第66回奨励会三段リーグで最終節を前に3位につける西山朋佳三段

将棋の西山三段、注目の最終戦 女性初の棋士誕生なるか

まずは、明日の2連勝が必須、そのうえで上位者が負ける必要がある


2020年3月6日 18時41分

女流王座を奪取して三冠になった西山朋佳女王・女流王将=2019年12月4日午後5時21分、東京・千駄ケ谷の将棋会館、村上耕司撮影
女流王座を奪取して三冠になった西山朋佳女王・女流王将=2019年12月4日午後5時21分、東京・千駄ケ谷の将棋会館、村上耕司撮影

7日に行われる将棋のプロ棋士養成機関「奨励会」の三段リーグの最終戦が注目されている。30人が参加する同リーグでただ1人女性の西山朋佳さん(24)が、プロ四段に昇段する可能性があるからだ。実現すれば女性で初めての棋士となる。

将棋のプロには、男女の区別がない棋士と、女性のみの女流棋士がある。西山さんは女流棋士になる道を選ばず、14歳から奨励会に所属し、棋士を目指している。2015年12月、女性では里見香奈女流四冠(28)に次いで2人目となる三段昇段を果たした。

同リーグは半年単位で行われ、それぞれ18戦して上位2位までに入ると四段に昇段し、棋士となる。ただし原則26歳までに昇段できなければ退会となる。里見四冠は18年3月、年齢制限で退会した。これまでも西山さん、里見四冠を除いて18人の女性が奨励会で戦ったが、棋士になった女性はおらず、多くは女流棋士になるか、プロ棋界を去った。現在は西山さんを含め女性は3人しかいない。西山さんは昨年1月、「24歳になる今年は勝負の年だと思っているのでやれることは全部やっていきたい」と話していた。
「温かく見守っていただければ」

リーグ参加8期目となる今期はここまで12勝4敗で3番手。たとえ最終2戦を連勝しても上位の2人が勝てば、昇段に届かないという厳しい状況だが、望みをかける。

大阪府大阪狭山市出身。棋風は自称「バランス重視の攻め将棋」。上京と同時に進学した慶応大学を休学し、将棋漬けの日々を送る。奨励会員にも参加資格がある女流棋戦に出場し、現在、女王・女流王座・女流王将の女流三冠を保持している。

2月にあった女流王座の就位式で西山さんは「皆さんに注目していただいている三段リーグの最終戦でどのような結末を迎えても、自分の大きな心の支えになることと思っていますので、温かく見守っていただければと思っています」とあいさつした。姉で囲碁棋士の西山静佳初段(27)は「以前よりもストイックになり、緊張感を持って将棋に取り組んでいる感じ。悔いのない将棋を指してもらいたい」と話している。(村上耕司)

情報源:将棋の西山三段、注目の最終戦 女性初の棋士誕生なるか(朝日新聞デジタル) – Yahoo!ニュースコメント

情報源:将棋の西山三段、注目の最終戦 女性初の棋士誕生なるか:朝日新聞デジタル


昨年の女流王将戦で対局する西山朋佳三段=日本将棋連盟提供
昨年の女流王将戦で対局する西山朋佳三段=日本将棋連盟提供
今期三段リーグの上位者成績
今期三段リーグの上位者成績

将棋界のプロ養成機関「奨励会」で、史上初の女性のプロ棋士(四段)が誕生するか注目が高まっている。半年かけて行われる「三段リーグ」(参加三十人)で、女性唯一の参加者の西山朋佳三段(24)=女流三冠=が、あと二局を残し、十二勝四敗で三位につけている。プロ棋士になるためには二位以内に入る必要があり、西山三段は逆転昇段を目指して、七日の最終日に臨む。

「奨励会に入会して十年、これまでで一番いいものを出せている。どのような結末を迎えても、今回の体験は大きな心の支えになるはず」。先月開かれた女流タイトル「女流王座」の就位式。華やかな和服姿で、西山三段が決意を述べた。

将棋界には二つのプロ制度がある。藤井聡太七段(17)や羽生善治九段(49)ら、奨励会を突破した人がなれる「棋士」と、女性だけが対象の「女流棋士」で、これまで棋士になった女性はいない。女流棋士の第一人者の里見香奈女流王位(28)も一昨年、二十六歳までにプロ入りという年齢制限をクリアできず、奨励会を三段で退会している。

大阪府出身の西山三段は十四歳で奨励会に入会。慶応大に入学したが、現在は休学し、将棋に打ち込んでいる。二〇一五年に里見さん以来、女性として二人目の三段となった。振り飛車戦法を得意とし、豪快な駒の活用が持ち味。奨励会員でも参加可能な三つの女流棋戦ですべて優勝し、女王、女流王座、女流王将の三冠を保持している。

囲碁のプロ棋士(初段)で姉の静佳さん(27)は「師匠から女流棋士になるよう勧められたのを断り、棋士を目指した。将棋に対する姿勢もまじめそのもの」と明かす。研究会で一緒に勉強する井出隼平四段(28)も「四段に上がっても驚きはない。男ばかりの奨励会で、ここまで戦える根性はすごい」とたたえる。

囲碁界では女性のみを対象とした採用枠が設けられ、プロ入り後の待遇は男性とほぼ同じ。男性と同条件の一般枠でプロ入りした女性も過去四人おり、男女の棋力差は埋まりつつある。

七日の最終日は全参加者が午前と午後、一斉に二局を戦う。西山三段の昇段には、自身の二連勝がほぼ必須な上、競争相手が敗れる必要がある。

情報源:史上初女性プロへ勝負手 「女流」じゃない棋士西山三段挑む:囲碁・将棋:中日新聞(CHUNICHI Web)


女性初の棋士が誕生するかもしれない。3月7日に東京・将棋会館で行われる第66回奨励会三段リーグ戦は、最終節の17・18回戦を迎える。原則、三段リーグで四段に昇段できるのは上位2名。リーグに参加している唯一の女性、西山朋佳三段は3番手につけており、最終日に連勝し、かつ競争相手の星次第では逆転昇段する。女性の奨励会員が最終節に昇段の可能性を残しているのは、今回が初めてだ。

第66回奨励会三段リーグで最終節を前に3位につける西山朋佳三段
第66回奨励会三段リーグで最終節を前に3位につける西山朋佳三段

将棋のプロは棋士、女流棋士がいて、棋戦もそれぞれ分かれている。棋士を目指すのは男女ともに可能で、奨励会を抜けるかプロ編入試験を受けないといけない。一方、女流棋士は研修会(アマ初段~五段が在籍する機関)で規定のランクに達する、奨励会を退会して編入、アマチュア代表として女流棋戦に出場して好成績を残すルートがある。

西山は女流棋士ではなく、奨励会員の立場で一部の女流棋戦に出場している。現在は女王、女流王座、女流王将のタイトルを持つ。

「女に負けるなんて恥だ」という世界

女性が奨励会に初めて入ったのは1961年。男社会で修業した時代を、初の女性奨励会員・蛸島彰子現女流六段は インタビュー で次のように振り返っている。

<絶対に女には負けられない、女に負けるなんて恥だ、と思っている。ずっと後で知ったんですが、私に負けたら丸坊主になる、罰金を払う、というルールを男の子たちは作っていたんだそうです>

<私も奨励会時代に負けが込んだ時には、「やっぱり女の子には無理なんだよ」「かわいそうだから辞めさせてあげればいいのに」という声が飛び交って。とにかく私のほかに女性がいないので、なんでも私を基準に推し量られてしまう。私が負け続ければ、「やっぱり女に将棋は向いてない」となる。たまたま弱い私が苦労しているだけ。女性だからじゃないのに、っていう密かな抵抗の気持ちは、常に私の中にありました(笑)。女は私ひとりだから、そうなってしまうのは仕方がないんですけれど>

女流棋士が棋士に勝つまで「10年以上」かかった

蛸島は特例規定の「指し分けで昇級」により、初段まで上がった。女流棋士制度がスタートしたのは1974年で、報知新聞社の主催でいまの女流名人戦が創設される。その後、現在までに女流棋界は公式戦の数が7つ、現役女流棋士が68人と大きく発展した。

トップの女流棋士が棋士の公式戦に出場するようになったのは1981年からだが、初勝利を収めるには1993年と時間がかかっている。2003年、初めてA級棋士に勝ったものの、年間のトータルでは大きく負け越しが続いた。

だが、 『里見香奈、渡部愛、伊藤沙恵……女流棋士が「対男性棋士」で過去最高の成績だった理由』 の記事のように、2018年度の「女流棋士の対男性棋士成績」が16勝20敗(勝率0.44)と勝ち数、勝率ともに過去最高を記録した。2019年度は3月2日現在で、16勝23敗(0.410)。里見香奈女流六冠は好成績を挙げ、棋士編入試験受験の資格「棋士の公式戦で良いところ取りで10勝以上かつ勝率6割5分以上」にあと1勝に迫ったが、最後は西山の師匠、伊藤博文七段に阻まれている。

「極限状態」西山が三段リーグについて語ったこと

これまで奨励会三段に昇段した女性は、里見香奈と西山朋佳の二人だけだ。

先に奨励会に入会したのは3歳下の西山で2010年、中学校2年生のときだった。師匠には女流棋士を勧められたが、「自分の力が通用するか試したい」と奨励会を選んだという。里見は2004年に女流棋士になっていた。2011年、女流三冠ながら特例で奨励会1級の編入試験を受ける。4級の西山は試験官のひとりを務めたが、里見が制して入会を決めた。2012年1月、里見は初段に昇段する。現行の昇段制度では女性初の快挙だった。2013年7月に二段、同年12月に三段。しかし、里見は第55~57期の三段リーグを休場する。第58期に復帰し、第62期までの5期参加したが、年齢制限により退会となった。

西山が三段に昇段したのは2015年12月。1期目の三段リーグ最終戦は、藤井聡太三段の史上最年少四段昇段を懸けた勝負になった。結果は藤井勝ち。西山は敗れたものの、最終成績は10勝8敗の勝ち越し。新参加としてはまずまずの成績を収めた。

だが、以降の三段リーグでは苦戦が続き、昇段レースにはなかなか絡めなかった。西山は三段リーグ独特のプレッシャーを 次のように語っている

<三段だと、その日の1局目に負けたとき、次の対局はめちゃくちゃきついんですよ。もうひとつ負けたら終わりだと思うから。三段リーグはどこかで連敗すると上がれなくなるんで、1局目に負けた後のメンタルの保ち方は、三段全員の課題だと思います。二段だったら、極端にいえば「次は研究課題の将棋を1局指して、次回から頑張ろう」と思えるんですけど、三段リーグは全部、自信のある戦型を指さないといけないです>

三段リーグは半年間のリーグ戦で、例会は月に1、2回ある。1日に指す局数は2局だ。

奨励会二段までは、いいところ取りで勝ち星の規定を満たせば、段級が上がる。しかし、三段リーグは全18回戦のリーグで、基本的に上位2名しか棋士になれない。スタートダッシュを決めても途中で崩れれば昇段の目が消えるし、いくら好成績でも上位者がいては棋士になれない。

<元三段の石川泰さんが「三段リーグは、自分のあらゆる感情のピークを知れる場所」といっていて、その表現がぴったりだと思いました。極限の状態の自分を知るって、逆にいえば極限状態のみんなを見ちゃうんですよ。全員が必死で、二段以下じゃありえないような気合いの入れ方です>

「あれは過呼吸でした。全部なくなっちゃう恐怖があるんで」

喜怒哀楽、どれかが過剰になると指し手は乱れやすい。勝負のプレッシャーをかけるのは相手ではなく、自分自身のときもある。西山は過呼吸になったこともあるそうだ。そのことを尋ねると、快活にしゃべっていた西山は静かな声で答えた。

「あれは過呼吸でした。全部なくなっちゃう恐怖があるんで、私も含めて、みんな苦しんでやっていると思います」

第66回三段リーグは昨年10月に始まった。記者が西山にインタビューを行ったのは開幕前で、西山は里見香奈女流六冠との霧島酒造杯女流王将戦三番勝負、リコー杯女流王座戦五番勝負も控えていた。ダブルタイトル戦と三段リーグの平行について、西山は「将棋の質を求められるのは当然ながら、体力とメンタルの総合力の勝負になる」と語っていた。

西山の昇段の条件は?

結果は女流王将と女流王座を奪取し、女王とあわせて三冠を達成。三段リーグも昇段戦線に踏みとどまり、最終日を3番手で迎えた。

現在の状況を改めて整理しよう。画像のリーグ表をご覧いただきたい。昇段の可能性があるのは、11勝5敗の徳田拳士三段まで。西山が四段昇段するには、自身の連勝が絶対条件。そして、谷合三段の連敗、または服部三段の1敗が必要となる。

「順位」は前期のリーグ戦の成績で決定する。最終成績が並んだ場合は、順位の上位者が優先される。谷合三段、服部三段の上位2名は次点持ち。年齢は連盟HPによる。https://www.shogi.or.jp/match/shoreikai/sandan/66/index.html
「順位」は前期のリーグ戦の成績で決定する。最終成績が並んだ場合は、順位の上位者が優先される。谷合三段、服部三段の上位2名は次点持ち。年齢は連盟HPによる。https://www.shogi.or.jp/match/shoreikai/sandan/66/index.html

三段リーグ17期目の谷合三段は次点をひとつ持つ。今期はすでに次点以上を確定させた。仮に2個目の次点獲得となれば、フリークラス編入の権利を得ることができる。

服部三段は5期目の参加で、昨年は若手の早指し棋戦・加古川青流戦で準優勝した。服部も2個目の次点を獲得すると、谷合三段と同様にフリークラス編入の権利を得る。ただ、フリークラスは10年以内に規定の成績を上げてC級2組に昇級しないと引退になってしまうため、二人とも上位2名の四段昇段を狙いたいところだ。

西山の相手は、ここまで指し分けの横山友紀三段と伊藤匠三段。ともに昇段と次点、降段点の可能性はないものの、来期の順位を上昇させるためには負けられない。

26歳から16歳の若者30人が参加する三段リーグ。西山がつぶやくように残した言葉を思い出す。

「全部なくなっちゃう恐怖があるんで、私も含めて、みんな苦しんでやっていると思います」

三段はみんな戦っている。笑うのは誰か、運命の日を見守りたい。

写真=佐藤亘/文藝春秋

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