足元みられるのがオチだと思うがな・・・
2019年1月16日 4時43分
イギリス議会は15日、EU=ヨーロッパ連合からの離脱の条件を定めた離脱協定案を反対多数で否決しました。政府は、議会に対し、3日以内に代替案を示さなければなりませんが、有効な案を示せるかどうかは不透明で、メイ首相は、さらなる苦境に追い込まれています。
イギリス議会は、去年11月、メイ政権がEUと合意した、離脱の条件を定めた協定案について、15日夜、日本時間の16日朝、採決を行い、賛成202票、反対432票の反対多数で否決しました。
離脱協定案の否決を受け、政府は3日以内に代替案を議会に示す必要があります。
メイ首相はEUと改めて協議をし、何らかの譲歩を得て再度、議会に諮るものとみられていますが、議員が納得できるだけの譲歩を得るのは難しい情勢です。
また、3月に迫る離脱を延期して、EUと再び交渉を行い、抜本的な修正を求めるべきだという意見や、改めて国民投票を実施するよう求める声も出ていますが、いずれも容易ではないとみられます。
メイ首相はEUと何の取り決めのないまま離脱する「合意なき離脱」を避けたい考えですが、3月の離脱を前に見通しは不透明で、さらなる苦境に追い込まれています。
メイ首相 野党と代替案探る
離脱協定案が、200票以上の大差で否決されるという歴史的な敗北を受けて、メイ首相は、すぐに議会に対して今後の対応についての考えを明らかにしました。
その中でメイ首相は「敗北を受けて、この政権に対し不信任を問う場合にはあす、議論をする機会を設ける」と述べ、野党が内閣不信任案を提出した場合には、翌日、採択にかける意向を示しました。
そのうえで、閣外から協力を得ている北アイルランドの地域政党や野党各党と会談し、どのような代替案であれば支持を得られるのか直接、意見を聞いたうえで、EUと再び協議を行いたいという考えを明らかにしました。
さらに、メイ首相は、このまま合意なきまま3月29日の離脱の日を迎えることは政府の戦略ではない、とし、国民投票で離脱を選択した国民の意思は必ず実現させると強調しました。
EU「無秩序離脱のリスク高まる」
イギリス議会で離脱協定案が否決されたことを受けて、EUのユンケル委員長は声明を発表し「結果を残念な思いで受け止めている。これにより無秩序な離脱のリスクは高まった。実際に起きてほしくはないが、備える取り組みを進めていく」とする声明を発表しました。
また、ユンケル委員長は、ツイッターに「イギリスは何を望むのか、速やかに明確にするよう求める」と投稿しました。
一方、EUのトゥスク大統領は「もしこの離脱協定案が受け入れられず、しかも『合意なき離脱』を誰も望まないのであれば、何が唯一の前向きな解決策なのか」とツイッターに投稿しました。
トゥスク大統領はイギリスに対して離脱を取りやめるよう促す発言をたびたび繰り返しており、イギリスが離脱をやめるのも選択肢だと示唆しました。
離脱協定案の内容
イギリス議会で否決された離脱協定案は、イギリスがEUから離脱する条件を定めた585ページに及ぶ文書です。その内容は次のとおりです。
▽移行期間
イギリスがEUを離脱する際、急激な変化を避けるために3月29日に離脱したあと来年末まで「移行期間」を設けます。この間、イギリスはこれまでどおりEUのルールに従い、人やモノの移動の自由が守られます。移行期間は、イギリスとEUの合意に基づいて最大で2年、延長することができます。
▽清算金
イギリスはすでに分担することが決まっていたEU予算への拠出金などを清算金、いわば手切れ金としてEUに支払います。金額について、離脱協定案には記載されていませんが、イギリスの公共放送BBCによりますと少なくとも390億ポンド、日本円にして5兆円を超えるとみられるということです。
▽市民の権利
イギリスとEUのそれぞれの国で暮らす市民に離脱前と同じ権利が保障されます。
▽アイルランド国境
「離脱協定案」の中で焦点となったのが離脱後、EUと陸続きの国境となる北アイルランドとアイルランドの国境管理をめぐる問題です。
北アイルランドでは、1960年代からアイルランドへの統合を求める住民と、それに反対する住民の間で対立が深まり、1998年に和平合意が結ばれるまでに3000人以上が命を落としました。和平後、北アイルランドとアイルランドの間の検問は廃止され人やモノの自由な行き来によって市民の平和な暮らしが保たれてきました。
このため、イギリスとEUは離脱後も厳格な国境管理を復活させない方針を決めました。
協定案に盛り込まれた「北アイルランドの安全措置」はイギリスのEU離脱後、来年末までに双方が国境管理の方法で合意できなければ、イギリスが事実上、EUの関税同盟に残るという取り決めです。
新たな取り決めができなかった場合だけ使われる「保険」のようなものですが、離脱派は、離脱を有名無実にするものだと批判しています。
また、仮に「安全措置」が発動された後にこの措置を解除するには、EU側の同意が必要だとされたことについて「EUの属国になるに等しい」と反発を強めています。
否決後は
メイ首相が提案した「離脱協定案」を議会が否決したため、メイ首相は3日以内に、代替案を議会に提出することが求められています。
いくつかの案が考えられますが、見通しは不透明です。
▽再び議会で採決
まず考えられるのがEUと改めて協議をし、協定案に反対する議員の懸念を払拭できるような何らかの譲歩を得て再度、議会に諮ることです。ただ、EU側から議員が納得するような譲歩を得られる可能性は低く、再び採決しても承認されるかどうかは不透明です。
▽EUと交渉やりなおし
EUと再び交渉を行い、抜本的な修正を求めるべきだという意見も出ています。交渉する時間を確保するため、3月に迫った離脱を延期するよう求める必要があるほか「現在、合意している離脱協定案が最良のものだ」という立場をとるEUが修正に応じるかどうか確証はありません。
▽2度目の国民投票
EUへの残留を求めている残留派は、議会で決められないのであれば国民に問うべきだとして再び、国民投票を行うよう主張していますが、実施に反対する離脱派を説き伏せるのは容易ではないとみられています。
▽合意なき離脱
こうした策がすべて尽きた場合、EUと何の取り決めのないまま離脱する「合意なき離脱」が現実のものとなり、経済や社会に混乱が広がることが予想されます。ただ、大多数の議員は、「合意なき離脱」だけは避けるべきだとの立場で一致していて、ぎりぎりまでこれを回避する方策を模索するものとみられます。
▽内閣不信任と総選挙
政権側が代替案を模索する動きとは別に、協定案が大差で否決された場合には野党からメイ政権に対する不信任決議案が提出される可能性があります。メイ政権への不信任決議案が可決されれば総選挙が実施される可能性が高まります。
ただ仮に新しい政権が誕生しても3月の離脱までにEUと交渉をやりなおす時間的な余裕はなく、離脱の延期を求めるなどの措置が必要となります。
離脱派 残留派 それぞれの主張
イギリスのメイ首相がEUとの間で合意した「離脱協定案」と「政治宣言」は、国内の離脱派、残留派の双方から批判されています。
<離脱派>
離脱派は、EUから主権を取り戻すと主張してきただけに、アイルランドとの国境問題が解決しなかった場合に、イギリスが事実上、関税同盟に残るとする内容に猛反発しています。
さらに関税同盟から抜ける際にEU側の同意が必要だとされたことについて「EUにさらに強力な力を与えるもので、イギリスが属国になるに等しい」と主張していて、修正されないかぎり協定案には賛成できないとしています。
<残留派>
一方、残留派は、現在の合意では、EUに加盟している時に比べて貿易などの面で経済的な損失が大きいほか、EU加盟国と共同で行っている科学技術の研究や、学術交流などの面でもマイナス面が大きいと主張しています。
そして2016年に行われた国民投票から2年半がたち、離脱がもたらすマイナス面での影響が具体的に見えてきたいま、離脱をこのまま推し進めるのかどうか、国民に問うべきだとして再び、国民投票を実施することを求めています。
世論は
イギリスで2016年に行われた国民投票では、EUからの離脱を選択した人が52%、残留を希望した人が48%でしたが、離脱交渉が難航する中、世論は変化しています。
大手の世論調査会社、「YouGov」が去年12月から今月にかけて2万5537人を対象に行った調査では「離脱はよい選択だったか」という問いに対し、「よくない」と答えた人が48%で、「よい」と答えた人を8ポイント上回っています。
さらに、最終的な離脱の方法をどのように決めるかについては「議員が決める」が36%、「国民投票」が41%となり、国民投票を求める声が高まっていることがうかがえます。
そして、再び国民投票が行われた場合、「残留を選ぶ」と答えた人は46%、「離脱を選ぶ」と答えた人は39%で残留を希望する人が上回っています。
国民投票の実施には議会の承認が必要ですが、離脱派が賛成する可能性は低く、メイ首相も反対の意向を示しています。
メイ首相とは
テリーザ・メイ首相は62歳。
イギリスの中央銀行にあたるイングランド銀行での勤務などを経て、1997年に下院議員に初当選しました。
保守党で初めての女性幹事長に就任するなど党内の要職を歴任し、2010年からはキャメロン政権で6年にわたって内相を務め、テロ対策や移民問題などに取り組みました。
そして2016年、EU=ヨーロッパ連合からの離脱の是非を問う国民投票の責任を取って辞任したキャメロン前首相の後任として、イギリスでは、サッチャー元首相以来2人目となる女性の首相に就任しました。
メイ首相は、国民投票まではEU残留を支持していましたが、首相就任後は、国民投票で示された民意を尊重してEUからの離脱を進める姿勢を示してきました。
おととし3月、イギリスはEUに離脱を正式に通知し、本格的な離脱交渉が始まりました。
こうした中、メイ首相は、総選挙に踏み切ります。
離脱交渉を有利に進めるため強く安定した政権基盤を確保したいという思惑がありましたが、与党・保守党は過半数の議席を維持できず敗北。
メイ首相は、北アイルランドの地域政党から閣外協力を得て過半数を維持するという厳しい政権運営を強いられることになりました。
総選挙で敗北したメイ首相の求心力の低下は著しく、EUからの完全な離脱を求める強硬派と、EUとの協調を目指す穏健派との板挟みとなり、EUとの離脱交渉もこう着状態に陥ります。
事態を打開しようとメイ首相は去年7月、ロンドン郊外の別荘「チェッカーズ」に閣僚を集め、EUとの協調を重視する「緩やかな離脱」にかじを切る新たな方針を示しました。
これに反発して、ジョンソン外相やデービス離脱担当相といった主要閣僚が相次いで辞任、保守党内からは首相への圧力がさらに強まりました。
離脱まで4か月と迫った去年11月、メイ首相はEUに譲歩する形で離脱の条件についてまとめた離脱協定案で合意しました。
先月には、離脱協定案について議会で審議が始まりましたが北アイルランドとアイルランドの国境管理の取り決めなどを巡り、野党だけでなく、与党・保守党や、メイ政権に閣外協力する北アイルランドの地域政党からも批判が相次ぎました。
協定案が大差で否決されると判断したメイ首相は、離脱協定案の採決を、直前になって延期することを決めました。
こうした事態に批判が高まったことを受け、与党・保守党メイ首相を党首として信任するかどうかを問う投票を実施。メイ首相は信任されたものの、およそ3分の1にあたる100人を超える議員が不信任を表明し、首相の威信は大きく傷つきました。
メイ首相は、年末年始の議会休会中もEU各国の首脳らと会談をかさね、北アイルランド問題への懸念を払拭(ふっしょく)する方策を探りましたが、反対する議員を説得するだけの回答は得られていないもようです。
はぁ・・・