最終戦、勝敗の鍵は「遠見の角」 将棋名人戦・A級順位戦:朝日新聞デジタル

ふむ・・・


2019年3月7日16時30分

1日に行われた第77期将棋名人戦・A級順位戦(朝日新聞社、毎日新聞社主催)の最終9回戦は、挑戦権をかけた勝負が最後に終わるという、まさに「将棋界の一番長い日」。注目の対戦は、いずれも急所の局面で放った「遠見の角」が勝利を引き寄せるという劇的な戦いだった。

名人への挑戦権を得た豊島将之二冠=いずれも高橋雄大撮影
名人への挑戦権を得た豊島将之二冠=いずれも高橋雄大撮影

■豊島、攻め実り挑戦権

7勝1敗で単独トップの豊島将之二冠は、勝てば名人挑戦権を獲得するという状況で最終局を迎えた。相手は久保利明九段。対戦成績は豊島14勝、久保15勝。豊島は王将戦で2度、久保に挑戦するも敗退していた。

豊島は居飛車、久保は振り飛車という両者得意の戦型で、昨年の王将戦第6局と似た進行に。豊島が早めの角交換から、角を敵陣に打ち込み、久保の左金を、玉と反対側の3二に上がらせ、模様を良くする策に出た。対して久保は3~5筋の三つの位を取り、四段目に飛車を浮く新趣向を披露した。「類型も見たことが無く対応に苦慮した」と豊島。

A図・▲2八角まで
A図・▲2八角まで

A図は、豊島が▲2八角と放った局面。6手前の▲3六歩での2時間5分の大長考で、「相手にこのまま駒組みされるとマズイ」と判断。敵玉のコビンを狙う自陣角を主軸に、攻めをつなげる構想で勝負に出た。

現地で大盤解説会に登場した大石直嗣(ただし)七段は「最初は飛車角だけで攻めが細い印象でしたが、豊島玉は金銀4枚の左美濃で堅い」。午後9時ごろから、現地で検討する棋士の多くが「着実な攻めを続ける豊島が優勢」と言い始めた。だが、久保は勝負を投げ出さず、頑強に抵抗する。翌2日午前0時24分に久保が投了。最終局の全5局のうち、最も遅い終局となった。

終局後、豊島は「ずっと分からなかった」と本局を振り返り、「名人挑戦は今年の目標だったので、決まって良かった」と述べた。今期A級を「対深浦九段戦は、最後まで『負けても仕方が無い』と思っていた。勝てたのは大きかった」と振り返った。久保は「持っているものを出し切った結果」とサバサバした様子で語った。(佐藤圭司)

2勝7敗で降級が決まった深浦康市九段
2勝7敗で降級が決まった深浦康市九段

■深浦、糸谷の一気の攻勢で降級

8回戦を終えた時点で、阿久津主税(ちから)八段の降級は決まっており、もう一人の降級者は深浦康市九段と三浦弘行九段に絞られていた。深浦は自身が勝って三浦が負けた場合のみ残留という厳しい状況。最終戦の相手はA級初参戦の糸谷哲郎八段だ。

B図・△2三歩まで
B図・△2三歩まで

角換わりの戦型から糸谷の攻めに深浦が反撃し、相手玉の近くにと金を作って迫った。B図は糸谷が2九にあった飛車で2四の歩を取り、深浦が△2三歩と受けたところ。ここから▲4四飛△同歩に、遠く後手玉を突き刺す▲1六角が厳しかった。合駒に飛車しかない深浦は△6二玉と逃げたが、▲5三銀△同銀▲5一銀△7一玉▲5三桂成で一気に寄り筋となった。

深浦は残り時間をすべて使って粘ったが、5局中、最も早い午後8時24分に投了。降級について「星が思うように伸びなかったので仕方ない結果だと思う」と絞り出すように話した。

自身の残留決定を知らない三浦は、稲葉陽(あきら)八段を相手に劣勢に陥るも、粘って終盤のねじり合いに持ち込んだ。最後は稲葉が自玉の詰みに気づかず頓死。あっけない幕切れだった。三浦は「運良く残留できた。来期以降に生かしたい」と話した。

A級で黒星続きだった阿久津は佐藤康光九段に快勝し、初白星を挙げた。「来期もあるので、一生懸命指そうと思いました」と話した。(村上耕司)

情報源:最終戦、勝敗の鍵は「遠見の角」 将棋名人戦・A級順位戦:朝日新聞デジタル




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