是非、来期も参加して四段昇段を目指してほしい。
2020/03/14 09:05
将棋界で史上初となる、女性「棋士」を目指していた西山朋佳三段(24)は、7日に最終一斉対局が行われたプロ養成機関の奨励会三段リーグで14勝4敗の好成績だったが、無条件で四段昇段(プロ入り)できる2位以内に入れなかった。今回のリーグ戦は3位で、あと一歩、及ばなかった。
■「奨励会での戦いは最後にする」
三段リーグが始まる半年前、西山三段は母と、囲碁棋士の姉(西山静佳初段)にこう告げていた。「今回の三段リーグで奨励会での戦いは最後にする」と。ここ数年、西山三段はリーグ戦の成績が振るわず、負け越しが続き、四段昇段を争うこともない状況だった。
そう決意した時は24歳。年齢制限での退会は26歳ではあるが、「ズルズル続けることに意味はない」と姉に話した。静佳初段は「決然とした妹の言葉は本物だった。いつもと気合が違っていた」と明かす。
西山三段は三段リーグ戦で見違えるような結果を残した。最終日の2局を残して12勝4敗。前期成績に基づく順位の関係で、自身の上に2人の三段がいた。最終日は2連勝が求められ、かつ競争相手の三段が負けなければ、四段にはなれない。「他力」の状況ではあるが、初めて四段昇段争いを経験することになった。
■異例の要求「窓際で対局を」
7日、東京・千駄ヶ谷の将棋会館。午前の対局に臨む西山三段は、ある行動に出た。対局場所は部屋の中央付近の予定だったが、涼しい窓側での対局に代えるよう希望したのだ。暑がりな西山三段は、相手への非礼は百も承知で、よりよい対局環境を求めた。「今日が奨励会最後の対局」と心に決めていたから、悔いが残らないよう、この日だけはわがままを言った。
西山三段は午前の対局に勝った。競争相手の三段も勝利していた。残すは午後の最終局。自身が勝って、服部慎一郎三段が敗れるという状況だけが、四段昇段の条件だった。上がれないケースは分かっていた。それでも、「この対局に勝てば、棋士になれるかも」と自己暗示をかけて臨んだ。
■勝敗表を目にして崩れ落ちる
午後の戦い。どうやら服部三段の対局が先に終わったようだ。勝敗は知るよしもない。西山三段は盤上没我し、持ち時間を使って力を振り絞った。「負けました」と相手が投了した。西山三段は「届いた」と心が躍った。その後、三段リーグの勝敗表を目にして崩れ落ちた。服部三段は勝っていた。谷合広紀三段と服部三段がプロ入りを決め、棋士になれない現実を突きつけられた。
「勝てた対局があった」
将棋会館から帰路に就いた際、ふと振り返って涙を隠せなかった。
3位となり、惜しくもプロ入りを逃した西山三段は迷っていた。
「奨励会での戦いは今回が最後と決めていたから、退会する」という思いと、「14勝4敗の3位で次点を獲得できた。上出来だった結果を前向きに捉えて、また奨励会で戦う」という思いが交錯した。西山三段と交流のある棋士らは「あと一歩なのにもったいない。戦い続けてほしい」と激励した。西山三段は少しずつ冷静さを取り戻した。
■再起の一戦、竜王戦で快勝
奨励会三段リーグから2日後の9日、傷を癒やす間もなく、西山三段は竜王戦(読売新聞社主催、特別協賛・野村ホールディングス)6組の公式戦で青野照市九段と対局した。背筋を伸ばし、きびきびと指した。持ち時間が5時間の棋戦というのに、西山三段は消費12分で昼過ぎに快勝した。
「すごい精神力の持ち主だ」と棋士らは称賛した。西山三段は棋士を目指し、再び戦う道を選んだ。竜王戦6組では、ベスト8まで勝ち進んでいる。
三段リーグで3位だった棋士に与えられる「次点」は、二つ取ると棋士になる権利を得る。西山三段は次点を一つ獲得した。かつて若手棋戦の新人王戦で奨励会三段の時に優勝した都成竜馬六段が、次点を付与された事例がある。棋士らは「西山さんが竜王戦6組で決勝進出や、優勝という結果を出せば次点付与の議論は起こる」と口にする。
西山三段は、奨励会三段リーグのほか、竜王戦や新人王戦なども、新たなモチベーションになっている。無駄な対局は何一つない。すべての道が棋士につながっていると信じて戦っている。(文化部 吉田祐也)
情報源:すべての対局が棋士への道…「次点」に泣いた西山朋佳三段、プロ入り目指し再度挑戦へ(読売新聞オンライン) – Yahoo!ニュース(コメント)
情報源:すべての対局が棋士への道…「次点」に泣いた西山朋佳三段、プロ入り目指し再度挑戦へ : 囲碁・将棋 : ニュース : 読売新聞オンライン
竜王戦の青野九段戦は、昇段できなかったことの八つ当たりとか言われてたな。