藤井聡太竜王、広瀬章人八段とプレーオフへ 名人挑戦権をかけ直接対決へ/将棋・順位戦A級

第81期A級順位戦9回戦 一斉対局 結果

藤井聡太竜王 vs 広瀬章人八段のプレーオフが決定
開催は、3月8日、東京・将棋会館


14時から渡辺明名人による現地大盤解説


2023/03/02 20:27

藤井聡太竜王、名人初挑戦へプレーオフ以上決める 稲葉陽八段に勝利し先手番28連勝で羽生善治九段が保持する最多記録に並ぶ/将棋・順位戦A級

将棋の順位戦A級・最終9回戦が3月2日に行われ、藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が稲葉陽八段(34)に91手で勝利した。この結果、藤井竜王は順位戦A級初年度を7勝2敗の首位で終え、自身初の名人挑戦へプレーオフ以上への進出が決定した。前局までに同星だった広瀬章人八段(36)も現在9回戦を戦っており、広瀬八段が勝利すれば両名でのプレーオフ実施、敗れた場合は藤井竜王にとって初の名人初挑戦が決まる。

藤井竜王が自身初の「将棋界の一番長い日」を白星で飾った。前期にB級1組からの昇級を決め、初のA級参戦となった今期を7勝2敗の成績で駆け抜けた。藤井竜王が狙うは、谷川浩司十七世名人(60)が保持する20歳2カ月での最年少名人記録の更新。7月生まれの藤井竜王にとっては、今期が最初で最後のチャンスとなっている。

長い歴史を持つ名人戦の過酷な挑戦権争いに加えて、来期の順位、残留を巡る熾烈な戦いが繰り広げられることから「一番長い日」と呼ばれるA級最終一斉対局。藤井竜王は、第75期(2017年)名人戦挑戦経験を持つ稲葉八段と対戦した。藤井竜王の先手で始まった本局は、「角換わり腰掛け銀」の戦型に。藤井竜王の得意戦型とあり、快調に攻めてペースを握った。

対する稲葉八段は受けに回って反撃へのチャンスを伺ったが、藤井竜王が強く踏み込みリードを拡大。夕食休憩明けに終盤戦に突入すると、竜を起点に後手玉を包囲していく。寄せ合いとなると、稲葉八段に粘りも許さぬ厳しい攻めで押し切り、鮮やかに勝利を決めた。さらに藤井竜王は、先手番連勝数を「28」に更新。羽生善治九段(52)が19歳だった1989年に打ち立てた先手番最多連勝数に並んだ。

勝利した藤井竜王は、「駒損で攻めが続くかどうかという局面が長かったが、こちらの攻めの細いので際どい局面が多かった。一局を通してそういう局面が多かったのかなと思います」と一局を総括。A級参戦初年度7勝2敗の成績については、「反省点もいろいろあったが、負けた将棋も含めて6時間という持ち時間をしっかり使って考えることができたかなと思う。その点は良かったですし、充実感があったかなと思います」と話した。

敗れた稲葉八段は、「想定外の形から受け身になってしまって、途中からは良いところがなかった」と一局を振り返った。今期は4勝5敗で終戦。「スタート2連勝だったが、内容と結果が伴わなかったので立て直していかなければならないと思うような、厳しい内容だった」と厳しい表情だった。

この結果、藤井竜王は7勝2敗で名人挑戦へプレーオフ以上の進出が決定。プレーオフか挑戦かは、現在対局中の広瀬八段―菅井竜也八段(30)戦の勝負のゆくえに委ねられることになった。広瀬八段が勝利すれば両名でのプレーオフへ、敗れた場合は藤井竜王の名人初挑戦が決まる。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

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2023/03/02 22:10

藤井聡太竜王「挑戦の可能性残し嬉しく思う」名人初挑戦へプレーオフ以上が確定 終局後に笑顔も/将棋・順位戦A級

将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、20)が3月2日、順位戦A級・最終9回戦を戦い、稲葉陽八段(34)に勝利を飾った。この結果、藤井竜王は7勝2敗でリーグを終え、名人挑戦へプレーオフ以上の進出を決めている。現在対局中の広瀬章人八段(36)が勝てばプレーオフへ、敗れた場合は藤井竜王が最年少名人への挑戦権を獲得する。藤井竜王は、自身の終局後に囲み取材に応じ、「挑戦の可能性を残した状態でリーグを終えられたことを嬉しく思っています」と語った。主な内容は以下の通り。

――最終局対局前の心境を教えてください。

大きな一番だと思っていましたが、今までと気持ちが違ったということはなかったです。

――名人挑戦に大きく近づく勝利。今の心境は。

まだ状況が決まっていないので何とも言えないところがありますが、今期A級初めてということで厳しい戦いになると思っていましたが、プレーオフ以上という成績でリーグを終えることができて良かったかなと思っています。

――藤井竜王にとって「名人」というタイトルはどのような存在ですか?

将棋界で最も歴史のあるタイトルなので、重みというものは大きなものかなと思いますし、順位戦をやっていった先に頂点に名人があるというシステム。そこに少しずつ近づけているというのは良かったなと思います。まだ名人を意識することはないですが、引き続き頑張っていけたらと思っています。

――幼少期には「名人をこす」という目標を立てていた。夢に近づいている。

小学校の低学年の頃の話なので、そろそろ時効にしてほしいと思っているのですが…(笑)。ずっと意識していたわけではないですが、大きな存在だと思っています。名人戦の舞台に立てるように頑張りたいと思います。

――挑戦は他力(の結果)となるが、どのように待機しますか?

前期のラス前(B級1組最終局の前局)も同じような状況だったのですが、その時は結局決まらなかったので、気楽にいようかなと思います(笑)。

――広瀬ー菅井戦の結果次第ではプレーオフの可能性も残っている。

まだどうなるか確定していない状況ですが、こちらとしてはプレーオフがあるというつもりでいます。

――6期目の順位戦での成績は56勝5敗。これまでの道のりはどのように感じていますか?

ここまで60局くらい指してきましたが、他棋戦の予選は東西が分かれていることが多いのに対して、順位戦はいろいろな棋士の方と長い持ち時間で対局できるということで、プロになった当初から順位戦ならではの充実感はいつも感じていました。まだ途中ではあるんですけど、一局一局やってきてA級という舞台で対局することができたのは良かったと思っています。

――順位戦で印象に残っている一局は?

すぐには出てこないです。

――A級順位戦では?

2回戦の菅井竜也八段戦です。中盤難しいのかと思っていた局面からあっという間に悪くなってしまったので、A級の厳しさを感じたというのもありますし、まだまだやっぱり力が足りないなと感じた一局でした。

――名古屋対局場で9局中6局を指した。

今期から開設していただいて、そこで指すことが多かったですが、異動の負担が少ないというのもありますし、地元で対局する機会は限られていたので、順位戦でその機会を多くいただけたのはありがたかったです。今までは東京か大阪かがほとんどだったので、自分の感覚としてもだいぶ負担が少ないのかなと感じました。

――今期黒星の2局も名古屋対局場だった。相性などは感じていますか?

偶然だと思います(笑)。ちゃんと調べたら相性の良し悪しはあると思いますが、対局するにあたって気にしても仕方ないので、自分としては気にしていないです。

――今期は6月以降、先手番で角換わり多用するようになった。集中的に指すようになった要因は?

角換わりの中でもいろいろな形はがあるが、後手が待機する形に対して先手が仕掛けていけるかというのがひとつのテーマで、その中で先手もいろいろ工夫する余地があるのかなと感じて角換わりを採用しているというところがあります。

――先手番で9割超えの高勝率をマーク。勝敗よりも興味、工夫が尽きないという理由?

従来あまりなかった指し方も有力なケースもあるということも少しずつ分かってきたというのもあって、工夫の余地の大きい戦型なのかなと思っています。

――広瀬戦は見届けますか?

局面次第ですが…(笑)。次の対局も近いので、その局面がすぐに終わりそうでなければ先に寝ると思います。

――ファンへ

本局勝つことができて、挑戦の可能性を残した状態でリーグを終えられたことを嬉しく思っています。まだどうなるかわからない状況ですが、次の対局も引き続き頑張りたいと思います。
(ABEMA/将棋チャンネルより)

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2023/03/02 22:31

藤井聡太竜王、広瀬章人八段とプレーオフへ 名人挑戦権をかけ直接対決へ/将棋・順位戦A級

将棋の藤井聡太竜王(王位、叡王、王将、棋聖、)は3月2日、順位戦A級・最終9回戦で稲葉陽八段(34)に勝利し7勝2敗の首位でリーグを終えた。前局までに藤井竜王と並んでいた広瀬章人八段(38)も、9回戦で菅井竜也八段(30)に勝利。この結果で、藤井竜王と広瀬八段が名人挑戦権をかけてプレーオフを戦うこととなった。

【映像】藤井聡太竜王、順位戦A級終了後インタビュー

前期、竜王戦七番勝負を戦った藤井竜王と広瀬八段が、名人への挑戦権をかけたプレーオフで再び対戦する。10人が総当たりし、渡辺明名人(棋王、38)への挑戦権を争うリーグ戦で、両者はともに7勝2敗で終戦。最終局を終えて同星となったため、挑戦権争いはプレーオフで決着することとなった。

両者による注目のプレーオフは3月8日に予定。藤井竜王が名人挑戦権を獲得すれば20歳8カ月での挑戦となり、1960年の第19期名人戦七番勝負、加藤一二三九段(83)の20歳3カ月の最年少挑戦記録は破れなかったが、七番勝負を制し名人位を奪取した場合、谷川浩司十七世名人(60)が1983年に打ち立てた21歳2カ月の最年少名人を40年ぶりに更新することになる。

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2023-03-02 第81期順位戦A級

プレーオフ決定を受けての藤井聡太竜王の談話

広瀬章人八段とのプレーオフが決まったことを受けての、藤井聡太竜王の談話です。

――プレーオフになりました。

藤井 最終日の段階で、プレーオフの可能性も高い状況だったので。プレーオフもすぐ来週あり、大きな一局になると思うので、しっかり集中して臨みたいです。

――A級で7勝2敗という成績でプレーオフになったことについては、いかがですか。

藤井 負けた2局は両方完敗だったので仕方ありません。7勝2敗という成績自体、それ以上は難しいというところだと思います。結果的にプレーオフまで進むことができたので、頑張りたいです。

――相手の広瀬八段の印象と抱負をお願いします。

藤井 広瀬八段とは、竜王戦七番勝負でも対戦があリました。竜王戦では広瀬八段の序中盤の工夫に苦しめられ、改めて広瀬八段の強さを知ったところが多かったので、その辺りを課題と捉えて、よい内容にできるように戦いたいと思います。

※プレーオフは、3月8日(水)に東京・将棋会館で行われます。


A級9回戦

藤井 聡太竜王(7勝2敗)○-●稲葉 陽八段(4勝5敗)…19時52分
糸谷 哲郎八段(1勝8敗)●-○佐藤 康光九段(1勝8敗)…21時18分
菅井 竜也八段(5勝4敗)●-○広瀬 章人八段(7勝2敗)…22時20分
豊島将之九段(6勝3敗)○-●佐藤天彦九段(3勝6敗)…23時40分
斎藤 慎太郎八段(5勝4敗)●-○永瀬 拓矢王座(6勝3敗)…23時52分

[A級成績一覧] ( )内は順位
【7勝2敗】広瀬(5)、藤井聡(9)
【6勝3敗】豊島(4)、永瀬(6)
【5勝4敗】斎藤慎(1)、菅井(8)
【4勝5敗】稲葉(10)
【3勝6敗】佐藤天(3)
【1勝8敗】糸谷(2)、佐藤康(7)
◆挑戦
広瀬八段と藤井聡竜王によるプレーオフが、3月8日(水)に東京・将棋会館で行われます。
◆降級
佐藤康九段、糸谷八段

情報源:第81期名人戦・順位戦 七番勝負/A級


▲藤井聡太竜王ー△稲葉陽八段

2023-03-02 第81期順位戦A級

☗藤井聡-☖稲葉 終局

☗藤井聡-☖稲葉戦は、藤井聡竜王が勝ちました。終局時刻は19時52分。消費時間は☗藤井3時間55分、☖稲葉4時間47分。勝った藤井竜王は7勝2敗、敗れた稲葉八段は4勝5敗でリーグを終えました。

◆藤井竜王の談話

――控室では、☗2四歩(47手目)が珍しいという評判でした。

藤井 ☗4四歩と取り込むのももちろん自然なんですけど、☗2四歩に☖同歩か☖同銀かを見て、こちらも手を変えていこうと思っていました。

――研究範囲だったということですか。

藤井 そうですね。考えたことのある局面で、☗2四歩は珍しい筋なんですけど、やってみようかと思っていました。

――昼食休憩明けに☗5一角(53手目)と打ち込んでいった辺りの成算はいかがでしたか。

藤井 駒損で、かつ歩切れでの攻めになるので、うまくいっているのかどうか分からなかったんですけど、☗2四歩と突き捨ててしまっているので、何か動いていかなければいけない局面だと考えていました。

――そこからは☗3四歩(67手目)~☗2四飛と玉頭から迫る展開になりました。

藤井 駒損ではあるんですけど、一応、攻めの形を作ることはできたのかなと思っていました。

――全体を振り返って、どういう将棋だったでしょうか。

藤井 駒損でこちらの攻めも細いので、際どい局面が続いていたと思います。

――今期は7勝2敗で終わりました。(同じ2敗の)広瀬八段の対局が続いていますので、プレーオフになるかどうかはまだ分からないんですけれども、この成績についてはいかがですか。

藤井 負けた2局はチャンスを作ることができない将棋だったので、反省点と思っています。挑戦の可能性を残してリーグを終えることができたのはよかったです。

――勝った7局については、よく指せたという手応えがあったのでしょうか。

藤井 もちろん、いろいろ反省点もあったんですけど、負けた将棋も含めて、6時間という持ち時間をしっかり使って考えることができたとは思うので、そこは充実感がありました。

――A級で指すということについては、これまでのクラスとは違う面がありましたか。

藤井 順位戦の最高峰の舞台ですし、対局数も少ないので、一局一局が非常に重いと感じながらやっていました。

――名人というタイトルへの思いをお聞かせください。

藤井 非常に歴史のある称号なので、そういった意味では特別な意味があります。

◆稲葉八段の談話

――☗4五歩(45手目)と仕掛けられた辺りまでの序盤作戦はいかがでしたか。

稲葉 ☖3一玉(46手目)までは作戦で、そこで☗4四歩にはいろいろと用意してきたんですけど、☗2四歩は考えたことがなかったです。本譜は受け身になって、事前に考えていた展開とはまったく違ってしまったので、結果的にうまいタイミングで☗2四歩を突かれたのかなという感じがしました。

――☗5一角(53手目)と打たれたところはいかがでしたか。

稲葉 飛車を4二に引けば、☗5一角は打ってこられるかなと。2筋の突き捨てをとがめる変化にならないかなと思っていたんですけど、こちらの形が悪いので、細いながらも攻めがつながってしまっているのかなという感じでした。

――どの辺りが誤算でしたか。

稲葉 ☗3四歩(67手目)は取るつもりでいたんですけど、飛車(5二飛)の位置がすごく悪いので、攻めがつながってしまうのがちょっと誤算というか。金を引くようでは(68手目☖3二金)、粘る展開になってしまいました。

――全体を振り返って、いかがですか。

稲葉 想定外の形から受け身なってしまって、途中からはいいところがなかったです。

――今期は4勝5敗で終わることになりました。

稲葉 スタートは2連勝を切れたんですけど、そのあとは内容と結果が伴わなかったので、立て直していかなければいけないなと。

――今期は前期昇級でA級に復帰しての戦いでした。

稲葉 夏場以降、順位戦以外でも公式戦で負けることが増えて対局数が減ってしまい、調子が落ちてしまったかなというところです。他棋戦も含めて活躍していかないと、A級は厳しいのかなという感じがしました。

19時52分 終局
91手 3三龍まで、▲藤井聡竜王 の勝ち

この局面で稲葉が投了した。以下、(1)☖3二銀は☗2二角成☖4一玉☗4三桂、(2)☖2一玉は☗2三歩で、いずれも一手一手の寄りだ。終局時刻は19時52分。消費時間は☗藤井3時間55分、☖稲葉4時間47分。勝った藤井は7勝2敗、敗れた稲葉は4勝5敗でリーグを終えた。藤井はプレーオフ進出以上が確定した。


▲菅井竜也八段ー△広瀬章人八段

2023-03-02 第81期順位戦A級

☗菅井-☖広瀬 広瀬八段勝利

104手で、広瀬八段が菅井八段をくだしました。終局時刻は22時20分。消費時間は☗菅井5時間38分、☖広瀬5時間19分。勝った広瀬八段は7勝2敗、敗れた菅井八段は5勝4敗になりました。
広瀬八段は、渡辺明名人への挑戦権を懸けて、藤井聡太竜王とプレーオフを戦います。

◆広瀬章人八段の談話
――本局は相穴熊戦になりました。序盤を振り返ってください。

広瀬 お互いに銀冠穴熊という珍しい形になって。後手番なので無理に打開しなくてもと思っていたのですが、待つ手も難しいと仕掛けていきました。成算があったわけではなく、行き掛かり上そうなってしまったかなと。

――角交換から☖5九角(56手目)と打ち込んで攻めていきました。このあたりはいかがでしたか。

広瀬 妥当な進行ではあると思ったのですが、夕食休憩あたりで気になる変化があって。その変化になったときにどうするか悩んでいたので、自信があったわけではなかったです。

――二枚飛車で攻め込んで☖5五角(☖5五角)から攻勢に出ました。このあたりから終盤に掛けてはいかがでしたか。

広瀬 夕食休憩明けから読みが本線から外れてきて。☗7五角(67手目)~☗6六金(77手目)の順が見えていなかったです。こちらは駒損しているので、その損が出ないようにと思いながら指していました。

――菅井八段の穴熊も非常に深くて攻略していくのは難しかったと思いますが、4筋を香で攻めて☖4九香成(96手目)が実現したあたりはいかがでしたか。

広瀬 相手の駒も多いので決定打になっているかわからなかったですけど。こちらの穴熊も薄いながら手がつかなければというところなので、難しいながらもちょっと良くなった可能性はあるかなと思っていました。

――穴熊の深い理解が生きたところもあったと思います。全体的にはいかがでしたか。

広瀬 自分がやっていた頃の穴熊とは違う形なので、経験というよりはあらためて読んでというところでした。生きたところもあったかもしれませんが、新鮮な目で見れたのがよかったかもしれません。

――7勝2敗で今期のA級順位戦を戦い終えました。同じく7勝2敗の藤井聡太竜王とプレーオフとなりました。

広瀬 7勝2敗は自分の過去最高成績なので、挑戦の可能性が残ったのはよかったことですけど、まだ挑戦が決まったわけではないのでプレーオフに向けて準備したいと思います。

――藤井竜王とは竜王戦での名勝負が記憶に新しいところです。借りを返すチャンスが到来したと思いますが。

広瀬 竜王戦のときから充実ぶりというか実力はよくわかっているつもりなので、その点を踏まえてどういうふうに戦うかこれから考えます。

――名人挑戦についてもうひと声うかがえれば。

広瀬 プレーオフに進出したことはあったのですが、そのときは複数人でした。この一番を勝てば名人挑戦というのは初めてなので、非常に重みのあるタイトルに挑戦できればと思います。

◆菅井竜也八段の談話
――三間飛車を選ばれた序盤を振り返ってください。

菅井 こういう将棋をやってみようと思ったのですが、夕食休憩のところでうまく指せなかったかなと思います。☖6九竜(62手目)に対して本譜は☗2二角成としたのですが、そのタイミングがよくなかったような気がします。

――終盤に関してはいかがでしたか。

菅井 少し苦しい展開だと思っていました。

――今期のA級順位戦を5勝4敗で終えました。9局全体を振り返ってください。

菅井 もう少し研究して挑まないと厳しいかなと思いました。

――来期もA級で戦うことになります。振り飛車ファンから多くの視線が注がれていると思います。来期の抱負をお願いします。

菅井 もう少し研究して力をつけて、A級順位戦でいい結果を残せるように頑張りたいです。

22時20分 終局
104手 △3二金まで

金を逃げて攻めを催促する。☗4一飛には☖3一金☗同飛成に☖2九金から先手玉が詰む。先手は銀取りが受からず、攻防ともに見込みがなくなってきたようだ。
この局面で菅井が投了した。終局時刻は22時20分。消費時間は、☗菅井5時間38分、☖広瀬5時間19分。勝った広瀬は7勝2敗、敗れた菅井は5勝4敗で今期の順位戦を終えた。勝った広瀬は渡辺明名人への挑戦権を懸けて藤井聡太竜王とのプレーオフになった。


▲斎藤慎太郎八段ー△永瀬拓矢王座

2023-03-02 第81期順位戦A級

☗斎藤慎-☖永瀬 永瀬王座の勝利

☗斎藤慎-☖永瀬戦は23時52分、142手で永瀬王座の勝ちとなりました。消費時間は両者5時間59分。勝った永瀬王座は6勝3敗、敗れた斎藤八段は5勝4敗で今期の全日程を終えました。

【永瀬拓矢王座インタビュー】
――本局を振り返られて、どんな印象でしたか。
永瀬 最初は難しいのかと思いましたが、進むに連れて徐々に苦しい将棋になりました。終盤は余されてしまうのかなと思うところが結構あったので、厳しい展開かなと思っていました。
――印象に残った手や局面があれば教えてください。
永瀬 夕休前に指された65手目の☗2五歩は、攻め合うつもりでいたのが強い踏み込みを見せられて、こちらのまともな対応がちょっと分からなかったので、そこから形勢が苦しくなったように思います。
――本局は5勝3敗同士の対局ということで注目されました。どのようなお気持ちで臨まれたのでしょうか。
永瀬 最後は後手番が残っている状況で、星取りは一緒でもそれは厳しいのかなと思っていました。ただ、斎藤さんに順位戦で厳しい目に結構あっているので、1勝できてよかったかなと思います。
――勝たれて6勝3敗という成績についてはどういった思いでしょうか。
永瀬 前期5勝4敗でしたので、少し前進できてよかったかなと思います。
――藤井竜王、広瀬八段が勝たれて、挑戦にはわずかに届きませんでした。この点につきましてはいかがですか。
永瀬 自分の場合は初めの段階で2敗してしまったので、そこからは苦しいのかなと思っていました。藤井竜王と広瀬八段が充実されていますので、そういう方々がそういう形になったのかなと思います。
――来期へ向けて、どのように戦われますか。
永瀬 今期9局教えていただいて、課題が多く見えましたので、それを埋めていくのが楽しみでもありますし、埋まるのかどうかも興味深いです。やっぱり強い方と戦わないと、自分の課題というのが浮き彫りにならないので、そういうものが浮き彫りになってよかったかなと思っています。

【斎藤慎太郎八段インタビュー】
――本局を振り返られて、どんな印象でしたか。
斎藤 先手番だったのですが、どれほど先手の得が残っているかあまり自信がなかったかなという感じで、かなり序盤、中盤は苦労したかなという感じでした。ちょっと終盤でチャンスが来たかなと思って踏み込んでみたのですが、うーん、読みきれなかったなという感じで、何かあってほしいなと思ったのですが、見つけられなかったです。
――印象に残った手や局面があれば教えてください。
斎藤 92手目に☖9八飛と打たれて、うまく受ける手が難しかったですね。何かありそうな気はしたのですが、ちょっと二段目に打たれるのが予想外で。嫌な攻めをされてしまったなあと感じていました。
――3期連続の名人挑戦はなりませんでしたが、その点については。
斎藤 今期は早い段階で2敗して、最後にも2局で2敗してしまったので、なかなか厳しかったかなという感じで、先手番も本局と4局目(藤井竜王戦)で落としているので、そのあたりが課題かなと思います。
――来期はどのように戦われますでしょうか。
斎藤 今期は内容に波がかなりあったので、安定できるように開幕までに調整したいなと思います。

23時52分 終局
142手 △1四歩まで

☗2五竜には☖1五銀があり、竜の逃げ場もそれ以外にない。☖1五歩は王手で竜を取られるため、☗5七銀の竜取りではしのぎきれない。対する後手玉はしばらく寄らない形となっている。

ここで斎藤が投了した。終局時刻は23時52分。消費時間は☗斎藤5時間59分、☖永瀬5時間59分(持ち時間各6時間)。勝った永瀬は6勝3敗、敗れた斎藤は5勝4敗で全日程を終えた。


▲豊島将之九段ー△佐藤天彦九段

2023-03-02 第81期順位戦A級

☗豊島-☖佐藤天 豊島九段勝利

137手で、豊島九段が勝ちました。終局時刻は23時40分。消費時間は☗豊島5時間58分、☖佐藤5時間59分。勝った豊島九段は6勝3敗、敗れた佐藤九段は3勝6敗になりました。

【豊島九段の談話】

――序盤を振り返ってください。

豊島 ☖2四歩の局面はどう指していいか、難しい感じでした。飛車交換になったあと、☗8六歩を手拍子で指してしまったので、先に角を替える手も考えないといけなかったです。

――飛車をぶつけるのは必然でしたか

豊島 飛車をぶつける狙いで指していたので、ぶつけるところかと思ったんですけど、☗8六歩のところで☗3三角成としてから☗8六歩の変化をまったく考えていなかったので。☖5五歩のところも、本譜よりもっといい順があったと思います。夕食休憩のところはかなり悪そうだったので、もうちょっと工夫しないといけなかったです。

――☗2一飛と打った辺りはどうでしょうか。

豊島 あまり自信はなかったです。実質、角香交換ぐらいの駒割りだったので、自信がない局面が長かったです。

――☖6五桂に☗6九桂と受けた辺りは受け身に回っている局面でした。

豊島 仕方ないかなと思ったんですけど、少し苦しかったです。

――竜で端から攻める展開になりましたが、いかがでしたか。

豊島 難しいような気もしたんですけど。ちょっとわからなかったです。一時に比べれば盛り返しているような気もしたんですけど、難しいです。

――形勢がよくなったと思ったのは?

豊島 最後までわからなかったので。よくなりそうな局面はあったんですけど、どう指していいかわからなかったので、最後の最後までわかっていなかったですね。

――改めて、一局を通しての感想をお願いします。

豊島 昼の休憩明けのところが考えるべきところで考えなかったので、互角ぐらいの順か耐える順がわからなかったので、ちょっとよくなかったかなと思います。

――6勝3敗で今期を終えました。リーグ全体の感想をお願いします。

豊島 反省点が多い将棋が多かったと思います。

――来期A級の抱負をお願いします。

豊島 ここ数年ぐらいはうまくいかないことが続いているので、課題を解決できるように頑張っていきたいと思います。

【佐藤天九段の談話】

――序盤は意欲的な工夫を披露されました。振り返ってみていかがですか。

佐藤天 本譜みたいに飛車をぶつけられる筋は事前に考えられていなかったんですけど、やられてみるとかなり嫌な感じで。ちょっと自陣飛車を打つ将棋になってしまったので、ちょっと勝ちにくい展開にしてしまったかなと思います。

――中終盤はいかがだったでしょうか。

佐藤天 中盤は指せる局面もあったのかなと思うんですけど、中盤の終わりの辺りはちょっと悪いのかなと思っていて。ただ、最後……うーん、チャンスがきていてもおかしくないと思っていたんですけど、最後何もないとしたら、負けなのかなという感じですね。

――具体的には?

佐藤天 中盤で中原囲いを攻められることを考えていたので、☖8六歩を取り込むところはそういう感じにならなくてすんで、ちょっと指せる可能性もあるかなと思ったんですけど。進んでみると、なかなか7七の角を取れないので。

――今期は3勝6敗でリーグを終えました。全体の感想をお願いします。

佐藤天 出だしがよくなかったので、あんまり上を見る戦いにできなかったのかなという感じです。ちょっと内容的にも反省点があったので、そのあたり改善できたらなと思います。

――来期の抱負をお願いします。

佐藤天 内容を改善していかないと挑戦を含めて上を目指すことはなかなか大変かなと思うので、そこをまず取り組んでやっていけたらなと思います。

23時40分 終局
137手 ▲1八玉まで

☖2七金に☗同玉で詰まない。以下☖2六金は☗1八玉で続かない。
この局面で佐藤が投了した。終局時刻は23時40分。消費時間は☗豊島5時間58分、☖佐藤5時間59分。勝った豊島は6勝3敗、敗れた佐藤は3勝6敗でリーグを終えた。


▲糸谷哲郎八段ー△佐藤康光九段

2023-03-02 第81期順位戦A級

☗糸谷-☖佐藤康 佐藤康九段勝利

☗糸谷-☖佐藤康戦は佐藤康九段の勝ちとなりました。終局時刻は21時18分。消費時間は☗糸谷4時間8分、☖佐藤康5時間58分(持ち時間各6時間)。勝った佐藤康九段、敗れた糸谷八段はともに1勝8敗で全日程を終えました。

◆佐藤康九段の談話

――本局を振り返られて。

佐藤 もうちょっと丁寧に指さないといけなかったと思ってたんですけど。途中からちょっと読みきれない局面が続きました。

――苦しい局面もあったという感じでしょうか。

佐藤 50手目に☖2九角成と桂を取って指せそうな気がしたんですけど。最後ちょっと違う詰み順を考えていてたりもありまして。

――印象に残った局面や手があれば。

佐藤 87手目の☗6二香は、最初は☖同金寄で勝ちと見ていたんですけど、うっかりがありまして。それで☖6二同金上から勝ちと思った詰みの順にも抜けがあって、本譜で詰みなように思いました。ですので90手目の☖6三香でいいのであれば、本譜は勝ちかなと思います。

――今日は勝っても負けても来期の順位にかかわらない状況でした。

佐藤 勝ちが順位には関係ないですけど、自分の棋歴に残りますので、恥ずかしくない将棋をと思っていました。

――来期はB級1組となります。

佐藤 今日の将棋を来期につなげられれば。自分なりに精一杯指せればというところです。

◆糸谷八段の談話

――本局を振り返ってください。

糸谷 馬を作ったところはうまくいったかなと思ったんですけど、そこから先の指し方がよくなかったですね。

――どのあたりに誤算があったでしょうか。

糸谷 45手目の☗5四馬あたりまでの作りで、体力勝負に持ち込む狙いだったんですけど、歩の枚数は多いながらあまりよくなっていない感じでして、それで次の☖2六歩に反応していってしまったのが逆によくなかったです。方針がちょっとチグハグになっていました。

――印象に残った手や局面があれば。

糸谷 最後、☗6二香が打ててぬか喜びしていたんですけど、本譜で負けでしたら最短の負けでしたね。

――今日は勝っても負けても来期の順位にかかわらない状況でした。

糸谷 それはまあ、自己責任なので。ただ将棋を指すからには楽しんで指そうと思ったんですけど、少しまだ迷いがある感じで、ちょっとキレのない将棋になっていましました。

――来期はB級1組となります。

糸谷 頑張って復帰できるように。とりあえず将棋を直して挑まないとですね。

21時18分 終局
108手 △6七角成まで

角を成るのが決め手。これで先手玉は詰んでいる。
この局面で糸谷の投了となった。以下☗6七同玉に☖6九飛成☗6八歩☖5八銀☗6六玉☖6八竜☗5五玉☖5四金☗同玉☖5三金右☗5五玉☖5四歩☗4六玉☖3六金までの詰み。

終局時刻は21時18分。消費時間は☗糸谷4時間8分、☖佐藤5時間58分。勝った佐藤、敗れた糸谷はともに1勝8敗で今期順位戦を終了した。



藤井聡太竜王は、5日に棋王戦第3局。


  

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