マジで?
脳卒中や昏睡状態を経て視力を失った女性が、「動くもの」だけを見られるようになったという非常にまれな失明の事例が報告されています。女性は「娘が遠ざかっていく時のポニーテールの横揺れ」は見ることができますが、「娘自身」を見ることができない、という状態とのことです。
Psychophysical and neuroimaging responses to moving stimuli in a patient with the Riddoch phenomenon due to bilateral visual cortex lesions – ScienceDirect
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0028393218302045This Woman Has a Strange Type of Blindness – She Can’t See Anything Unless It Moves
https://www.sciencealert.com/blind-woman-with-riddoch-syndrome-can-only-see-moving-objects-fmriスコットランド出身の48歳女性、Milena Canningさんは、生まれながらに視力に問題があるわけではありませんでした。Canningさんは18年前に呼吸器感染症にかかり、脳卒中と8カ月の昏睡状態を経て、視力を失いました。
昏睡から目覚めて6カ月後、それまで視力を失っていたCanningさんはキラキラと光るギフトバッグが花火のように輝いている様子を目にしたといいます。それから2年して眼科医の元を訪れた時は、満足に生活を送れるレベルの視力はなかったのですが、その後、眼科医の腕の動きを捉えたり、動いている物の色を答えたりできるようになりました。ただし、Canningさんが見ることができるのは「動いているもの」に限られます。
Canningさんを担当するGordon Dutton医師は「彼女は自分の娘が彼女から離れていくとき、そのポニーテールが左右に揺れているのを見ることができます。しかし、娘自身を見ることはできません。水が排水溝に流れ落ちていく様子を見ることができますが、バスタブに入っている子どもを見ることはできないのです」と述べています。
by Joonas SildDutton医師は視界を拡張するためにロッキングチェアの使用を推奨しており、Canningさんも目の前にあるものを見る時には顔を左右に揺らすといった行動を取ります。しかし、なぜこのような症状が起こっているのかは、謎に包まれていたとのこと。
Dutton医師の勧めにより、さらなる調査を行うため、Canningさんはカナダにあるウェスタン大学のBrain and Mind Instituteという研究機関に向かいました。そこで、神経心理学教授であるJody Culham氏らがfMRIによる脳スキャンを含めたテストや分析を実施しました。
調査の結果、Canningさんは「リドック症候群」と呼ばれる状態にあることが判明。リドック症候群は「静的動的視野解離」とも呼ばれ、視覚情報の処理を行う後頭葉の障害によって引き起こされるもの。真逆の症状として、動いて「いない」ものしか見ることができない「視覚性運動盲」という状態も存在します。
Culham氏によると、Canningさんの脳ではりんご1個分の大きさに相当する後頭葉全体が失われているとのこと。Canningさんの脳は視覚システムにおける「スーパー・ハイウェイ」が失われているのですが、一方で「裏道」と呼べるものが発達したとCulham氏は説明しています。裏道がスーパー・ハイウェイから脳への接続をバイパスすることにより、「動いているもの」だけが脳の他の部分に情報として届けられるそうです。
by Frank ZienertCanningさんの事例は脳の可塑性、そして「人間や動物の脳はダメージを受けても広範囲にわたって再接続可能である」ということを示す貴重な例だとのこと。「Milenaのような患者は、『何が可能であるのか』ということを我々に示し、そしてより重要なのは『どの視覚と認知機能が一緒に動いているのか』ということを教えてくれます」とCulham氏は語りました。
情報源:「止まっているものは見えないが、動いているものなら見える」という特殊な失明事例が報告される – GIGAZINE
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