ほぉ・・・
世界的な科学雑誌「ネイチャー」は、科学におけることしの重要人物10人を発表し、日本の小惑星探査機、「はやぶさ2」のリーダー、JAXA=宇宙航空研究開発機構の吉川真ミッションマネージャとともに、「ゲノム編集」で受精卵の遺伝情報を書き換え双子が産まれたと主張している中国の研究者などが選ばれました。
「ネイチャー」は毎年、科学の分野で、その年を象徴する研究を行った10人を選んでいて、18日、ことしの10人を発表しました。
このうち、日本からは「小惑星ハンター」として、JAXAの吉川真ミッションマネージャが選ばれ、初代「はやぶさ」がトラブルに見舞われながらも地球に微粒子を持ち帰った経験をいかして、ことし6月に「はやぶさ2」が小惑星「リュウグウ」に到着したことを紹介しています。
そのうえで、海外の研究者から「自己中心的にならず、多くの研究室をまとめていることが成功につながっている」と評価されているとしています。
一方、先月、受精卵の遺伝情報を書き換え双子が産まれたと主張し、波紋を呼んでいる中国の南方科技大学の賀建奎准教授も「ゲノム編集のならず者」として取り上げられ、「倫理を無視し、子どもを未知のリスクにさらした。ゲノム編集は死に至る病を防ぐ可能性のある技術だが、彼のやり方がよかったという人はほぼいない」と非難しています。
ネイチャーは「選ばれた人たちは、われわれは何者か、どこから来たのか、どこに行くのか、という難しい問いを突きつけている」としています。
吉川さん「今回を励みに着陸成功させる」
世界的な科学雑誌「ネイチャー」のことしの重要人物10人に選ばれたJAXA=宇宙航空研究開発機構の吉川真さんは、ことし6月地球から3億キロ離れた小惑星「リュウグウ」上空に到着し、来年、着陸に挑戦する探査機「はやぶさ2」のミッションマネージャをつとめています。
吉川さんは、世界で初めて小惑星から微粒子を地球に持ち帰った初代「はやぶさ」でも飛行コースの決定を担当。「はやぶさ2」では、プロジェクトの提案から立ち上げまでかかわりリーダーとして問題が発生した場合の対応や研究者間の調整などを行っています。
今回、多くの国内外の研究者をまとめあげて計画を円滑に進めている調整力が評価されました。
吉川さんは「全く想像していなかったので大変驚きました。『はやぶさ2』の活躍が世界的に認められたものと受け止めています。個人としてよりも、日本の科学と技術が広く世界に知ってもらえればうれしいです」と話していました。
そして、「『はやぶさ2』は、これから小惑星『リュウグウ』に着陸するという最大の山場を迎えます。『リュウグウ』の表面はごつごつしていて難しい。今回選ばれたことをはげみに、着陸をぜひ成功させたい」と意気込みを語りました。
情報源:ネイチャー “科学の10人”に「はやぶさ2」リーダー 吉川氏 | NHKニュース
小惑星探査機「はやぶさ2」のミッションマネジャーを務める吉川真・宇宙航空研究開発機構(JAXA)准教授(56)が、英科学誌ネイチャーの「今年の10人」に選ばれた。「小惑星ハンター」として功績が評価された。「人物紹介の記事を書きたい」と同誌の取材を受けたら、「こんなことになるとは想像もしていなかった」という驚く結果に。過去に論文を投稿しても掲載はかなわなかったそうだが、「まったく違う形で載ることは想定外だが感激している」と話した。【永山悦子】
18日にJAXA東京事務所で取材に応じた吉川さんのコメントと一問一答は次の通り。
◇日本の科学と技術を世界に知ってもらうきっかけに
吉川さん 今回、ネイチャーが年間で10人を選ぶというものに、なぜか入ってしまった。今年11月に「人物紹介をしたい」という取材があった。最近、国内外からのはやぶさ2への取材が多く、その一つだと思っていた。ところが、先週末に「10人の中の1人になった」と連絡が入り、本当にびっくりして、想像もしていなかった。
はやぶさ2の今年の活躍が世界的に認められたものだと思う。3年半かけて小惑星リュウグウに到着し、リュウグウそのものが想定外の形をした面白い天体だということが分かった。はるかかなたの小さな小惑星に小型の探査機が行って、さらに3台もの小型ロボットを降ろし、すべてが機能して素晴らしいデータをとったということは画期的なことだったのだと思う。
私は特に情報発信に力を入れ、日本語だけではなく、同時に英語で海外にも情報を発信した。またミッションマネジャーとして、科学分野のチームに日本、欧州、米国といった各国の研究者が集まる中、取りまとめ作業を担当し、ミッションがスムーズに進んできたということなども評価していただけたのではないかと思う。
個人的には、大学院生からずっと小惑星の研究をしてきた。それが発展した「プラネタリー・ディフェンス」(天体衝突問題)の活動を20年以上続け、日本の惑星探査にずっとかかわってきた。火星軌道への投入に失敗した探査機のぞみ、世界で初めて小惑星の物質を持ち帰ることに成功した探査機はやぶさ、現在も金星の探査を続けている探査機あかつき、それぞれで苦労し、問題も起きたが、それらがはやぶさ2につながっている。
私個人というよりも日本の宇宙探査ミッションがネイチャーで紹介されることで、日本の科学と技術を世界に知ってもらうきっかけになればうれしい。
――はやぶさ、はやぶさ2にかかわるようになったのは。
吉川さん 私は1998年に郵政省通信総合研究所(現・情報通信研究機構)から文部省宇宙科学研究所(現・JAXA宇宙科学研究所)に異動した。はやぶさプロジェクトが本格化したころで、はやぶさの軌道決定を一緒にやらないかと誘われた。はやぶさ2には最初からかかわっている。2005年に小惑星イトカワへ着陸後、はやぶさとの通信が途絶し、地球に戻ることは厳しそうになった。着陸でも弾丸を撃てなかったので試料をとれていないだろうと考えた。そこで2006年に再挑戦、リベンジのミッションとして、はやぶさ2を提案した。提案時のリーダー、最初のプロジェクトマネジャーを務めた。
――大勢のプロジェクトのメンバーの中で選ばれたことは。
吉川さん 今年のミッションについては、選ばれるべき人は津田雄一・プロジェクトマネジャー(プロマネ)だと思っている。津田プロマネは、探査機の運用を安全かつ成功するように導いてくれた。探査機を作る段階では、前のプロマネで今のJAXA宇宙科学研究所長の国中均教授が中心になった。それ以前、はやぶさ2の構想段階では私がリーダーだったので、ずっとはやぶさ2にこだわってきたというところを評価してもらえたのではないだろうか。
◇技術的に非常に大きな挑戦 失敗を精査した
――はやぶさ2は世界の科学界にとってどんな意味を持つといえるのか。
吉川さん 技術的に非常に大きな挑戦ということ。ネイチャーの記事でも「日本は失敗したことを精査し、新しい挑戦をしている」と言及されているが、はやぶさ2は惑星探査機としては小型で、そこにたくさんの技術を詰め込み、小さなロボットを3台も降ろすことに成功した。そういった技術的な挑戦が重要だと思う。今後は、着陸や衝突装置の実験も待っている。科学の分野でも、リュウグウは非常に面白い天体であり、地球の生命の起源に結びつくようなデータがとれそうな感じになっている。そちらも進展させて、技術、科学ともに日本のレベルが高いということを世界に知っていただきたいと考えている。
――ネイチャーという雑誌については。
吉川さん 研究者は皆そうだと思うが、あこがれの雑誌。若いころにネイチャーに論文を投稿したが、最初に蹴られてしまった。一度でいいからネイチャーに論文を載せたいと思っているが、今回まったく違う形で載ることになったのは、想定外だが感激している。
――ネイチャーの記事で、フランス国立宇宙研究センターのオーレリー・ムーシさんは「(吉川さんは)異なる研究機関の協力を導く稀有(けう)な能力があり、ミッション成功の大きな鍵を握っている」とコメントしている。
吉川さん 非常にほめすぎだと思うが、今回、欧州の研究者とずいぶん付き合ったところ、欧州でいろいろな国が集まってミッションをする場合、議論がまとまらないことが多いという。はやぶさ2は日欧米という世界中の主な宇宙機関が集まって進めるミッションにもかかわらず、議論が素直にまとまっていったことに対して、「日本の役割が大きかった」と言ってもらえた。
――ドイツの研究者は「日本の伝統として、米航空宇宙局(NASA)がやらないようなリスクのある大胆なミッションをやっている」とコメントした。
吉川さん 欧米の人と話をすると、はやぶさ2のように挑戦をたくさん詰め込んだようなミッションは、彼らにとって「やりにくい」という。やるためにはかなりの検討時間とコストをかけなければならないと話していた。一方、日本がそこそこのコスト、短い検討時間でやってしまったということは、「すごい」と言ってもらっている。もちろん日本が無謀に、十分な検討なしにやっているわけではなく、かなり検討してやっているが、これだけ多くの挑戦を組み込むミッションは、欧米から見ると珍しいのだろう。
――フランスのムーシさんは「吉川さんは親切で献身的だ」と話しているが、自分自身の信念に基づくものなのか。
吉川さん 今回は海外の方からいろいろと言ってこられたが、それらに一つ一つかなり丁寧に対応していたので、それが印象に残ったのではないかと思う。
――なぜ小惑星、惑星探査の分野に進むことになったのか。
吉川さん 小学校高学年のとき、両親に天体望遠鏡を買ってもらった。土星の輪がくっきり見えて感動し、月の表面もよく見えたのでずっと月を眺めるようになり、そのころから宇宙が好きになった。その後、中学でバレーボール部、高校は山岳部をやっていたが、個人的には宇宙関係の本を読んでいた。本格的に天文学に進むことになったのは大学に入ってから。大学で理学部に入り、専門を何にしようか悩んだが、宇宙がなぞに包まれていて面白そうだと思って天文学科に入った。当時は、ビッグバンのことなどが分かってきたころで宇宙論が盛んだったし、銀河や星雲という分野もあった。その中で、私たちに一番近い太陽系、その中でも小惑星にひかれた。
――子どものころに「星の王子さま」を読んで小惑星好きになったそうだが。
吉川さん 「星の王子さま」を中学生のときに読んだところ、星の王子さまがいろいろな小惑星を回っていくシンプルなストーリーながら、奥が深い話だなと思った。そのときに「小惑星というものがある」と知り、小惑星にひかれるようになった。
◇小惑星探査の醍醐味は「行ってみなければ分からない」
――小惑星探査でなければ得られない醍醐味(だいごみ)とは。
吉川さん 惑星探査も非常に挑戦的で面白いが、惑星はNASAがすでに全部回ってしまっている。小惑星は多くの場合、初めて行くことになるので、「行ってみなければ分からない」というところが醍醐味だと思う。リュウグウはジャガイモのような形だと思っていたら、行ってみたらまったく違っていることが初めて分かった。未知の世界に踏み込めるところが、惑星探査とはまったく違う。
一方、探査ではいろいろ苦労があった。一番頭に残っているのは、のぞみとはやぶさ。はやぶさでは電波が途絶し、地道に探査機を追尾する作業をしている中、かすかな電波が来たときは本当にうれしかった。のぞみも同じように何度も危機的な状況になった。「だめかな。あきらめるしかないかな」と思っていたときに、探査機の方が生き返ってくれるという経験をしているので、それには非常に感動した。
――そのような挑戦に突き進もうと思う動機は何か。
吉川さん 私自身は小惑星がすごく好きで、昔から小惑星一筋で生きてきた。小惑星はとても不思議な天体。80万個近く見つかっていて、探査されたのは10個程度しかないが、小惑星はそれぞれ個性があり、探査するたびに新しいことや太陽系の秘密が分かる。小惑星はまだなぞに包まれた天体なので、太陽系の起源や、ぜひ生命の起源に迫れるような事実が分かるとうれしいと思う。その中で、はやぶさ、はやぶさ2に携わることができたのは幸運だった。
――子どものころから小惑星に取り組み続け、失敗しながらも一つのことに取り組むことができたのは。
吉川さん 「好きだったから」ということが一番大きいが、私は器用ではなく、いろいろなことをするより一つのことを続けるしかなかったように思う。それ以上に、小惑星そのものが面白かった。探査は主に科学の視点だが、小惑星には資源があるかもしれないし、地球へぶつかる危ない天体かもしれない。人が行って利用できる天体かもしれない。そのように可能性が非常に大きく、ぜひきちんと調べるべきだということを考えてきた。
今の子どもたちも、自分が興味を持てるものを見つけて、それに向かって挑戦してみてもらえればと思う。私も小惑星というものを見つけて、ずっとそれにこだわってやってきたので、最初は広い視野でいろいろなことを見てもらって、好きなものを見つけて挑戦していってほしい。
――今後のはやぶさ2のミッションについて。
吉川さん はやぶさ2の一番の山場は着陸。はやぶさは2回着陸したが、2回ともうまくいっていない。だから、初めてやるのと同じといえる。さらに、イトカワのときよりもリュウグウの方が表面がデコボコしていて、着陸としては非常に難しく、レベルの高いことをやらねばならない。失敗するわけにはいかないので、着陸を是が非でも成功させたい。そのためにプロジェクトメンバーで準備しており、ネイチャーに選ばれたことを励みにして、メンバー一同で集中して挑みたいと思っている。
情報源:「はやぶさ2の活躍が世界的に認められた」吉川真JAXA准教授 ネイチャー「今年の10人」に(毎日新聞) – Yahoo!ニュース(コメント)
情報源:「はやぶさ2の活躍が世界的に認められた」吉川真JAXA准教授 ネイチャー「今年の10人」に – 毎日新聞
英科学誌ネイチャーは科学分野で注目を集めた「今年の10人」の1人に、小惑星探査機「はやぶさ2」チームの吉川真(まこと)・宇宙航空研究開発機構(JAXA)准教授(56)を選び、20日付の最新号で発表した。吉川氏は天体力学が専門で、各国との協力や普及活動に尽力している。「日本の科学技術を世界が知るきっかけになればうれしい」と話した。
情報源:「今年の10人」にはやぶさ2の吉川真氏 英ネイチャー誌 – SankeiBiz(サンケイビズ)
へぇ・・・