第12回朝日杯将棋オープン戦準決勝で対戦する行方八段=当時=(左)と藤井七段=山本裕之撮影

(大志 藤井聡太のいる時代)鮮烈編:7 11年前の覇者「この子と真剣勝負か」…敗戦:朝日新聞デジタル

第12回朝日杯将棋オープン戦の準決勝での対局


2020年2月2日 5時00分

第12回朝日杯将棋オープン戦準決勝で対戦する行方八段=当時=(左)と藤井七段=山本裕之撮影
第12回朝日杯将棋オープン戦準決勝で対戦する行方八段=当時=(左)と藤井七段=山本裕之撮影

開始から1分。シャッター音がやみ、報道陣が壇上から去ると、500を超す観客席は水を打ったように静まりかえった。

順位戦の痛い敗戦から11日後の2019年2月16日、藤井聡太七段(17)は第12回朝日杯将棋オープン戦の準決勝で行方尚史(なめかたひさし)九段(46)=当時八段=との公開対局に臨んだ。会場は東京・有楽町朝日ホール。試写会やコンサート、講演会など様々な用途に使われる大ホールだ。前方のステージではもう一方の準決勝・渡辺明三冠(35)=当時棋王=と千田(ちだ)翔太七段(25)=当時六段=の対局も。後方へせり上がるように配置された客席からは全対局者の様子が見え、盤上が大モニターに映し出された。

第10回まで、このホールでは大盤解説会が開かれ、対局は階下の小ホールで行われていた。藤井が初出場で勝ち進んだ第11回から会場が入れ替えられた。

行方は第1回朝日杯の覇者。立ち見の観衆がぐるりと囲んだ自身の決勝戦を思い返し、「11年前と会場が様変わりした。みんな藤井君を見に来ているんだなと感じました」と語る。

行方の先手で戦型は矢倉模様に。中盤、藤井は銀交換で手にした銀を再び5段目に据え、攻めを見せる。行方が受けるとさっと引き揚げ、別の攻めを狙う。巧妙な指し回しに行方は次第に身動きが取れなくなっていった。最後は角を捨てる豪快な攻めが決まって、藤井が勝利。2年連続で決勝進出を決めた。藤井は「序盤から一手一手難しい将棋でした。秒読みの中でも落ち着いて指すことができたかなと思います」と話した。

行方は「藤井君の足元を見たら運動靴だったので、本当に高校生なんだな、この子と真剣勝負をやるのかと、年の差に軽いショックを受けました。始まってみると向こうの方がはるかに落ち着いていて、老獪(ろうかい)に指されました」。(村上耕司)

◆毎週日曜に掲載します。

情報源:(大志 藤井聡太のいる時代)鮮烈編:7 11年前の覇者「この子と真剣勝負か」…敗戦:朝日新聞デジタル


今期の朝日杯は、2月11日に全3局指されます。