(大志 藤井聡太のいる時代)番外編:2 対照的なプロ入り、「しょったん」は今も夢を追う:朝日新聞デジタル

瀬川さんか


2019年11月10日05時00分

C級2組順位戦で対戦した瀬川晶司五段(右)と藤井聡太四段(肩書はいずれも当時)=2017年6月
C級2組順位戦で対戦した瀬川晶司五段(右)と藤井聡太四段(肩書はいずれも当時)=2017年6月

「中学生で棋士になった時点で将来有望なのは間違いないので、順位戦の初戦で戦えるのは光栄だと思いましたね」。瀬川晶司六段(49)は振り返る。

デビューから25連勝していた藤井聡太七段(17)は2017年6月15日、第76期名人戦・C級2組順位戦1回戦に臨んだ。名人位を目指すための第一歩。その相手が瀬川だった。

瀬川の経歴は、最年少の14歳2カ月でプロ入りした藤井とは対照的で異色だ。棋士養成機関の奨励会を26歳で退会するも、会社勤めをしながらアマチュア大会やプロ公式戦で活躍。特例で行われた編入試験に合格して35歳で棋士になった。一躍「時の人」となり、試験の決着局には多くの報道陣が詰めかけた。

しかし今回は逆の立場。ほとんどのカメラが瀬川の背中越しに藤井の姿を追う。瀬川は「あまり気分いいものではないなと思いました」と苦笑いする。

戦型は両者得意の角換わりになり、瀬川が序盤でペースをつかむも中盤から盛り返された。藤井をひやっとさせる場面もあったが、最後は突き放された。

「終盤で藤井君に見落としがあった。それが分かったのは、『しまった』という感じで、ひざをたたいて悔しがっていたから。中学生らしいなと思いました。でも最後はあっという間に寄せられました」

プロになって14年。自伝「泣き虫しょったんの奇跡」は映画化された。編入試験は制度化され、同じ元奨励会員の今泉健司四段(46)が続いた。講演依頼は今もあり、小中学生には自身の経験を語り、「好きなことを仕事にできるのは幸せなこと。夢をあきらめないで」と説く。

一方、将棋の成績には不満が残る。「タイトルが一番ですけど、棋戦優勝なり、やっぱり一番になりたい。今までの最高は銀河戦でのベスト8。これはアマ時代の成績で、まだそれを抜けていないのがなさけない。自分がダメだと思った時がダメなので、年齢は関係ないと思っています」=敬称略(村上耕司)

◆毎週日曜に掲載します。

情報源:(大志 藤井聡太のいる時代)番外編:2 対照的なプロ入り、「しょったん」は今も夢を追う:朝日新聞デジタル



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