(古都ものがたり 出雲)将棋の里見香奈、誇らしき故郷:朝日新聞デジタル

ほぉ・・・


2019年1月17日13時10分

島根県出雲市出身で将棋の里見香奈女流四冠。「出雲そばが無性に食べたくなる時がある」と、地元への愛着を隠しません。記者がその場所を訪ねました。

「勢溜(せいだまり)」の鳥居。向こう側には旧大社駅など里見香奈女流四冠の思い出の町並みが広がる=2019年1月7日午後、島根県出雲市、槌谷綾二撮影
「勢溜(せいだまり)」の鳥居。向こう側には旧大社駅など里見香奈女流四冠の思い出の町並みが広がる=2019年1月7日午後、島根県出雲市、槌谷綾二撮影

女流将棋界の第一人者だが、とても謙虚。彼女が自分の実績を誇る姿を見たことが無い。けれど、故郷の島根県出雲(いずも)市(し)のお国自慢はスラスラと。盤上での攻めの鋭さから「出雲のイナズマ」がニックネームだ。「中学生のころはすごく恥ずかしかったんですが、大好きな『出雲』も入ってますし、今では、ありがたいですね」。里見香奈お勧めの場所は、もちろん出雲だ。

旧大社駅。「近くの将棋道場に通っていました。この辺りの町並みが一番記憶に残っています」と里見香奈女流四冠=2019年1月7日午後、島根県出雲市、槌谷綾二撮影
旧大社駅。「近くの将棋道場に通っていました。この辺りの町並みが一番記憶に残っています」と里見香奈女流四冠=2019年1月7日午後、島根県出雲市、槌谷綾二撮影

まず、旧大社駅。1912(明治45)年に国鉄大社線の開通で開業し、24(大正13)年に改築、出雲大社への参拝客らを迎え続けた。90(平成2)年にJR大社線が廃止され、駅としての役目は終えたが、純和風の木造建築や線路跡は観光客や鉄道ファンに愛され続ける。

92年生まれの里見にとって、幼い日に将棋を学んだ思い出と重なる。旧大社駅から徒歩数分の場所に将棋道場があり、「家族に車で送ってもらい、旧大社駅で車をとめて、通っていました。小学校に通う前から、毎週1回」。中学1年で女流棋士としてデビューした2004年、旧大社駅は国の重要文化財に指定された。

旧大社駅。「近くの将棋道場に通っていました。この辺りの町並みが一番記憶に残っています」と里見香奈女流四冠=2019年1月7日午後、島根県出雲市、槌谷綾二撮影
旧大社駅。「近くの将棋道場に通っていました。この辺りの町並みが一番記憶に残っています」と里見香奈女流四冠=2019年1月7日午後、島根県出雲市、槌谷綾二撮影

そして出雲大社。旧大社駅から神門(しんもん)通りを北へ。途中に「歌舞伎の始祖」とされる出雲(いずもの)阿国(おくに)像があった。「出雲のイナズマ」も古都・出雲の歴史に刻まれることだろう。「勢溜(せいだまり)」という広場の鳥居からの下り参道は、「空気が澄んでいる」と里見が勧める道だ。

少女時代からの念願だった女流名人のタイトルを2010年に奪取。翌年から、五番勝負の一局が出雲市で指され続ける。すっかり新春の風物詩だ。今年は里見の10連覇がかかる。出雲市役所近くには、里見の女流王座や倉敷藤花(くらしきとうか)のタイトル防衛を祝う横断幕があった。ホームグラウンドの出雲で防衛戦を戦えるのは「ありがたい」。県外からやって来た関係者に出雲大社を案内するのも喜びだ。「2礼4拍手1礼という出雲大社のお参りの仕方を教えて差し上げたりします」

里見は11年から、プロ棋士養成機関「奨励会(しょうれいかい)」と女流棋士の「二刀流」で奮戦したが、18年3月に年齢制限で奨励会を退会。「今は何も申し上げられません」と悲痛なコメントを残した。「打ち込んだだけに喪失感があったはず」と長年、大阪で親身になって里見を指導する畠山鎮(まもる)七段(49)は思いやる。が、その後、里見は元気を取り戻す。男性棋戦に女流棋士枠で参加し、18年度は7勝8敗とほぼ互角に渡り合い、「将棋を指すのが楽しい」と笑顔で話す。まるで、「好きな道なら楽しく歩け」をモットーに勝ちまくった少女時代に戻ったようだ。

出雲そば=島根県出雲市、槌谷綾二撮影
出雲そば=島根県出雲市、槌谷綾二撮影

里見にとって出雲は「パワーを充電できるような、ゆっくりと休める場所」。復活劇にふるさと出雲は一役買ったはずだ。「出雲の食べ物やそれを育む空気や水、風が私は大好き」。実家から届く、出雲市内の神西湖(じんざいこ)産のシジミや地元の名水も里見を支えただろう。=敬称略(佐藤圭司)

ごあんない

旧大社駅(0853・53・2885)は午前9時~午後5時、開館。駅舎内で駅の歴史のパネル展示があり、ホームや線路跡にも入れる。無料。

地図
地図

出雲市のホームページ(http://www.city.izumo.shimane.jp)では出雲とゆかりのある著名人が出雲への思いを語る出雲市応援メッセージ動画を見られる。姉妹で将棋女流棋士の里見香奈さん、咲紀さんのほか、歌手の竹内まりやさんら。

女流名人戦第2局は1月27日、出雲文化伝承館で。里見香奈女流名人と挑戦者の伊藤沙恵女流二段が対局。午後1時半から大盤解説会(無料、定員200人)がある。解説は畠山鎮(まもる)七段、聞き手は和田あき女流初段。問い合わせは女流名人戦出雲開催実行委員会事務局(出雲市文化スポーツ課内、0853・21・6514)へ。

里見香奈(さとみかな)

将棋の里見香奈女流四冠
将棋の里見香奈女流四冠

1992年、島根県出雲市生まれ。2004年10月1日、女流2級で女流棋士に。08年、倉敷藤花戦で初タイトル。女流タイトル戦登場39回、うち獲得34回。現・女流四冠。

情報源:(古都ものがたり 出雲)将棋の里見香奈、誇らしき故郷:朝日新聞デジタル


へぇ・・・