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2020年7月4日 16時30分
第79期将棋名人戦・B級2組順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)で、1回戦にして早くも「大勝負」が組まれた。二つのタイトル戦で挑戦中の藤井聡太七段(17)と、3年前に藤井の連勝を「29」で止めた佐々木勇気七段(25)。6月25日に東京都渋谷区の将棋会館で指された一戦は、藤井が終盤で鮮烈な妙手順を見せて勝負を決めた。
■複雑な攻め受け、正確に読み 佐々木七段に快勝
両者は2017年7月、竜王戦の決勝トーナメントで初めて対戦し、佐々木が勝った。デビュー以来無敗の藤井にとっては初めて喫した黒星で、タイトル戦を含めても異例と言えるほどの注目を集めた。
順位戦には名人挑戦権を争うA級を始め5クラスあり、B級2組はその真ん中に当たる。両者は前期、C級1組でそろって昇級。今期から3人になったB級1組への昇級枠を巡って、25人が各10局を戦う。
佐々木は「藤井七段と、持ち時間6時間で戦えることを楽しみにしていた」という。戦型は、先手の佐々木の誘導で角換わり腰掛け銀に。互いに強気の応酬が続き、終盤戦に突入した。
A図は、藤井が△6五桂と跳ねた局面。ここでは、▲7一飛と攻め合う手や▲5八銀打と受ける手などがある。まず佐々木は後者を考えたが、△5七角成▲同銀△同桂不成でダメだと判断。33分で▲2四歩と打って相手の角の利きを遮った。藤井も31分の考慮で△7七桂成を決断。以下▲同金△8八銀▲7八玉△7七銀成▲同玉△6九飛成と進み、B図になった。
佐々木はA図の時点で、B図の先手玉が詰めろかどうかを掘り下げていた。△6五桂が怖いが、▲6六玉と逃げればギリギリ詰まない。そう読んだ末、▲7一銀と打った。「相手の玉は受けが難しい。自分の玉が詰まなければ勝てるのでは」と考えていたという。
しかし、▲7一銀の後の藤井の手順が見事だった。まず△7九竜と王手をかけ、▲7八桂△8八竜▲6八玉に△6一金といったん受けに回る。佐々木は▲8二飛△4一玉に▲2一銀と迫ったが、△5六桂▲同歩△2四角(王手)▲5七桂△5二金打(C図)と進んでみると、先手の2四の歩が消えて後手玉が安泰になり、後手の勝勢がはっきりした。以下10手で佐々木が投了し、藤井が110手で勝利した。
対局直後、佐々木は少し戸惑いを見せながら、「詰むか詰まないか、ギリギリの勝負だと思っていたが、攻めを余されて(=しのがれて)負けるとは思わなかった。読みにない手を多く指された。新しい感覚を感じた」と語った。
藤井は△7九竜以下の妙手順を、いつから読んでいたのか。後日、記者が尋ねると藤井はこう答えた。「▲2四歩の局面で△5二金打まで読んで、際どいですが受かっていそうだと思いました」
一般的に、詰むかどうかの直線的な手順は読みやすいが、攻めと受けの手が組み合わさった手順はプロでも考えづらい。数多くの選択肢がある中、藤井は20手近い複雑な手順を読んでいたことになる。卓越した読みの速さと正確さを改めて印象づけて、2期連続昇級に向けて好スタートを切った。(村瀬信也)
情報源:(月刊将棋)藤井七段、鮮やかな妙手順 名人戦・B級2組順位戦1回戦:朝日新聞デジタル
▲佐々木勇気七段 vs △藤井聡太七段(棋譜DB)
110手 3七桂打まで、△藤井聡七段 の勝ち
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