ふむ・・・
杉本昌隆七段の「棋道愛楽」
藤井聡太七段が新人王戦決勝三番勝負で2連勝し、見事に優勝を決めました。31年ぶりに最年少優勝記録を塗り替えた平成最後の16歳の新人王の誕生は、将棋界のみならず日本中が大いに沸き立ちました。
この日、「優勝の瞬間を見たい」と大阪の将棋会館に駆け付けたファンは、平日にもかかわらず130人以上。東京や新潟から来たという女性ファンの姿もありました。いつにも増して多い報道陣。足を止める通りすがりの人。玄関前で記念写真を撮る人。藤井七段の注目対局でよく見られる光景ですが、まるでお祭りのようです。
第1局は出口若武(わかむ)三段の積極策に押され、中盤で人工知能(AI)は藤井七段がやや不利との判断を下していました。しかし、ここからが藤井七段の本領発揮。長考の末に唯一の正解を見つけだし、数手進むと形勢を互角に戻しています。ここが、藤井七段が「AIを超える棋士」と言われるゆえんです。
最近は、苦しい局面でもじっと辛抱してぴったり相手についていく「粘り強さ」を習得した感があります。はた目には苦しい長考に見える場面でも、「いつも通り集中できているな」と逆に私は安心したものです。
第2局があった10月17日は、大阪で羽生善治竜王のA級順位戦も指されていましたが、若手棋士がよく使う「水無瀬(みなせ)の間」での対局。これは大変珍しい光景です。タイトルホルダーの指定席とも言える「御上段(おんじょうだん)の間」で藤井七段が指していたからですが、こんなところにも決勝の重みを感じます。
番勝負は全てにおいて特別。1局目はショートケーキ、2局目はモンブランのおやつが出されました。お店がテレビで紹介され、数十分後にはそのケーキが完売したとか。恐るべし、藤井効果です。
なお、2人とも終局後までケーキに手を付けませんでした。将棋が早々に大事な場面を迎えたこともありますが、若い2人はおやつの差し入れに慣れておらず、食べ時がわからなかったのでは、と予想します。
対局開始時と同じように、上座の藤井七段が「失礼します」と一礼しておもむろにおやつに手を付け、下座の出口三段がそれに習う……。こんな作法はありませんが、若手ならではの新鮮さがありそうで、ちょっと見てみたい気もします。
将棋は終わってみれば藤井七段が危なげなかったですが、プロ棋士養成機関の「奨励会」に在籍しながら、決勝まで勝ち進んだ出口三段の健闘もたたえられるべきでしょう。
番勝負が終了し、打ち上げの食事会が将棋会館1階のレストランでありました。その席で藤井七段が書いた色紙。いつもの「七段」ではなく、「新人王・藤井聡太」となっていたのが、なんとも新鮮でした。
今後、数多くの番勝負を経験するであろう藤井七段ですが、記念すべき1回目がこの新人王戦。この一日はファンとともに心に深く刻まれるはず。さらなる活躍を期待したいものです。
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すぎもと・まさたか 1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2006年に七段。01年、第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太七段の師匠でもある。
情報源:藤井七段の新人王戦、「粘り強さ」習得に師匠安堵:朝日新聞デジタル
村)杉本昌隆七段のコラムです。新人王戦三番勝負は大きな注目を集め、東京や新潟からもファンが来たそうです。打ち上げで藤井聡太七段が色紙を書きましたが、その肩書は「七段」ではありませんでした。
藤井七段の新人王戦、「粘り強さ」習得に師匠安堵:朝日新聞デジタル https://t.co/XjGvjisV3q— 朝日新聞将棋取材班 (@asahi_shogi) October 30, 2018
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