【飯島栄治八段解説】藤井王位、恐ろしいほどのしたたかさ　初日の２時間長考で豊島二冠が疑心暗鬼 – サンスポ

凄八

2021/08/26 07:30

王位戦第５局で豊島将之竜王に勝ち感想戦で対局を振り返る藤井聡太王位＝２５日、徳島市沖浜東の渭水苑（代表撮影）

まさかの幕切れ。豊島二冠の信じられない悪手で、大一番は決着した。

第２日再開から１時間もたたない５０手目の△７五銀。先に駒組みを終えた豊島二冠が角交換を狙ったが、藤井王位が９筋へ桂馬を跳ねたことで、飛車か銀を失う窮地に陥った。プロの対局で、中盤の入り口で銀以上の駒をただで献上するのは、野球のコールド負けと同じ。苦渋の銀損を選んだ豊島二冠の敗戦は、昼前で決まっていた。

竜王位を持つ豊島二冠としては考えられないミスだが、形勢互角に見えた初日から、重圧が狂いを生じさせていた。最大の要因は初日、昼食休憩をはさみ、藤井王位にとって過去最長となる２時間１分の長考にあった。

休憩の１時間を含め藤井王位は３時間使うことができた。結果、指した手は的確だったが、特別な手でもなかった。だが豊島二冠は「３時間もかけたのは１０手２０手先まで読んでいるに違いない」と疑い、自分の指し回しの自信が揺らいだ。疑心暗鬼になってしまった。

昼の休憩時間を手にすることができるか、これも棋士には重要な駆け引き。藤井王位は、休憩の２時間前から手番を渡さなかった。百戦錬磨の豊島二冠に対して、恐ろしいほどのしたたかさだ。

開幕局での敗戦以降は４連勝。タイトルを取りにきた豊島二冠を守りに入らせ、敗着へと誘導した。棋聖位も渡辺明三冠に開幕から３連勝し初防衛を果たした。ダブル防衛戦は想像以上に圧巻の内容だった。（談）

★勝負飯は同じ

昼食休憩での勝負飯は、藤井王位、豊島二冠ともに「鉄火丼」（小鉢、赤出し汁、香物付き）を注文。マグロの赤身がふんだんに盛られた逸品で、英気を養った。

また、午前のおやつは両者とも「季節のフルーツ」を注文。藤井王位は飲み物に「アイスコーヒー」も注文した。午後は、藤井王位が「アイスレモンティー」と「オレンジジュース」、豊島二冠は「季節の和菓子と抹茶」、「りんごジュース」でのどを潤した。