幼少期の2人、藤井七段が「動」なら豊島新名人は「静」:朝日新聞デジタル

へぇ・・・


2019年5月23日10時33分

三冠となった豊島将之新名人=2019年5月17日午後9時47分、福岡県飯塚市、堀英治撮影
三冠となった豊島将之新名人=2019年5月17日午後9時47分、福岡県飯塚市、堀英治撮影

杉本昌隆八段の「棋道愛楽」

佐藤天彦名人に豊島将之二冠が挑戦した第77期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催)。安定した指し回しの豊島二冠が4連勝し、平成生まれで初の名人が誕生しました。王位、棋聖も保持し、三冠です。豊島新名人は愛知県一宮市出身で、名古屋在住の私も同郷の棋士として非常に誇らしい気持ちです。

10代からその実力は高く評価されていました。思い出すのは、豊島新名人がまだ幼稚園児か小学1年生のころ。地元の将棋大会で指導対局を2枚落ちで何局か指しましたが、「銀多伝」定跡からの冷静かつ合理的な指し回しが忘れられません。勝負は私の完敗。隙のない指し手は当時からでした。

幼少時代のイメージは、後に出会う弟子の藤井聡太七段の将棋が「動」なら豊島新名人は「静」。2人と幼少期に対局できたことは私の自慢です。

豊島新名人が10代のころは先輩棋士からの研究会の誘いが絶えず、引っ張りだこでした。私も研究会を申し込み、毎月定期的に指したものです。年末には、里帰りをした豊島新名人と名古屋で研究会をするのが恒例でした。

まだ奨励会初段で12歳だった藤井七段を呼び、当時七段だった豊島新名人に指してもらったこともありました。奨励会員と、若手トッププロの対局。今から思えばずうずうしいお願いでしたが、いつか必ずタイトル戦で当たるであろう組み合わせを見たかったというのもあります。快く受けてくれた豊島新名人には本当に感謝します。

その何年か前は、弟子の室田伊緒女流二段と対局してもらったこともありました。同郷のよしみとはいえ、結構私は豊島新名人に無理をお願いしていたと反省しています。

高い勝率から「最強棋士」と言われながらも、初タイトルまでは時間がかかった印象です。しかし、この1年で棋聖、王位、そして名人とその勢いはとどまる気配がありません。

豊島新名人の強さの一つに、綿密な序盤研究があります。決断良く序盤をハイペースで飛ばし、ペースをつかむ。これは膨大な研究量に支えられてこそでしょう。今期の名人戦でも、常に残り時間が佐藤九段を上回っていたのが印象的でした。将棋の内容だけではなく、対局中の時間をも支配する。豊島将棋には削れるものを徹底的に削り、ぜい肉を落としたトップアスリートの筋肉のような無駄のなさを感じます。

約1年前には八つのタイトルを8人で分け合っていた将棋界。三冠となった豊島新名人が一歩抜け出した感があります。6月に始まる渡辺明二冠との棋聖戦五番勝負は今後の将棋界を占う大きな勝負になるでしょう。

ファンが見たい組み合わせも数えきれません。佐藤九段との再戦、広瀬章人竜王や斎藤慎太郎王座、永瀬拓矢叡王とのタイトル戦。無冠とはいえ、羽生善治九段を忘れるわけにはいきません。そして、誰もが注目する藤井七段とのタイトル戦はいつになるのでしょうか。

すぎもと・まさたか 1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2019年2月に八段。第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太七段の師匠でもある。

情報源:幼少期の2人、藤井七段が「動」なら豊島新名人は「静」:朝日新聞デジタル



ほぉ・・・