ふむ・・・
2019/05/27 12:10
気づけば、広島は首位に立ち、気づけば、開幕直後にあれだけ騒がれた「ポスト丸」という声も聞かれなくなった。
5月に入り、広島打線に昨季までのようなつながりと粘りがみられるようになった。
開幕から試行錯誤を続けた打線は4月29日から1発のあるサビエル・バティスタを3番に固定。5番には勝負強さと犠打もできる西川龍馬を置いた。2番菊池涼介、4番鈴木誠也の両主力の安定が下支えとなり、タイプの違う2選手の配置変更で中軸が機能した。
本来であれば機動力も使える選手を3番、1発のある選手を5番にというのが定石かもしれない。広島も4月下旬まではこの形を基本線としていた。
だが、広島の心臓は、4番鈴木。ここを機能させることが最優先。鈴木の後ろを打つ5番に1発はあっても穴のあるタイプであれば、鈴木との勝負は避けられる。実際4月までの鈴木はボール球中心の逃げたような相手配球に戸惑っていた時期もあった。
反対に3番は鈴木の前に走者を置きたくない心理が働く。3番バティスタ、5番に西川を置いたことで互いに良さが発揮された。
機能した3番バティスタ。
結果的に開幕前に注目された3番に、バティスタが収まった。緒方監督は「まだ最終形とは思っていない。これまでも言っているが、チームの形は変わっていく」と固定にはこだわってはいない。一方で東出輝裕打撃コーチは「打線に1発のある選手は、2人は置きたい」と考えており、多少調子を落としてもバティスタが今季の打線に外せない1ピースであることは間違いない。
バティスタにとっては追い風だろう。自身は好調の要因に「試合にずっと出られていることが大きいよ」と、自己分析。自己最多ペースでスタメン出場する起用がここまで48試合で打率2割8分9厘、12本塁打、30打点の好成績につながっていると大きな胸を張る。
安定した出場で打撃だけでなく、一塁守備も安定感が増す。特に送球捕球やゴロ捕球のハンドリング技術の向上が見られる。こちらも「試合にずっと出られているから」とニヤリ。それだけコンスタントな出場に飢えていたことを示すとともに、出場を重ねることで成長できることを自ら証明してみせた。
来日当初は“扇風機”だった。
本人は自信満々だが、来日した4年前には、“2年連続MVP”が務めていた打順を任せられるとは、誰も思いもしなかったに違いない。
来日当初は粗削りという言葉がピタリと当てはまるような打者だった。パワーは当時から図抜けており、はまったときの飛距離は周囲を驚かせた。ただ、確実性がなかった。試合に出れば“扇風機”と化していた。
典型的なローボールヒッターで、極端なアッパースイングが原因だった。低めの甘い球なら捉えられる。ただ、低めのストライクゾーンからボールになる変化球にはバットが空を切り、高めの球はからっきし。育成選手として初めて日本のリーグ(ウエスタン・リーグ)に参加した’16年シーズンは68試合(150打席)出場で打率2割4分3厘の低打率で、本塁打も6本、19打点に終わった。
朝山コーチが施した改革。
練習生時代からバティスタの打撃を見てきた朝山東洋二軍打撃コーチは大胆な策で意識改革を行った。
「ストライクゾーンでも低めは見逃していい。高めは首付近まで振っても構わない」
日本での成功を目指す若きドミニカンは、目の前の結果を求め大振りが目立つ。それではいけない。意識から変えなければ悪癖は改善されない。あくまでも中長期的な視野でコツコツと言い聞かせた。
意識改革は普段の練習からたたき込んだ。ドミニカに似た日差し降り注ぐ二軍の由宇練習場には「ハチャ!」「ハチャ!」と叫ぶ朝山コーチの声が飛んだ。
「ハチャ」とはスペイン語で「斧」を意味する。「バットを振るのではなく、斧を使うように(バットを)使いなさいと言い続けた」。アッパースイング矯正のため、ダウンスイングを徹底させた。試合では結果を求めない。あくまでも、練習での意識を実践させる場に過ぎない。当時はそれほどのレベルだった。
それでも育成の場である二軍で、バティスタの未来にかけることができたのは、バティスタの練習に取り組む姿勢にあった。
成長の要因は貪欲さと吸収力。
「あいつは言われたことはとにかくやるし、ほかの日本人選手と同じように練習できる。だからこちらも根気強く(指導しよう)と思える」
バティスタの貪欲さやスポンジのような吸収力と朝山コーチの熱意による師弟関係が、バティスタの成長曲線を大きく変えた。
翌’17年に支配下選手となると、一軍で61試合(143打席)に起用され、11本塁打26打点。チームにとって鬼門とされた交流戦で大爆発し、連覇への起爆剤となった。’18年には出場試合を99試合に増やし、打率はやや落としたものの、25本塁打、55打点。大砲として着実な成長を見せる。
ドミニカでのアカデミー時代から日本式を注入されてきた。
タオルを使ったシャドーピッチングはほかのメジャー球団のアカデミーでは見られない練習法。12球団一練習量が多いとされる広島のアカデミーだから当然、練習量も群を抜く。平日は寮生活。日替わりで寝泊まりするコーチ陣から技術面だけでなく、野球の知識や日本の文化を教わる。現在通訳としてチームに同行するフアン・フェリシアーノは投手コーチとして、ときに日本語で指導することもあった。
今でもコーチとテレビ電話。
打線の中軸に固定された今季も、マツダスタジアムでの試合前の早出特打にも、遠征先の昼食前の素振りにも、姿を見せる。一昨年までは帰国を遅らせて秋季キャンプにも参加していた。
貪欲さと勤勉さが成長の促進力となっている。ここまで全48試合に出場でキャリアハイのペースで豪打を披露する今季も、一軍打撃コーチの指導を仰ぎながら、朝山コーチとも定期的にテレビ電話で連絡を取り合っている。2人の間に、基本に立ち返る7つのキーワードがある。
「アタマイイカラ、オボエル」
「あいつはよく忘れる。しょっちゅう電話がかかってくるけど、確認している。今も忘れていると思う」と朝山コーチ。本人にきいてみると、苦笑いしながら、そしてときに考え込みながらも、何とか7つすべてを日本語で絞り出した。
(1)姿勢良く(構える)
(2)しっかり地面をつかむ(ように立つ)
(3)意識はセンター
(4)踏み出す左足はゆっくりタイミング(を取る)
(5)(インパクトのときに)手首を立てる
(6)軸足は馬の脚(のように力強く)
(7)最後まで両手で(バットを)握る「アタマイイカラ、オボエル」と笑う大砲は、素直で真っすぐだ。チームメートから愛される理由だろう。アカデミー出身のバティスタは広島の歴代助っ人の系譜ではなく、生え抜きの日本人選手の系譜に近い。
コンスタントな出場機会と、一、二軍打撃コーチのサポート。さらにそれを柔軟に聞き入れる性格が成功につながった。
ただ、バティスタはまだ打者として“最終形態”ではない。さらなる可能性を秘めていることが、バティスタの最大の魅力かもしれない。大砲の進化とともに、広島打線もまた進化を求めていく。
情報源:バティスタは“助っ人外国人”と違う!?広島がじっくり育んだ和風ドミニカン。 – プロ野球 – Number Web – ナンバー
ほぉ・・・