」(フジテレビ系)にレギュラー出演しています。おかげで、町を歩いている時によく声をかけられるようになりました。

――マツコ・デラックスさんと「ナインティナイン」の矢部浩之さんがトークを繰り広げる番組ですね。

番組のスタッフが「ネクタイの長い将棋の名人がいる」と知って声をかけてきたそうです。私には、「対局の際、昼も夜もうな重を食べる」「対局室を出て賛美歌を歌う」など「伝説」が多いので、面白いと思ったのでしょうね。

――「対局中、マイペースすぎる将棋界の異端児」と紹介されています。

確かに、自分でもマイペースだと思います。普段、将棋会館(東京都渋谷区)で対局する時は、書体が気に入っている自分専用の駒を使っています。対局中、記録係に「あと何分?」と自分の残り時間を5秒おきぐらいに尋ねることもあります。自分を追い詰めて、いい手がひらめかないかと考えているのですが、そんなことをする棋士は他にはいません。

――マツコさんには「ひふみん」と呼ばれています。

好意を持ってもらえて、うれしいですね。私の話にうまく相づちを打ってくれますし、色々と知識も豊富なので感心しています。収録は毎回楽しいです。

――番組でオーケストラの指揮に挑戦したそうですね。

メンバーの「夢をかなえる」という企画でした。クラシック音楽を聴くのは好きですが、指揮は全くの素人。曲はベートーベンの「運命」です。初めは拍子をとることもできませんでしたが、指揮者の先生の指導を受けて猛練習しました。タキシードを着て、300人が見守るホールで本番を迎えましたが、うまくいきました。番組のスタッフには「勝負師だから、本番に強い」とほめられましたよ。

――クイズ番組「平成教育委員会」(フジテレビ系)にも度々出演しています。どうして出演依頼が相次いでいるのだと思いますか。

私は音楽だけでなく、様々な分野に興味を持って生きてきました。キリスト教の洗礼を受けていますし、絵画や旅行も好きです。ドストエフスキーなど、代表的な文学作品には触れてきたつもりです。もし将棋一本だったら、こうした依頼はなかったでしょう。

――70代にして大ブレークですね。

こんなことになるとは夢にも思いませんでした。マツコさんをはじめとする出演者の方、テレビ局の方には感謝の気持ちでいっぱいです。本業でも、対局はもちろん、指導対局やタイトル戦の解説などの仕事があり、充実した毎日ですね。

(聞き手・村瀬信也)=全9回

かとう・ひふみ 1940年福岡県稲築村(現・嘉麻市)生まれ。54年、史上最年少(当時)の14歳7カ月でプロ入り。60年、20歳で名人戦七番勝負に登場。82年、3回目の挑戦で名人を獲得。タイトル獲得は8期。九段。現役最年長棋士。「神武以来の天才」「1分将棋の神様」などの異名を持つ。

情報源:(人生の贈りもの)わたしの半生 将棋棋士・加藤一二三:1 76歳:朝日新聞デジタル



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