【勝負師たちの系譜】小山怜央アマの編入試験　里見香奈女流五冠の挑戦で話題　岩手県で初のプロ棋士誕生なるか｜zakzak：夕刊フジ公式サイト

棋士編入試験

2022.12/18 10:00

棋士編入試験第２局で勝利した小山さん＝１２日、東京都渋谷区の将棋会館

里見香奈女流五冠の挑戦で、話題を呼んだ棋士編入試験だが、今度はアマの小山怜央さんがこれに挑んでいる。

小山さんは岩手県釜石市の出身で、元リコー勤務。アマ名人戦を始めとした全国大会での優勝や、職域団体対抗大会でリコーチームのＳ級優勝に大きく貢献したが、元々プロ志望があった。

中学生の頃は奨励会試験を受けているし、社会人になってからは、三段リーグの試験も受けている。

今回の受験資格は、アマとしてプロ棋戦に参加し、公式戦で１０勝５敗の成績を取って得たもので、特に今期の「朝日杯将棋オープン戦」での活躍が大きかった。

まず一次予選で４人勝ち抜き、アマでただ１人二次予選へ。この３回戦で、中川大輔八段に勝って、受験資格に達したのだった。

二次予選も、千田翔太七段に勝つなど、実力を見せつけたが、次の元竜王、広瀬章人八段に敗れ、アマ初の本戦入りはならなかった。

いずれもスタートすらできなかったプロへの夢が、今日、直接棋士になれるかというところまで来たのだった。

小山さんは奨励会を経験していない、初の編入試験挑戦者。男性で今まで挑んだ瀬川晶司六段、今泉健司五段、折田翔吾五段はすべて、試験に合格して棋士となっている。

すでに会社を辞めて、プロの道一本に絞った小山さんにとって、まさに背水の陣である。

編入試験の第１局は、徳田拳士四段戦から始まった。徳田は今期、全棋士中の勝率第１位を争う逸材だが、この難敵を相手に終始押し気味に戦いを進め、小山さんは勝利した。

続く第２局が今月１２日の、岡部怜央四段戦だった。岡部にとっては今期の朝日杯で敗れた相手だけに、公式戦ではない対局だが、負けるわけにはいかなかったと思う。

将棋は前局と同じ、角交換腰掛銀となった。途中、岡部が指せる場面もあったが、急いで角を打ち込んだ攻めが悪く、小山さんはうまくかわし、最後はきっちり即詰みに打ち取って勝利した。

これで試験は小山さんの２連勝で、後１勝で合格となった。

岩手県はまだ棋士の出ていない県だけに、地元の新聞社や放送局が取材に来ていた。

あと１勝だが、人生の目標が棋士になることと思うと、震えが来るかもしれない。四段は目標までの通過点と思えるかどうかが、この後の勝敗を左右する気がするのである。

あおの・てるいち　１９５３年１月３１日、静岡県焼津市生まれ。６８年に４級で故廣津久雄九段門下に入る。７４年に四段に昇段し、プロ棋士となる。９４年に九段。Ａ級通算１１期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、２０１１年に外務大臣表彰を受けた。１３年から１７年２月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。