ほぉ・・・
2020年9月5日 16時30分
「落ち着いたら一緒に自分の師匠(故・板谷進九段)に報告に行こう」「分かりました」
棋聖位を獲得した日の藤井聡太新棋聖との会話です。お盆が来ると故郷やご先祖様、今は亡き身近な人の顔が浮かびます。
このコラムも約1カ月ぶり。将棋界での大きなニュースと言えば、やはり藤井聡太棋聖の誕生でしょう。
快挙達成の夜、少人数で食事をする予定でした。しかし新型コロナの影響も考えて結局自粛。私は将棋連盟の職員と一緒に藤井棋聖をホテルまで送りました。
ついさっきまで和服に身を包み、日本中の注目を集めていた藤井棋聖。しかし将棋盤を離れると勝負師のオーラがすっと消え、普通の高校3年生に戻っています。
エレベーターを降りて部屋に向かうスニーカー姿は普段通りの「藤井君」で、それを目に焼き付けたのでした。
タイトルはすべての棋士にとって目標であり夢。しかし部屋に戻った藤井棋聖は、勝負にはこだわっても、それに付随する名誉や地位にはほとんど関心がない様子。本当に「欲がないなあ」といつも感じます。実はこのとき、一番盛り上がった話は手に入れたタイトルのことではなく、少し前に行われた他の対局の持将棋(引き分け)の内容のことでした。
8月19日にはいよいよ王位戦の第4局が始まります。藤井棋聖はあと1勝すれば王位も獲得。史上最年少での二冠も達成です。
さて、ソーシャルディスタンスの日々。夏休みは若い学生の棋力が上がる時期です。今年の夏は人が集まる将棋イベントがほとんどありません。その分、新しい試みは増えています。先日はインターネットでの小中学生の将棋大会がありました。
持ち時間をつけてのトーナメントは普通の大会と同じ。決勝戦は観戦者も多く、日本のどこからでも見られる公開対局です。私も自宅からそれを見ていました。
感想戦では、小学生も多いからか、友達に語り掛けるようなフレンドリーな言葉遣いが面白く、静寂のパソコン上に沸き立つ熱気を感じたものです。
新しい環境にもなじみやすいのが若い世代。私も良い刺激を受けています。
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すぎもと・まさたか 1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2019年2月に八段。第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太二冠の師匠でもある。
※藤井聡太棋聖は8月20日に王位も獲得しました。この回は王位獲得前に書かれました。
情報源:(杉本昌隆八段の棋道愛楽)新棋聖、誕生 若い世代に刺激受け:朝日新聞デジタル
へぇ・・・