藤井聡太二冠=いずれも角野貴之撮影

逆転の藤井二冠、見せた胆力 三浦九段下し3度目優勝 第14回朝日杯将棋オープン戦:朝日新聞デジタル

第14回朝日杯準決勝・決勝


2021年2月14日 5時00分

藤井聡太二冠=いずれも角野貴之撮影
藤井聡太二冠=いずれも角野貴之撮影

第14回朝日杯将棋オープン戦の準決勝・決勝(朝日新聞社主催、東海東京証券、ローソン協賛、ABEMA特別協力)が11日、東京都千代田区の有楽町朝日ホールで指され、藤井聡太二冠(18)=王位・棋聖=が2年ぶり3度目の優勝を遂げた。準決勝、決勝と土俵際に追い込まれながらも決め手を与えない指し手を続け、逆転勝利。最後まであきらめない勝負術が光った。

■1分将棋の土俵際、決死の一手

三浦弘行九段
三浦弘行九段

決勝では、藤井と三浦弘行九段(47)が対戦した。振り駒の結果、藤井は今回の朝日杯4戦目にして初めて先手番を握った。

作戦家の三浦が選んだ戦法は変則的な横歩取り。前例が少ない力勝負に進み、三浦が先攻した後、藤井が反撃して熱戦になった。

扇子を手にして前傾姿勢で考える藤井に対し、三浦は時折、「いやあ」とうめく。終盤、藤井が綱渡りのような手順で入玉を果たし、双方の玉将が接近する珍しい展開に。三浦が8四の飛車で5四の桂馬を取って、図1の局面を迎えた。

図1・△5四飛まで
図1・△5四飛まで

共に40分の持ち時間を使い切っており、1手1分未満で指さなければならない。先手玉には△4二金の詰めろがかかっており、守りの手は難しいように見えたが、藤井はここで▲4四銀と打った。三浦が対局後に「全く読んでいなかった」と明かした意表の一手だった。

▲4四銀は飛車の横利きを遮った守りの手で、後手玉はまだ詰めろではない。「相手に正解を発見されたらしょうがない」と開き直った、胆力を感じさせる手だ。△3二飛や△4二金などの手段が考えられたが、三浦が選んだのは△3二銀。以下▲3四玉△4二桂▲2五玉△2九飛▲1六玉と進んで、これ以上は王手が続かない。後手玉の受けも難しくなったため、その後数手で三浦が投了した。

両者は対局後、大盤解説会で一局を振り返った。図1での後手の最善手が検討されたが、明確な結論は出なかった。接戦をものにした藤井は「最後は負けにしてしまったと思いました」と振り返った。惜敗した三浦は悔しそうな表情を見せていたが、最後は「(相手が)藤井さんなんでしょうがないですね」と白旗をあげた。

大盤解説会で解説を務めた木村一基九段(47)は、藤井が指した▲4四銀について「並の人には指せない。相手にいい手を指されたら、『座して死を待つ』ことになりますから」と話す。その上で、こう語った。「苦しい場面でも、藤井二冠は相手が間違えやすいように指していた。我慢強さが実りました」(村瀬信也)

【準決勝】

■渡辺VS.藤井 リードの渡辺、決め手つかめず

準決勝で藤井は渡辺明名人(36)=棋王・王将と合わせ三冠=と対戦。先手の渡辺の作戦は相懸かり。開始からわずか6分ほどで渡辺が仕掛け、激しい戦いに突入した。解説の木村九段は「名人の主張が通っている。若干名人ペースかな」と話した。ほぼ互角の形勢で進んでいたが、渡辺が藤井の読みにない手を指してリードを奪った。

終盤は「渡辺勝勢」の声も出たが、藤井はあきらめなかった。受けるだけでなく、攻め手を絡めながらぴったり追走する。

図2・△8五歩まで
図2・△8五歩まで

図2は▲8七香に藤井が△8五歩と中合いをしたところ。ここで藤井は▲同香と取られたら負けだと思っていた。以下△8四歩なら▲7三金打△9三玉▲8二銀△9二玉に▲5五飛が後手玉への詰めろになり、先手の勝ち。渡辺もそう読んでいたのだが、▲8五同香に△7四玉と逃げられたときにどうすればいいか、読み切れていなかった。

実はそこで▲7三金という詰将棋のような捨て駒で後手玉は詰む。藤井はこの手に気づいており、感想戦で渡辺は「ここで金寄りがあるんだそうですよ。これが妙手で詰みだそうです」と感心するように語った。

実戦は図2以下、渡辺が▲8四歩と打ったために逆転。以下△7四玉▲7五銀△同玉▲7六金△7四玉と進み、藤井は「際どく詰まないのでよくなったと思った」という。渡辺は▲5五飛と香車を取ったが、藤井は△5七銀以下、先手玉を即詰みに討ち取った。

藤井は「ずっと苦しかったので開き直るしかないと思って指していました」、渡辺は「決め手をつかませてもらえず、逆転されてしまった」と話した。(村上耕司)

■三浦VS.西田 手堅い指し手、三浦が初の決勝

準決勝のもう一局は、三浦が西田拓也四段(29)に125手で勝ち、初の決勝進出を決めた。

三浦は3日、A級順位戦からの降級が決まってしまったが、解説の木村九段は「私が朝日杯で優勝したのは、A級から落ちた年でしたね」。

一方の西田は関西の名門、森信雄七段(69)門下。解説の杉本昌隆八段(52)いわく「すごく良い振り飛車を指す棋士」。一直線に切り込む攻め将棋で、三浦も「切れ味鋭い」とみていたという。

戦型は、先手の三浦が居飛車穴熊、後手の西田が得意の三間飛車。

序中盤を三浦は「苦しくしたか」、西田は「まずまず」と振り返った。中盤の勝負どころで「局面のバランスをとる順を発見できなかった」と西田。ここで優位に立った三浦が、その後も、戦いの中で自玉の穴熊に金を補強するなど、手堅い指し手を交え、勝ちきった。

終局後、三浦は決勝の抱負を「厳しい相手ですが、気を引き締めて対局したい」と話した。1次予選から勝ち上がった西田の快進撃は準決勝で惜しくも止まったが、ベスト4入りで、来期は本戦にシードされる。終局後、西田は「今回の朝日杯は出来すぎでした」と笑顔で語った。(佐藤圭司)

■ドキュメント

10:00 準決勝の対局開始。例年公開で行われる大ホールの舞台で2局並んで対局。無観客のため、報道陣は客席から冒頭部分を撮影する。別室で行われる大盤解説会の模様はインターネットで中継された。解説は木村九段と杉本八段、聞き手は鈴木環那女流三段と山口恵梨子女流二段。

11:54 西田が投了。三浦が決勝進出を決める。

12:31 渡辺が投了。解説会場で感想戦。渡辺は対局中に気づかなかった藤井玉の詰み筋を自ら解説。藤井は遠慮がちに「(中盤は)自信がありませんでした」。

14:00 藤井の先手で決勝の対局開始。時間計測のタブレットが不調でアナログの対局時計を使用。

15:31 三浦が秒読みに。控室では佐藤康光九段と鈴木大介九段、渡辺が盤を囲んで検討。

16:04 三浦が投了。解説会場に移動して簡単な感想戦。

16:45 表彰式。(村上耕司)

情報源:転の藤井二冠、見せた胆力 三浦九段下し3度目優勝 第14回朝日杯将棋オープン戦:朝日新聞デジタル



渡辺明名人 vs △藤井聡太王位・棋聖(棋譜DB

逆転の場面


藤井聡太王位・棋聖 vs △三浦弘行九段(棋譜DB

逆転の場面



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