藤井五段、驚異のスピード出世 最短ルートの勝利に磨き:朝日新聞デジタル

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将棋|名人への道 藤井聡太:朝日新聞デジタル

藤井聡太五段(15)が1日、史上初の「中学生五段」になった。加藤一二三九段(78)や羽生善治竜王(47)ら、歴代の名棋士も成し得なかった快挙だ。多くの棋士が通る「一里塚」とはいえ、その出世の速さは特筆に値する。

梶浦宏孝四段に勝利した藤井聡太・新五段=1日午後11時10分、東京都渋谷区の将棋会館、竹花徹朗撮影

藤井五段はこの日、第76期将棋名人戦・C級2組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の9回戦で梶浦宏孝四段(22)と対戦した。両者は昨年6月、叡王戦の予選で対戦し、藤井五段が勝っている。

ここまで唯一無傷の8連勝の藤井五段は、この一局に勝てば、一つ上のC級1組に昇級できる上位3位以内が確定。規定により四段から五段に昇段できる。

終局後、梶浦宏孝四段(右)と対局を振り返る藤井聡太五段=東京都渋谷区、竹花徹朗撮影

先手番の梶浦四段の作戦は、得意戦法の「相懸かり」だった。自ら戦いを起こし、ペースをつかんだかと思われたが、藤井五段も巧みに対応。検討室の棋士たちも、にわかには優劣を判断しかねる好勝負になった。

しかし、勝負どころでリードを奪ったのは藤井五段だった。相手の攻めに応対せず、強気の攻め合いを挑んで優位を築いた。

図・▲3三歩まで

終盤、棋士たちを驚かせたのが、図の局面で藤井五段が指した手。銀取りの▲3三歩に対し、構わず△5八香成と攻め込んだ。佐々木勇気六段、三枚堂達也六段ら若手棋士たちはこの手を見て、「手抜いたんですか!」と驚きの声を上げた。

自分の駒を取られそうな局面では、それを防ぐのが常識。いかに速く相手の玉将を捕らえるかが肝要な終盤戦では当てはまらないことも多いが、この▲3三歩は放置しづらいとみられていた。「手抜く」は「手を抜く」の意。相手の手に対応せず、他の箇所に働きかける手を指した場合に使われる。

梶浦宏孝四段に勝利した藤井聡太五段=東京都渋谷区、竹花徹朗撮影

△5八香成に対し、梶浦四段は▲3二歩成と銀を取ったが、△同玉に対して後続手段が難しい。▲6九銀と受けの手を選んだが、△8七歩成以下、藤井五段の寄せが決まった。最短ルートでの勝利を目指す姿勢にさらに磨きがかかっていることをうかがせわた。

五段昇段を決めた藤井五段は「踏み込んでいけたのが良かった」、梶浦四段は「予想していない手で来られて、切られてしまった」と振り返った。

9連勝目をあげ、50人いる今期のC級2組で首位が確定。3月15日にある最終10回戦(対戦相手は三枚堂六段)を待たずに、昇級が決まった。

梶浦宏孝四段(右)に勝利し、対局を振り返る藤井聡太・新五段=1日午後11時21分、東京都渋谷区の将棋会館、竹花徹朗撮影

五段昇段の規定は五つある。「竜王ランキング戦連続2回昇級、または通算3回優勝」「順位戦でC級1組に昇級」「タイトル挑戦」「全棋士参加棋戦優勝」「公式戦100勝」。このうち、タイトル挑戦と全棋士参加棋戦優勝はハードルが高いため、該当例は極めてまれだ。C級1組への昇級なら、デビュー1年以内に五段になることも可能だ。藤井五段はプロ入りが10月だったため、1年4カ月での五段昇段となった。

C級2組は、五つある順位戦のクラスのうち最も下位に位置する。だが、1期での突破は簡単ではない。藤井五段の師匠の杉本昌隆七段(49)は、「奨励会の対局と違い、順位戦の持ち時間は長く、それに対応する必要がある。若手がベテランの洗礼を受けることもよくある」と話す。

中3でプロ入りした羽生善治竜王(47)は初参加の時、8勝2敗だった。2期目で10連勝して昇級を果たし、17歳6カ月で五段になっている。加藤一二三九段(78)は中学3年で初参加したC級2組で11勝1敗の成績を挙げ、C級1組に上がった。当時は4月1日付で昇段する規定だったため、五段になったのは既に中学卒業後。15歳3カ月だった。

藤井五段は15歳6カ月で五段昇段を果たした。最年少記録には3カ月及ばなかったが、史上初の「中学生五段」となった。羽生竜王との対戦が決まっている17日の朝日杯将棋オープン戦(朝日新聞社主催)で優勝すれば、「史上最年少六段」と「中学生六段」を果たすことになる。さらに史上最年少での棋戦優勝、中学生として優勝できる最後の機会としても高い注目を集める。

もっとも、本人はそうした記録にはあまり関心がなさそうだ。1日の終局後のインタビューでは、「順位戦では一年間、昇級を目指して戦ってきたので、果たせたのはうれしい」。「昇段」よりも、名人戦につながる順位戦での「昇級」の達成感が上回っていることを感じさせた。

インタビューの後、感想戦はなかなか始まらなかった。駒箱を開けて駒を取り出すのは上位者の役割とされているが、7歳上の梶浦四段が藤井「五段」に敬意を表してそれを譲ったためだ。「どうぞ」と促す梶浦四段に対して、「いえいえ」と遠慮する藤井五段。譲り合いの末、駒箱を手に取ったのは藤井五段だった。取材陣のカメラレンズが向けられる中、両者は約13時間の熱戦をもう一度味わうかのように振り返っていた。(村瀬信也)

情報源:藤井五段、驚異のスピード出世 最短ルートの勝利に磨き:朝日新聞デジタル


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