2018年、第31期竜王戦5組準決勝の対船江戦
2019年7月21日05時00分
七段への昇段をかけた一番は、船江恒平(ふなえこうへい)六段(32)との対戦だった。当時15歳9カ月の藤井聡太が勝てば、加藤一二三(ひふみ)九段(79)が持つ七段昇段の最年少記録(17歳3カ月)を61年ぶりに塗り替える。一方、船江は「藤井キラー」と評される井上慶太九段(55)の一門だ。
昨年5月18日午前10時、大阪市福島区の関西将棋会館で竜王戦ランキング戦5組の準決勝が始まった。当時、藤井の通算成績は75勝12敗。うち3敗は井上と、その弟子の稲葉陽(あきら)八段(30)と菅井竜也(たつや)七段(27)に喫した。船江は、対藤井戦で無敗だった井上一門の「4人目の刺客」だった。
船江と井上の師弟関係は深い。船江は、プロ入りを決めた直後のインタビューで夢を聞かれ、「師匠と順位戦で対局したい」と答えた。順位戦で師弟戦が実現するのはB級1組以上。短い言葉の中に「自分も昇級したいし、師匠もそれまで頑張り続けて欲しい」という気持ちを込めた。井上はこのことを記者から聞き、感極まって泣いた。
藤井戦について井上から「序盤でリードすることが大事」と助言された船江は、複数の作戦を用意していた。先手番になり「角換(かくが)わり棒銀(ぼうぎん)」に。盤上は予定どおりの急戦調になった。「長い中盤戦を戦うと想定外の手を食らう可能性も高くなる」と考えた船江は短期決戦を狙ったが、「途中で意表の手を指された」。1時間7分に及ぶ長考に沈んだが、すでに形勢は難しかった。最後は「バッサリ切られた。こんなに簡単に自分の玉が寄るとは思わなかった」。詰将棋解答選手権で優勝したこともあり、終盤力に定評がある船江が感嘆するほどの切れ味だった。
午後8時57分、72手で藤井が勝った。終局後、藤井は「昇段したことはうれしく思いますが、喜びに浸るというより、次の決勝に備えたい」。いつもどおり冷静沈着な受け答えだった。=敬称略(佐藤圭司)
◆次週は「大志」を休み、「名人戦ニュース」を掲載します。
情報源:(大志 藤井聡太のいる時代)激闘編:5 井上一門4人目の刺客、「バッサリ切られた」:朝日新聞デジタル
村)今日の朝刊の記事です。「船江は、プロ入りを決めた直後のインタビューで夢を聞かれ、『師匠と順位戦で対局したい』と答えた」「井上はこのことを記者から聞き、感極まって泣いた」
(大志 藤井聡太のいる時代)激闘編:5 井上一門4人目の刺客、「バッサリ切られた」 https://t.co/jSKwCxjLHa— 朝日新聞将棋取材班 (@asahi_shogi) July 21, 2019
第31期竜王戦 5組ランキング戦の準決勝での対船江戦。
それまで負けていた、稲葉陽八段(第67回NHK杯)、菅井竜也王位(現七段・第44期棋王戦)、井上慶太九段(第68期王将戦)、に続く井上一門4人目。この後には新人王戦の決勝三番勝負で出口若武奨励会三段(現四段)に勝っている。