師匠・杉本八段と研究対局をする藤井二冠。爽やかな笑顔の中に、強い負けじ魂を秘めている(写真提供・杉本昌隆)

藤井聡太の強さの秘密は? 「悔しがる力」と「地味で非効率な勉強法」〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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2020.11.5 07:02

師匠・杉本八段と研究対局をする藤井二冠。爽やかな笑顔の中に、強い負けじ魂を秘めている(写真提供・杉本昌隆)
師匠・杉本八段と研究対局をする藤井二冠。爽やかな笑顔の中に、強い負けじ魂を秘めている(写真提供・杉本昌隆)

10月26日に行われた王将戦挑戦者決定リーグ3回戦で敗れ、藤井聡太二冠(18)の最年少三冠、最年少九段は“お預け”になった。敗戦は悔しいだろうが、その負けじ魂こそ藤井を強くした。そう語る師匠の杉本昌隆八段に強さの秘密を尋ねた。

「同級生たちからは『ふだんはぼ~っとしているように見えるのに、将棋になるとすごく真剣な表情をしているのが不思議』と言われています」

藤井二冠が通う名古屋大学教育学部付属高校からそんな教員の声が聞かれた。

小さいころの家庭での評価は「どんくさい」だった。かつて将棋専門誌に母親の裕子さんはこう話していた。

「小さいときから、会話の最中でも何か考えていることがありました。初めて将棋会館に泊まったときも、着替えを全部部屋に置き忘れて空のカバンを持って帰りました。新幹線の中にお財布を忘れてきたこともあります」

しかし、こと将棋がかかわると、藤井二冠は別の顔を見せる。

出版社主催の全国小学生将棋大会3年生の部、準決勝で、負けた藤井は大声をあげて泣いた。泣きやまないまま3位決定戦に臨み、対局して勝った。藤井がプロ棋士養成機関「奨励会」に入会する前年度のできごとだ。

藤井が小学4年のときから師事するのが杉本昌隆八段。『悔しがる力──弟子・藤井聡太の思考法』(PHP研究所)の著書もある。幼いころの藤井が負けて大泣きする姿を何度も見たという。

「投了すると同時に目の前の将棋盤を抱きかかえて、顔を盤面に押し付けて吠(ほ)えるように泣き叫んでいました。私は、負けた対局ほど学びがあると考えているので、悔しいと思うことこそ伸びるチャンスなのです。それだけ悔しがれる藤井を頼もしく思いました」

思えば、「卓球少女愛ちゃん」こと福原愛も小さいころは負けてギャン泣きしていた。悔しさとは上達への原動力でもあるのだ。

そんな藤井二冠が最近、悔しさをあらわにした瞬間があった。10月5日に行われた王将戦挑戦者決定リーグ2回戦。相手は豊島将之二冠。過去の対戦成績は0勝5敗と、天才をしても勝てていない強敵だ。対局開始直後から、スーツの上着を脱ぎ捨て、前傾姿勢で盤面をにらみつける姿に執念をうかがわせた。

中盤から終盤にかけての勝負手が決まり、一時は中継カメラに映し出されたAI(人工知能)の形勢判断で99対1と圧倒的優勢になった。しかし、結果はまさかの逆転負けだった。

この対局を見守った杉本八段は、愛弟子についての印象をこう話した。

「投了の十数手前くらいには勝ち目のない局面になったのですが、藤井は投了しなかった。その理由は、諦められなかったからだと思います。気持ちを整理し、心を静める儀式として指し続けたのでしょう。諦めて負けを認めてしまえば楽になるのですが、それをせずに指し続ける精神力は立派だと思いました」

対局後は一緒に名古屋まで新幹線で帰宅したという。

「よほど悔しかったのでしょう。投了前からあらぶっている感じが見られました。対局後は普段静かなのですが、この日は『今日の将棋はどうでしたか?』と聞いてきて、『おかしかったのは、この手だったでしょうか?』と質問してきたんです。かなり悔しい思いをしているのだろうなと感じました」(杉本八段)

多くの棋士が、将棋で負ける悔しさは格別だという。将棋は100対0、勝ちか負けかしかないからだ。「負けました」と投了するときには、その100対0を受け入れなければならない。

並外れた“悔しがり”の少年が、胸に宿す悔しさをバネに強くなる努力をした。藤井の歩みを振り返ると、むしろ悔しさを味わわせてくれるような強い相手を求め、成長してきたようだ。

藤井の将棋デビューは5歳の夏。祖母に駒の動かし方を教わり、最初は祖母が相手をしていた。でも、すぐに物足りなくなり、祖母の知る高齢者施設で将棋を指すようになる。藤井は、さらに強い相手を求めて地元の将棋教室に通うようになり、たった1年で20級から4級へと棋力を上げていく。教室の指導者は「短期間でこれだけ強くなった子はいなかった」と驚くほどだったという。

小学生になると、名古屋にある奨励会入りを目指す子供向けの研修会に月2回参加。さらに小4でついに、日本中から将棋の天才少年が集まりプロを目指す奨励会試験に合格してしまった。この時点で、アマチュアの段位に換算すると四段程度の実力があったことになる。

奨励会では月2回の対局日があり、ここで一定以上の成績を得たものが昇級昇段していく。この対局日に好成績を残すため、日夜将棋の勉強をすることになる。昔は師匠や先輩同輩と対局して腕を磨いたが、最近はAIを取り入れたネット将棋などを“練習台”とする棋士が目立つという。

例えば、“AI世代の申し子”とも呼ばれる千田翔太七段(26)は、研究はもっぱらAIソフトを利用して着々と昇段を続けてきた。現在、順位戦では藤井の1クラス上のB級1組で戦っている実力者だ。藤井に6連勝中の豊島二冠も一時期は人間とはいっさい指さずにAIを相手に研究を続けて勝ち続け、AIによる研究を棋界に普及させた。

AIを使った研究のメリットは時間短縮だ。何通りもの変化がある局面での最善手を導き出すにもボタン一つで答えを出してくれる。人間相手の対局で必要な考える時間が大幅に短縮されるのだ。

多くの棋士がAIを使って研究しているが、藤井がAIを利用し始めたのは中学生になってからだった。師匠の杉本八段が「小学生でAIを使うのはまだ早い」と難色を示したからだ。

藤井を「AIを使うけれど、AI棋士ではない」という杉本八段だが、AIを使った藤井流の勉強法に驚いたことがあるという。

藤井はよく師匠に「この局面ではどう指すのがいいのでしょう?」とスマホの画面を見せて意見を聞いてくるという。ある日、藤井が見せてくれた画面は藤井とAIとの対戦で現れた局面だった。AIに考えさせればいいものを、あえて時間をかけて自分で答えを出そうとしていたのだ。

「藤井がやっていたことは非常に地味で非効率的で好まれない研究法です。それを楽しみながらしつこく考えていけるのが藤井の強さの秘密なんですね。藤井がそういう勉強法を採用していることを知って、同業者としてかなり衝撃を受けました」

藤井が提示したこの局面について検討しているところに、現在順位戦B級1組で昇級争いをしている山崎隆之八段も加わった。そこで藤井のこうした研究方法を知らされ、「藤井君はこんな勉強をしているのか」と驚いていたという。(本誌・鈴木裕也)

藤井聡太(ふじい・そうた)/2002年、愛知県生まれ。16年、史上最年少でプロ入りし、以来無敗のまま29連勝と将棋界の最多連勝記録を更新。19年、朝日杯将棋オープン戦で2連覇を果たした。

※週刊朝日  2020年11月13日号より抜粋

情報源:藤井聡太の強さの秘密は? 「悔しがる力」と「地味で非効率な勉強法」〈週刊朝日〉(AERA dot.) – Yahoo!ニュースコメント

情報源:藤井聡太の強さの秘密は? 「悔しがる力」と「地味で非効率な勉強法」 (1/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)



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