東京所属で陽気な46歳と関西所属でクールな29歳が盤を挟む。今夏、最も多く見られた対局室の風景(10日、王位戦第6局)

豊島王位の初防衛か、木村九段の初戴冠か― 王位戦最終局を「24番勝負男」佐藤康光九段が展望 : スポーツ報知

25日に最終第七局、初防衛か、初戴冠か・・・


2019年9月24日 8時0分

初防衛を目指す豊島将之王位
初防衛を目指す豊島将之王位

今、決戦の時―。第60期王位戦7番勝負第7局が25、26日に東京都千代田区で行われる。豊島将之王位(29)=名人=は自身初のタイトル防衛を、挑戦者の木村一基九段(46)は史上最年長の初タイトル奪取を目指す。竜王戦挑戦者決定3番勝負と並行し、両者が戦い続けた「真夏の10番勝負」も運命の最終章。かつて羽生善治九段(48)との「24番勝負」を経験した日本将棋連盟会長の佐藤康光九段(49)は「将棋史に例のないような大勝負」と表現する。

過去30年にわたって数々の大勝負を経験してきた佐藤は、厳粛な表情で言った。「勝つことと負けることの対比、落差、インパクトの差があまりにも大きい勝負になりますね」。同じ棋士として、頂点を争い続けてきた棋士として、王位戦最終局の持つ重さを見つめている。

初タイトルを目指す木村一基九段
初タイトルを目指す木村一基九段

夏の3か月間、豊島と木村は戦い続けてきた。参院選公示前の7月3日に開幕した王位戦7番勝負は豊島が先行し、木村が追走する展開になり、3勝3敗と両者相譲らず。並行して行われた竜王戦挑戦者決定3番勝負は最終局に持ち込まれた結果、豊島が挑戦権を獲得した。そして、秋の気配も漂う今、王位戦最終局で10番勝負はダブルフルセットのフィナーレを迎える。

立場は違えど、絶対に負けられない勝負であることに変わりはない。豊島は昨年度から棋聖、王位、名人を連続奪取して3冠になったが、6~7月の棋聖防衛戦では渡辺明3冠(35)との頂上決戦に敗れて防衛ならず。竜王挑戦は決めているものの、連続失冠して名人の1冠に後退すれば、時代の覇者たる印象は薄れる。将棋界には「防衛して一人前」の言葉もある。

一方の木村にとっては、さらに人生を懸けた一局になる。勝利すると7度目のタイトル挑戦で悲願成就。7度目も初めてだが、46歳3か月での初タイトルとなれば、1973年の棋聖戦で当時37歳6か月の有吉道夫九段(84)が獲得した時の最年長記録を46年ぶりに、一気に9歳も更新する。

東京所属で陽気な46歳と関西所属でクールな29歳が盤を挟む。今夏、最も多く見られた対局室の風景(10日、王位戦第6局)
東京所属で陽気な46歳と関西所属でクールな29歳が盤を挟む。今夏、最も多く見られた対局室の風景(10日、王位戦第6局)

「まずベテランが若手に挑んでいく構図は将棋界では少ないんです」。佐藤は今回の顔合わせの将棋史における希少性を強調する。「80年代に20代の谷川(浩司九段)先生に中原(誠十六世名人)先生や米長(邦雄永世棋聖)先生が挑戦した時期などもありますけど、どちらも多くのタイトルを重ねた大棋士ですからね。40代後半で名人を相手に初タイトルを目指す最終局は…将棋史にも例のない大勝負になります。今、木村さんが立っている状況は他の棋士には絶対に分からないものだと思います」

自らも2005年度、羽生と棋聖戦(3―2で防衛)、王位戦(3―4で敗退)、王座戦(0―3で敗退)と連続するタイトル戦で17番勝負(実施は15局)を戦い、竜王戦を挟んだ王将戦(3―4で敗退)でも激突して24番勝負に(実施は22局)。順位戦A級も含めた年度間同一カード23局は、2000年度の羽生―谷川戦と並ぶ史上最多タイ記録である。同じ相手と同時期に、他棋戦の異なる星勘定も抱えながら指し続ける勝負とは、どのようなものなのだろう。

「もちろん作戦をどのように配分するかは、かなり考えます。今回の2人も綿密な事前準備を一局ごとに出し尽くしている印象がある。最終局は(先後が事前に分からない)振り駒ですけど、過去の将棋に付加する新研究が出てくると思います。あとは…最後は気力、ということはあると思います」

置かれた状況は異なるが、それぞれに抱えた重圧は大きい。「豊島さんが竜王挑戦権を取っている精神的なアドバンテージは大きいと思いつつ…3冠から1冠に、という重圧も大きい。木村さんは…全てを出し尽くす一局になる。今までの棋士人生、これからの棋士人生を考えても大きな一局になります。私も同じですが、年を取ると(タイトル挑戦は)簡単なことじゃない。今後あるかどうか、という意識は持っているはずです」

周囲は間違いなく大熱戦、名勝負を期待するが、体験者の視点は異なる。「最終局でベストパフォーマンスを発揮することは難しい。もちろん熱戦になることもありますけど、力が入り過ぎたり空回りしたりする。微差で中終盤に突入するイメージより、大差がついてしまうケースが多いと思います。平常心を貫けるかがカギになると思います」

そして、2人の夏は終わる。決着は盤上が教えてくれる。(北野 新太)

◆佐藤 康光(さとう・やすみつ)1969年10月1日、京都府八幡市生まれ。49歳。田中魁秀九段門下。82年、関西奨励会入会。87年、四段昇段。93年、羽生善治から竜王を奪取して初タイトルを獲得。タイトル獲得は竜王1、名人2、棋王2、王将2、棋聖6の通算13期(歴代7位)。永世棋聖資格保持者。現在も竜王戦1組、順位戦A級という最上位に在籍する。17年2月、日本将棋連盟会長に就任。同7月に史上9人目の通算1000勝を達成した。

◇豊島×木村 真夏の10番勝負

対局日―棋戦

勝敗

手数―先手―戦型

〈1〉7月4日―王位戦第1局豊島〇●木村

99―豊島―横歩取り

〈2〉31日―王位戦第2局

豊島〇●木村

118―木村―相掛かり

〈3〉8月9日―王位戦第3局

豊島●〇木村

118―豊島―矢倉

〈4〉13日―竜王戦挑決第1局豊島〇●木村

82―木村―相掛かり

〈5〉21日―王位戦第4局

豊島●〇木村

285―木村―相掛かり

〈6〉23日―竜王戦挑決第2局豊島●〇木村

88―豊島―相掛かり

〈7〉28日―王位戦第5局

豊島〇●木村

131―豊島―角換わり腰掛け銀

〈8〉9月5日―竜王戦挑決第3局

豊島〇●木村

115―豊島―角換わり腰掛け銀

〈9〉10日―王位戦第6局

豊島●〇木村

119―木村―相掛かり

〈10〉26日―王位戦第7局

豊島??木村

?―?―?

【注】王位戦は2日制のため、対局日は2日目を表記

情報源:豊島王位の初防衛か、木村九段の初戴冠か― 王位戦最終局を「24番勝負男」佐藤康光九段が展望(スポーツ報知) – Yahoo!ニュースコメント

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ちなみに、25日には第61期王位戦の予選で、藤井聡太七段が登場します。こちらもAbemaTVで中継されます。