老化から若返りへ!?成長したヒト細胞の老化を逆転させることに成功(英研究) : カラパイア

マジで?


誰もが願う若返り。老いても若々しくありたいものだ。自分が生きている間に若返りの薬ができればと願う人も多いだろう。

世界各国では、若返りに関する様々な研究が行われている。

最新の実験ではヒト細胞の老化を逆転させることに成功したそうだ。これはいつの日か若返りの薬を開発する基礎になるかもしれない。

老化のメカニズム

老化は人体機能の進行性の衰えであり、がん、糖尿病、痴呆症といったいくつもの慢性疾患と関連する。

細胞や組織が機能しなくなってしまう理由はいくつもあるが、老化の生物学で最近注目されているのは、組織や内臓に老化細胞が蓄積することだ。

老化細胞は古い劣化した細胞で、本来あるべきようには機能しない。それだけなく周囲にある細胞の足まで引っ張る。

ヒト細胞における細胞の老化
ヒト細胞における細胞の老化
image credit:Eva Latorre

こうした機能不全を起こした古い細胞を取り除くと、白内障の発症が遅れるなど、加齢に伴う症状が和らぐことが動物実験で確認されている。

年齢を重ねると細胞が老化してしまう理由は完全には明らかではないが、DNAの損傷、炎症、染色体の端にある保護分子(テロメア)の損傷が示唆されている。

また、より最近では老化を進める因子の1つとして、遺伝子がスイッチの切り替えを正しいタイミングと場所で行えなくなることが指摘される。

遺伝子の情報伝達

私たちが年を経るにつれて遺伝子の調節機能が衰えてくる。

人体の各細胞には生命に必要な全情報が保持されているが、すべての遺伝子があらゆる組織あるいはあらゆる状況においてオンの状態にあるわけではない。同じ遺伝子を持ちながらも、たとえば心臓細胞が腎臓細胞と違うのはこのためだ。

遺伝子が細胞内外からの信号によって活性化されると、その細胞が作るものが何であれ、その作成に必要なすべての情報が含まれた分子のメッセージ(RNA)を作る。

現在では、遺伝子の95パーセント以上が、細胞のニーズに応じて、いくつか種類の異なるメッセージを作れることが判明している。

これは各遺伝子をレシピと考えると分かりやすいかもしれない。チョコレートを入れるかどうかで、シンプルなスポンジケーキもチョコレートケーキも作ることができるようなものだ。

遺伝子もまたこうしたことを行なっている。だがその時々でどの種類のメッセージを作るかの判断は、スプライシング因子というおよそ300個のタンパク質のグループによって行われている。

私たちが年をとると、作ることができるスプライシング因子の量が減る。すると老化した細胞は環境の変化に応じて遺伝子のスイッチの切り替えができなくなってくる。

こうした重要な機能の衰えは高齢者の血液にも、さまざまな組織の単離されたヒト老化細胞にも現れる。

老化細胞
老化細胞
image credit:Lorna Harries / Matt Whiteman

老化したヒト細胞を若返らせることに成功

このスプライシング因子を取り戻す方法を模索したのがイギリス・エクセター大学のローナ・ハリーズ(Lorna Harries)氏らだ。

彼女たちが、少量の硫化水素を放出する化学物質で古い細胞を処理すると、一部のスプライシング因子が増加した。つまり老化したヒト細胞を若返らせることに成功したのである。

硫化水素は人体にも自然に存在する分子で、動物実験では加齢に関連する病気のいくつかを緩和することが明らかになっている。

だが大量に使えば毒になるために、必要な細胞に直接送り届ける方法が必要だった。そこで”分子の郵便番号”を使って、副作用が出ない程度の少量をミトコンドリアに直接届けるやり方が考案された。

ミトコンドリアは細胞内でエネルギーを作り出す構造物である。

このように分子ツールを使えば、いずれ生きている人間から老化細胞を取り除くことも可能になるかもしれない。そうなれば老化に関係する病気をいくつも同時に治療できることになる。

実現するのはまだまだ先のことだが、幸先のいいスタートだ。

References:eurekalert / ncbi / sciencedaily

情報源:老化から若返りへ!?成長したヒト細胞の老化を逆転させることに成功(英研究) : カラパイア


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