ほぉ・・・
2020.11.5 07:02
プロ入り、二冠達成、八段昇段……次々と最年少記録を塗り替えてきた藤井聡太二冠。当然、記録を意識していると思いきや…。師匠の杉本昌隆八段に藤井二冠の将棋へのひたむきな姿勢や素顔などを聞いた。
人との対局の大切さを藤井に教えた師匠。そのこころは、人と将棋を指すことで相手の気持ちを察する力を育てられるところにある。
「将棋という競技は常に自分がこう指したら相手はどう返してくるだろうかを考える競技です。つまり、対局中は常に相手の気持ちを考えながら指している。戦いながら無言でコミュニケーションをしているわけです。年齢差や職業を超えて将棋仲間ができるというのはそういうことだと思います」
新聞などの観戦記には、相手の気持ちを考える習慣がついている棋士だからこその気配りが行き届いたエピソードがよく紹介されている。9月9日に行われた、永世名人の資格を持つ谷川浩司九段と二冠を獲得したばかりの藤井との順位戦対局ではこんなシーンがあった。
対局開始は10時だが、谷川は20分前に現れ、下座に着席した。少し遅れて現れた藤井は、すでに谷川が下座に座っているので上座に座った。実は、将棋界には決め事があり、上座は格上が座る。原則的にタイトル保持者は上座に座るが、相手が大棋士の場合に若手が上座を遠慮することがある。谷川は藤井に余計な遠慮をさせないために、わざと先に対局室に来て下座を選んだのだ。
新旧の天才対決に注目していた各紙は「遅れて入室した藤井は、下座に座った谷川の気持ちを察して、静かに上座についた」というふうに記した。
杉本八段は、対局以外でも藤井の気配りができることに気付いている。
デビューから破竹の連勝を続け、「時の人」のように注目されたとき、テレビの情報番組は「藤井の勝負飯」として藤井の選んだメニューを紹介した。例えば藤井が「豚キムチうどん」を注文したなどと報じられるとすぐに、多くの視聴者からの電話が注文を受けた店に殺到し、藤井と同じメニューを注文する。具材が品切れになり、当の藤井の分がなくなってしまったこともあった。
「藤井は対局時の昼食メニュー選びで“長考”してしまうと言います。悩んだうえで藤井は昼食メニューを毎回のように変えていますが、これはお店に対する配慮があるのではないかと私は考えています」(杉本八段)
藤井が注目を浴びるのはもちろん昼食メニューだけではない。常に「新記録」と結び付けて報じられる。プロデビュー直後に29連勝して最多連勝記録を塗り替えただけでなく、公式戦最年少勝利、最年少順位戦昇級、六段から八段まで最年少昇段、最年少優勝など数え上げればきりがない。
しかし、杉本八段は「藤井にとって、記録は二の次だ」と言う。2019年、中原誠十六世名人が持つ年間最高勝率記録をギリギリで逃した日に、師匠は藤井をねぎらうために食事をした。そこで藤井は「記録は狙ってません。意識していないです」と明かしたという。
「普段の藤井を見ていて感じるのは、記録にはあまり関心がない。将棋が強くなること、将棋の真理を追究することを追い求めているように思います」
純粋に将棋を愛している姿勢を、師匠が特に強く感じたのはお正月の昼に一門で集まって研究会を行ったときのことだ。新年会でもあるので、晩ご飯は鍋を作ってみんなで食べた。
普段はそれで解散するが、藤井は食後にも兄弟子と将棋について語り合った。仲間たちに求められ、講釈するようにとうとうと考えを述べたという。話は熱を帯びていき、時間はどんどん進み、気が付くと終電直前。心配した親から電話がかかってきてお開きになった。
「こういう姿勢は純粋に将棋を楽しむためであって、次の対局への準備をしているわけでも、話してと頼まれたからでもありません。時間を忘れるほど将棋を語り合うことに集中していたのです。藤井のそうした無心な姿勢が、かえっていい結果に結び付いているのだろうな、と感じた瞬間でした」
では、やはり若いころから突出した活躍をしてきた棋士たちの横顔はどうなのか。
ある将棋記者は「共通しているのは凝り性で勝負事が好きという点です」と指摘した。
たしかに、羽生善治九段はチェスで世界のグランドマスターに勝利したことがあるほどの実力。鈴木大介九段は昨年、国内最大級のプロアマ麻雀大会「麻雀最強戦」で優勝した。渡辺明名人は有名な競馬好きで、綿密にデータを研究してスポーツ紙に予想を披露するほどの競馬通だ。
若い藤井二冠はまだギャンブルや他のボードゲームではなく、競技としての詰将棋に執念を見せる。
特に全国の詰将棋マニアがその実力を競う「詰将棋解答選手権」では5連覇中で、詰将棋には並々ならぬ負けず嫌いぶりを発揮する。師匠は昨年のあるイベントで藤井と女流棋士の3人で詰将棋勝負をした日の愛弟子の勝負へのこだわりが忘れられないと言う。
このイベントで、3人は7手詰めの詰将棋問題を1分間に何問解くかを競うことになった。ルールは最後の1手のみを回答、ただし師匠と女流棋士は1問正解につき1点だが、選手権5連覇中の藤井は1問0.5点。師匠は9問正解して9点だったが、藤井は17問正解したがハンディのため獲得ポイントは8.5点。師匠が面目を保った。
すると藤井は「詰将棋で師匠に負けて悔しいです」と3回も繰り返したという。
「内容的には藤井の完勝ですが、『勝負』には負けて全力で悔しがっていました。改めて藤井の悔しがる力の強さを再認識した瞬間でした」と師匠はこの日のことを振り返った。
「今の時代、『悔しい』と口に出すことや諦めの悪さは、あまり流行りません。悔しがる力は事をなすための原動力になるのではないでしょうか」
対局においては記録よりも「将棋の至高」を目指し、勝負事には徹底的にこだわり、負けると全力で悔しがる。羽生や渡辺ら、代々の名人と同じ道を若き天才・藤井も歩み始めているようだ。(本誌・鈴木裕也)
※週刊朝日 2020年11月13日号より抜粋
情報源:藤井聡太は「記録に関心ない」 師匠が明かす“無心”の将棋姿勢〈週刊朝日〉(AERA dot.) – Yahoo!ニュース(コメント)
情報源:藤井聡太は「記録に関心ない」 師匠が明かす“無心”の将棋姿勢 (1/3) 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)
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