中国特許急増、日米が恐々 産業空洞化リスク、貿易戦争の火種 (1/4ページ) – SankeiBiz(サンケイビズ)

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中興通訊(ZTE)本社の展示ホールで同社の特許出願件数の多さをアピールする同社の従業員=深セン(ブルームバーグ)
中興通訊(ZTE)本社の展示ホールで同社の特許出願件数の多さをアピールする同社の従業員=深セン(ブルームバーグ)

中国の特許出願数は、政府が推し進める製造業のバリューチェーンの高度化を反映し急増している。同国政府は産業高度化と成長に恩恵をもたらすノウハウを確保するために「中国製造2025」をはじめとした産業重点化政策を掲げる。ただ、特許関連のサービス貿易収支はまだ赤字であり、知的財産ビジネスでは、特許と技術のライセンス料の収支を示す「技術貿易収支」の黒字が続く米国と日本が国際的な観点からは先行している。

中国での特許出願の増加による影響と対応は日米でやや温度差がある。日本は、ロボティクスや先進的な材料、半導体製造装置など中間財とその製造システムで中国に先行している。そのため、中国の産業高度化を目指す動きは、短期的には脅威よりも関連需要の拡大による追い風効果の方が大きい。しかし長期的には、同国政府の潤沢な補助金と技術革新により、日本の産業空洞化のリスクが高まる可能性がある。

一方、米国にとって「中国製造2025」計画などの次世代産業重点化の動きは、特にIT(情報技術)産業における戦略的脅威に対する懸念を拡大し、米中の貿易戦争の火種の一つとなっている。

米国は、その経済力の源泉となるバイオ産業、医療機械からITに至るまで、先進技術の関連特許で世界的リーダーとして君臨してきた。中国の特許出願の急速な拡大は、戦略産業でリードするための長い闘いがモノにとどまらず、知的財産に代表されるサービス分野でも繰り広げられる可能性を示している。

10年間で10倍に

中国の国内居住者による国内特許出願件数は2016年に120万件に増加し、06年の10倍に達した。これは、日本と米国の約30万件の国内出願を大幅に上回っている。中国が知的財産の倉庫を建設しようとしている兆候だ。私たちの見解では、同国政府は国内発の特許を中心とした知的財産権を強化する傾向が強くなりつつある。

17年に国際出願された特許を見ると、中国からの出願は日本からの出願を上回り、米国に次ぐ第2位だ。中国の特許出願は01年に世界貿易機関(WTO)に加盟する頃に始まり、その後、中国の成長と貿易量の拡大とともに本格化した。最近では、「中国製造2025」計画によって政府が後押しする主要な戦略分野での世界トップクラス入りを目指している。

「中国製造2025」計画の重点分野を中心に、日米中の国際特許公開における技術分野別のシェアの推移をみると、少なくとも現状では、同計画は米国にとっては脅威としての側面が強く、日本にとっては補完的な側面が強い印象だ。

米国は、過去20年にわたり、徐々に国際特許公開数のシェアを失いつつある。これは00年代の日本企業の知財戦略の急速な進展と10年代の中国の特許ブームを部分的に反映している。

中国の技術開発の進捗(しんちょく)が進む分野は、新しい形態のIT(携帯電話)、エネルギー機器(再生可能エネルギー)、省エネ輸送(電気自動車)、および一部のロボットなど、最終製品に集中している。米国や日本は中間財の主要技術である新素材やバイオ・製薬などの国際特許公開において引き続き優位な状況にある。

米の強みと重複

「中国製造2025」計画の対象となる関連技術の国際特許公開数を比較すると、中国の特許公開は音響映像技術、光学機器、デジタル通信、電気通信、コンピューター技術のような一部の分野で特に進んでおり、米国が強い分野とオーバーラップする。

企業レベルで見ても、中国の知的財産の進歩は明らかだ。06年には、国際特許公開の上位10位に中国企業は入らなかったが、17年には3社がランクイン。一方、日本、米国、韓国はそれぞれ2社がトップ10入りするにとどまる。

重点分野で存在感

中国は17年、比較的少数の企業が多くの国際特許を公開し、それらの企業の特許は比較的狭い範囲の技術に集中している。例えば、中国ハイテク産業の中心地である深センに本社を置く華為(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)は、中国の特許公開で大きなシェアを占めており、その約60%がデジタル通信に関連している。対照的に、日本企業の特許公開の対象分野の範囲はより広く、相対的に技術の裾野が広い。中国企業は選択と集中で一気に重点分野での存在感を増しているといえそうだ。

特許を出願しても、少なくとも短期間では、利益と成長を促進する技術の育成にはつながりにくい。中国は、過去10年にわたる特許出願や国際特許公開の急速な増加の後でさえ、知的財産の使用料について、依然として主要な貿易相手国に対し大きな支払い超過だ(中国の国家外貨管理局のデータによる)。

対照的に、経済協力開発機構(OECD)のデータによると、米国と日本は技術貿易収支の受取額が大きい(技術収支は、ライセンス、特許、ノウハウ、研究、技術援助など、国際的な技術移転などから成る)。

中国はバリューチェーンの高度化を進めるが、日米の直接的な脅威になるまでまだ距離があるというのがブルームバーグ・エコノミクスの見解だ。中国は、モノの輸出競争力を示す貿易特化指数によると重要な分野で相対的な競争力を増している。この指数では、特に消費財のように中国が相対的に好調な分野では、米国が後手に回っているように見える。これが、中国との貿易不均衡に対する米国の懸念の火種となっている。

いずれ付加価値向上

しかし、中国が貿易で比較優位にある分野は、付加価値が低い傾向がある。米国や日本は、知的財産や生産プロセス・マネジメントなど、付加価値の高い分野で競争力を保持している。 現在、日中間の貿易は多くの分野において補完的だ。しかし、中国が目標としている技術は、長期的には高付加価値領域に移行し、日本の脅威となる可能性を示唆している。

総括すると、中国の特許出願への注力は、音響映像技術、光学機器、デジタル通信、電気通信、コンピューター技術などの分野において、競争力の向上で実を結びつつある。中国の生産バリューチェーンの高度化は、今後数年間、こうした技術に関わる業界の米国と日本の企業に大きな圧力がかかっていく可能性がある。(ブルームバーグ Yuki Masujima)

情報源:中国特許急増、日米が恐々 産業空洞化リスク、貿易戦争の火種 (1/4ページ) – SankeiBiz(サンケイビズ)


中国の特許出願数は、政府が推し進める製造業のバリューチェーンの高度化を反映し急増している。同国政府は産業高度化と成長に恩恵をもたらすノウハウを確保するために「中国製造2025」をはじめとした産業重点化政策を掲げる。ただ、特許関連のサービス貿易収支はまだ赤字であり、知的財産ビジネスでは、特許と技術のライセンス料の収支を示す「技術貿易収支」の黒字が続く米国と日本が国際的な観点からは先行している。

中国での特許出願の増加による影響と対応は日米でやや温度差がある。日本は、ロボティクスや先進的な材料、半導体製造装置など中間財とその製造システムで中国に先行している。そのため、中国の産業高度化を目指す動きは、短期的には脅威よりも関連需要の拡大による追い風効果の方が大きい。しかし長期的には、同国政府の潤沢な補助金と技術革新により、日本の産業空洞化のリスクが高まる可能性がある。

一方、米国にとって「中国製造2025」計画などの次世代産業重点化の動きは、特にIT(情報技術)産業における戦略的脅威に対する懸念を拡大し、米中の貿易戦争の火種の1つとなっている。

米国は、その経済力の源泉となるバイオ産業、医療機械からITに至るまで、先進技術の関連特許で世界的リーダーとして君臨してきた。中国の特許出願の急速な拡大は、戦略産業でリードするための長い闘いがモノにとどまらず、知的財産に代表されるサービス分野でも繰り広げられる可能性を示している。

中国の知財戦略強化で特許出願が加速

中国の国内居住者による国内特許出願件数は2016年に120万件に増加し、06年の10倍に達した。これは、日本と米国の約30万件の国内出願を大幅に上回っている。中国が知的財産の倉庫を建設しようとしている兆候だ。私たちの見解では、同国政府は国内発の特許を中心とした知的財産権を強化する傾向が強くなりつつある。

17年に国際出願された特許を見ると、中国からの出願は日本からの出願を上回り、米国に次ぐ第2位だ。中国の特許出願は01年に世界貿易機関(WTO)に加盟する頃に始まり、その後、中国の成長と貿易量の拡大とともに本格化した。最近では、「中国製造2025」計画によって政府が後押しする主要な戦略分野での世界トップクラス入りを目指している。

特許と中国製造2025 -照準に入る米国

「中国製造2025」計画の重点分野を中心に、日米中の国際特許公開における技術分野別のシェアの推移をみると、少なくとも現状では、同計画は米国にとっては脅威としての側面が強く、日本にとっては補完的な側面が強い印象だ。

米国は、過去20年にわたり、徐々に国際特許公開数のシェアを失いつつある。これは00年代の日本企業の知財戦略の急速な進展と10年代の中国の特許ブームを部分的に反映している。

中国の技術開発の進捗(しんちょく)が進む分野は、新しい形態のIT(携帯電話)、エネルギー機器(再生可能エネルギー)、省エネ輸送(電気自動車)、および一部のロボットなど、最終製品に集中している。米国や日本は中間財の主要技術である新素材やバイオ・製薬などの国際特許公開において引き続き優位な状況にある。

「中国製造2025」計画の対象となる関連技術の国際特許公開数を比較すると、中国の特許公開は音響映像技術、光学機器、デジタル通信、電気通信、コンピューター技術のような一部の分野で特に進んでおり、米国が強い分野とオーバーラップする。

企業レベルで見ても、中国の知的財産の進歩は明らかだ。 06年には、国際特許公開の上位10位に中国企業は入らなかったが、 17年には3社がランクイン。一方、日本、米国、韓国はそれぞれ2社がトップ10入りするにとどまる。

中国は17年、比較的少数の企業が多くの国際特許を公開し、それらの企業の特許は比較的狭い範囲の技術に集中している。例えば、中国テクノロジー産業の中心地である深圳に本社を置く華為(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)は、中国の特許公開で大きなシェアを占めており、その約60%がデジタル通信に関連している。対照的に、日本企業の特許公開の対象分野の範囲はより広く、相対的に技術の裾野が広い。中国企業は選択と集中で一気に重点分野での存在感を増していると言えそうだ。

特許と利益 – 曖昧な関係

特許を出願しても、少なくとも短期間では、利益と成長を促進する技術の育成にはつながりにくい。中国は、過去10年にわたる特許出願や国際特許公開の急速な増加の後でさえ、知的財産の使用料について、依然として主要な貿易相手国に対し大きな支払い超過だ(中国の国家外貨管理局のデータによる)。

対照的に、経済協力開発機構(OECD)のデータによると、米国と日本は技術貿易収支の受取額が大きい(技術収支は、ライセンス、特許、ノウハウ、研究、技術援助など、国際的な技術移転などからなる)。

競争力-貿易特化が示すもの

中国はバリューチェーンの高度化を進めるが、日米の直接的な脅威になるまでまだ距離があるというのがブルームバーグ・エコノミクスの見解だ。中国は、モノの輸出競争力を示す貿易特化指数によると重要な分野で相対的な競争力を増している。この指数では、特に消費財のように中国が相対的に好調な分野では、米国が後手に回っているように見える。これが、中国との貿易不均衡に対する米国の懸念の火種となっている。

しかし、中国が貿易で比較優位にある分野は、付加価値が低い傾向がある。米国や日本は、知的財産や生産プロセス・マネジメントなど、付加価値の高い分野で競争力を保持している。現在、日中間の貿易は多くの分野において補完的だ。しかし、中国が目標としている技術は、長期的には高付加価値領域に移行し、日本の脅威となる可能性を示唆している。

総括すると、中国の特許出願への注力は、音響映像技術、光学機器、デジタル通信、電気通信、コンピューター技術などの分野において、競争力の向上で実を結びつつある。中国の生産バリューチェーンの高度化は、今後数年間、こうした技術に関わる業界の米国と日本の企業に大きな圧力がかかっていく可能性がある。

原文の英字記事はこちらをクリック
JAPAN INSIGHT: China Patent Grab – Rising Stakes for Japan, U.S.

情報源:中国の貿易に陰り、成長下押しか-トランプ氏、全輸入品に関税の用意 – Bloomberg


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