「絶対にやばい一番になる」14歳藤井聡太がプロになった対局、敗れた西山朋佳三段の本音とは

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西山朋佳女王インタビュー #2

現役奨励会三段で唯一の女性奨励会員、西山朋佳女王。インタビュー2回目は関東移籍、女流タイトル戦初出場、三段リーグでの挑戦の日々について聞いた。(全4回の2回目/#1、#3、#4も公開中)

西山朋佳女王
西山朋佳女王

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「早い」「早すぎるね」女流棋戦での戸惑い

――2014年4月から関東奨励会に移籍し、慶應義塾大学に通う生活が始まります。8月に第4期リコー杯女流王座戦で五番勝負登場を決め、9月に二段に昇段と、充実した日々だったことがうかがえます。

2011年から奨励会員の立場で女流棋戦に出場し、年々、上位に勝ち残ることが増えていくと、中継で将棋ファンに注目されます。そのなかで、同じ将棋を指すのでも、普段の奨励会の例会とは違うこともありましたか。

西山 女流棋戦に出させていただいて、最初のほうは戸惑いもありました。奨励会だと多いですけど、私も早指しのスタイルだったんですよね。女流棋戦でも同じようなペースで指していたら、「早い」「早すぎるね」とか、たくさんの人に色々といわれました。

――それは感心する声もあれば、「もっと考えないとだめだよ」ってことですか。

西山 ええ。(持ち時間が各3時間の棋戦で)19分で指したときは、特にいわれました。観ている人が多いのはこういうことなんだと分かって、それから変えようと思いましたね。

――超特急で快勝したように見えても、西山さんの持ち味である攻めが炸裂しやすい展開になっていたから時間を使わずにすんだのもありますよね。

西山 そうなんですよね。でも「早指し」「早指し」といわれて……。私は指しまくって経験値で勝負するタイプでしたし、(持ち時間が1時間、または1時間半の)奨励会のペースで指していたのもあったと思います。

――リコー杯女流王座戦五番勝負の開幕は、10月でした。相手は同年代の加藤桃子女王で、同じ関東奨励会に所属する初段でありながらも、タイトル戦は5回目、獲得は3期。対する西山さんは初のタイトル戦でした。取材、前夜祭、立派なホテルや旅館での対局、ファンとの交流など、いつもと違うことが多くて大変でしたか。

西山 初めて経験する大舞台だったので、考えることはいっぱいありましたね。私は小学校からそういう舞台は知らなかったですし、それに加藤さんが慣れ過ぎていて。学年は加藤さんがひとつだけ上ですけど、タイトル戦の舞台でもうまくこなされていて、私だけ初めてでどうしようと思うことは多かったです。非日常的なことが多く、将棋を指すときも緊張がありました。奨励会の例会と比べて、記録係がつくだけでも違うのに、立ち会いの先生がいて、大盤解説されて、たくさんの記者の方に取材されるんです。普段と違い過ぎて、びっくりしました。

タイトル戦前日に大学のレポートを書いていた

――私は開幕局に同行しましたけど、対局検分のときに「何したらいいんですか」と戸惑っていましたもんね。このシリーズは西山さんの3連敗、ストレート負けでした。

西山 あっという間でした。そのときは大学も通っていたので、レポートやテストがあったんです。対局前日にレポートを書いていたこともあったんですよ(笑)。人生でいちばん忙しかったです。あと、私は対局相手との距離もわかっていなくて、加藤さんに馴れ馴れしく話しかけて、雑談していたんですよね。

――食事とおやつを対局前日に選ぶとき、「どれにする?」って仲よく相談していましたね。

西山 対局に向かう意識として、だめだったと思うんです。でも、あれはいい経験でした。たくさん学びがあって、ストレート負けで、あっさり。あれは負けるべくして負けたんだなと。

「最終戦が藤井三段、これは絶対にやばい一番になる」

――翌年の夏に休学し、12月に三段に昇段されます。

西山 リコー杯の経験から、将棋と大学の両立はだめだろうと思ったので、休学しました。ボロ負けしたのはいい分岐点で、時間ができたのは大きかったと思います。

――奨励会三段リーグは、二段までの例会と空気や雰囲気が違うんでしょうか。

西山 奨励会自体がピリピリしているので変わらないと思ったんですけど、違いました。まず、私が入ったときは藤井(聡太現七段)三段がいて。彼は上がるオーラが全開で、有力な昇段候補のひとりだと見ていました。そして、リーグ表を確認したら、最終戦が藤井三段。「これは絶対にやばい一番になるな」と思いましたもん。

――実際に、2016年9月3日は藤井三段の昇段を懸けた一番になりました。

西山 いやー、なりましたね。競争相手が昇段レースにのっているんだと思っていたら、みんな負けていて。藤井三段が自力の目が残ったのを知ったのが、対局開始5分前ぐらいだったんです。

――三段リーグ最終日は、まず午前中に大橋貴洸三段(現六段)が昇段を決めたんですよね。最終日を首位で迎えた藤井三段は、午前中の対局に負けて自力が消滅したかと思いきや、競争相手の2人も負けていた。だから、勝てば昇段という奇跡的な状況で、西山戦を迎えることができたんです。

西山 感情が変わってからすぐに対局始まったんで、あっという間でした。重く考えず、フラットに『歴史の一番か』と思ったんですけど、後々、藤井先生ブームがきて凄まじいことになり、驚きました。

実は、それまで藤井先生とは私の2勝0敗なんです。かなり前、関西奨励会のときに香落ちと平手で指しています。だから、周りに「相性がいいから」と豪語していたんですけど……。最終戦はボロ負けになってしまって。彼はおそらくソフトも取り入れていて、早指しでバンバンこられたんですよ。いままでの将棋と全然違って、成長スピードが速すぎました。

「三段リーグは、自分のあらゆる感情のピークを知れる場所」

――二段までは、いいところ取りで勝ち星の規定を満たせば、段級が上がります。三段リーグは半年かけて行われ、基本的に上位の2人しかプロになれない。同じ奨励会でも、心構えが違うのでしょうか。

西山 1日に2局指すのは有段になってから変わらないですけど、何もかも違います。三段だと、その日の1局目に負けたとき、次の対局はめちゃくちゃきついんですよ。もうひとつ負けたら終わりだと思うから。三段リーグはどこかで連敗すると上がれなくなるんで、1局目に負けた後のメンタルの保ち方は、三段全員の課題だと思います。二段だったら、極端にいえば「次は研究課題の将棋を1局指して、次回から頑張ろう」と思えるんですけど、三段リーグは全部、自信のある戦型を指さないといけないです。

――それだと、自分も相手も気迫が違うんでしょうね。

西山 元三段の石川泰さんが「三段リーグは、自分のあらゆる感情のピークを知れる場所」といっていて、その表現がぴったりだと思いました。極限の状態の自分を知るって、逆にいえば極限状態のみんなを見ちゃうんですよ。全員が必死で、二段以下じゃありえないような気合いの入れ方です。

――西山さん自身、過呼吸になって指したこともあるそうですね。

西山 三段になる一番と、三段リーグでの一番ですね。あれは過呼吸でした。全部なくなっちゃう恐怖があるんで、私も含めて、みんな苦しんでやっていると思います。

――三段リーグでは、里見香奈三段とも再戦しています。

西山 三段リーグは全局、特別な思い入れがあります。里見戦も同じように指しました。

――奨励会員で三段リーグ、公式戦、タイトル戦を経験しているのは、里見さんと西山さんだけです。対局の舞台が違うと、将棋に臨む心構えも変わってきますか。

西山 三段リーグは突き詰めてやるんですけど、公式戦や女流棋戦はよい意味で、伸び伸びと指している気がします。三段リーグでもやるようにしているんですけど、手が引いちゃうときもあるので……。

――伸び伸びと指せるのは、でかいですよね。

西山 でかいです。伸び伸びと指すと、視野が狭くならないので、形勢判断が割とちゃんとできる気がします。三段リーグだと、盤面全体を広く見たときに、局所的な攻防に固執しすぎていたということもありますし。プレッシャーも、あとで見たら関係しているのかなと思いますね。

(全4回/#3へ続く)

にしやま・ともか/1995年6月27日生まれ、大阪府大阪狭山市出身。伊藤博文七段門下。2010年、6級で奨励会入会。2015年、三段。
女流棋戦のタイトル戦登場は5回。2018年、第11期マイナビ女子オープンで初タイトル「女王」を獲得。2019年、第12期マイナビ女子オープンで里見香奈女流四冠の挑戦を退け、防衛を果たした。
得意戦法は振り飛車で、豪快なさばきが持ち味。

情報源:「絶対にやばい一番になる」14歳藤井聡太がプロになった対局、敗れた西山朋佳三段の本音とは(文春オンライン) – Yahoo!ニュースコメント

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