谷川浩司九段

江戸期の詰将棋、あせぬ芸術性 難問の作品集「無双」、谷川九段が解説:朝日新聞デジタル

ほぉ・・・


2020年5月18日 16時30分

谷川浩司九段
谷川浩司九段

江戸時代に作られた詰将棋の作品集に、アマチュアでもわかりやすい解説を加えた「図式全集シリーズ」(マイナビ出版)が刊行されている。第1弾として2月に発売された「将棋無双」は、実戦には現れないような捨て駒や、伏線が仕掛けられたミステリーさながらの妙手順が楽しめ、好評だ。十七世名人を名乗る資格を持ち、詰将棋作家でもある谷川浩司九段が解説を務める。

■図面多用、変化や紛れ分かりやすく

「将棋無双」は、七世名人伊藤宗看(1706~61)が作った9~225手詰めの100問をまとめた作品集。弟の看寿(1719~60)の「将棋図巧」と共に「詰むや詰まざるや」と称される。故米長邦雄永世棋聖が「無双と図巧を解けばプロになれる」と語ったほどの難問ぞろいだが、今も色あせない芸術性を備える。

谷川は「とにかく難しい。よく1人で100問作り上げたなと感心する」。本書には「谷川浩司の視点」として30問に解説を寄せた。

全体の3分の1ほどを占めるのが、「打ち歩詰め」に絡んだ問題だ。禁手となる打ち歩詰めに誘おうとする玉方と、それを打開、回避しようとする攻め方の攻防が見どころとなる。中でも49番は「歩の不成(ならず)」が2回連続で飛び出す珍しい作品で、谷川は「シンプルに仕上げていて、収束もきれい。現代の作品と言ってもおかしくない」と評する。

相手の駒を取らず、動かしてからその地点に自分の駒を捨てる、という手法もよく出てくる。一例が94番。初手▲4二銀成と金を取れるが、▲4一金△同金と玉方の金を動かしてから▲4二銀成と捨てる手が正解だ。強力に見える3一の銀と4三の飛車が邪魔駒という仕掛けで、それを消そうとする手順に意外性がある。狙いを実現させるために駒数は多くなったが、谷川は「完全作に仕上げるのは難しかったはず。作者の執念を感じる」と話す。

長い手数の詰将棋は、頭の中で手を読み進めるのが大変だ。本書は図面を多用し、変化や紛れの手順を詳述した。「詰将棋にあまり触れたことがない方にも理解できるように配慮した。江戸時代に詰将棋の天才がいたことを知って欲しい」と谷川は言う。

6月30日に第2弾として「将棋図巧」が発売される。39枚の駒を使った初形から駒がどんどん消え、最少駒数の3枚になって詰め上がる「煙詰め」など傑作ぞろいだ。既に予約が相次いでいるという。谷川は、この解説も務めた。

価格は無双、図巧共に5280円(税込み、特典付き)。マイナビ出版のサイト「将棋情報局」(https://book.mynavi.jp/shogi/別ウインドウで開きます)から申し込む。(村瀬信也)

 ■49番の正解手順

<49番> 持駒・金
<49番> 持駒・金

▲8五金△同銀▲6三歩不成△7四玉▲6二歩不成△4一竜▲6四角成△8三玉▲8四歩△7二玉▲5四馬△7一玉▲6一歩成△同竜▲7二歩△同飛▲同馬△同竜▲8二銀成△同玉▲9二飛△7一玉▲7二飛成△同玉▲5二飛△7一玉▲6二飛成まで27手詰め

※3手目▲6三歩成だと△7四玉▲6二と△4一竜▲6四角成△8三玉で打ち歩詰め。

■94番の正解手順

<94番> 持駒・金金金桂
<94番> 持駒・金金金桂

▲4一金△同金▲4二銀成△同金▲4一金△同玉▲5二金△3一玉▲4二金△同角▲2一歩成△同玉▲2二銀△同玉▲4二飛成△3二歩▲3三角△2三玉▲2四金△1二玉▲2二角成△同玉▲3三歩成△1二玉▲2三金△同角▲2四桂△1三玉▲2三と△同玉▲3二竜△2四玉▲4二角△3三歩▲同竜△1五玉▲3七竜△2四銀▲1六歩△1四玉▲2四角成△同玉▲1五銀△1三玉▲1四銀△同玉▲3四竜△1三玉▲1四香△2二玉▲2三歩△2一玉▲1一香成△同玉▲3一竜△1二玉▲2二竜まで57手詰め

<94番変化図> 持駒・金桂
<94番変化図> 持駒・金桂

※6手目△4一同金には▲4二飛成が妙手。△同金(変化図)なら、初形から4三の飛車と3一の銀が消えた形になるため、▲4三桂以下の詰み。

情報源:江戸期の詰将棋、あせぬ芸術性 難問の作品集「無双」、谷川九段が解説:朝日新聞デジタル




へぇ・・・