(大志 藤井聡太のいる時代)修業編:13 「序盤が上達しない」、AIに活路:朝日新聞デジタル

ふむ・・・


研究で使う、家族と共用のパソコンの前に座る藤井四段(当時)。後に自分専用を買った=2017年6月、愛知県瀬戸市
研究で使う、家族と共用のパソコンの前に座る藤井四段(当時)。後に自分専用を買った=2017年6月、愛知県瀬戸市

藤井聡太(そうた)七段(16)が棋士養成機関「奨励(しょうれい)会」にいた4年ほど前、師匠の杉本昌隆七段(49)の元に、聡太の母裕子(48)から1通のメールが送られてきた。「将棋の研究に、将棋ソフトを使うことをどう思うか」と尋ねる内容だった。

人工知能(AI)を搭載したソフトは、この十数年で形勢判断の精度が高まり、飛躍的に強くなった。研究に使う人が徐々に増えていた時期だった。

杉本は考えた末に、「時期尚早ではないか」と伝えるメールを送った。「ソフトは劇薬。その判断を信じて思考停止するのが怖い。藤井は順調に伸びていたので、流れを変えたくなかった」と振り返る。

一度は見送ったAIの活用を聡太が採り入れるようになった契機は、2016年に訪れた。

聡太は4月から、プロ入りを争う奨励会の三段リーグ戦に参加した。翌月、関西将棋会館(大阪市)の一室で、若手有望株の千田(ちだ)翔太六段(24)がAIの有用性を説いているのを聞き、興味を持った。

聡太は当時、ある悩みを抱えていた。「序盤がなかなか上達しない」。弱点を克服するための活路をAIに見いだし、自宅のパソコンで使い始めた。杉本も「他の奨励会員も既に使うようになったから」と考え、異議を唱えなかった。

ほどなく聡太は手応えを感じた。AIが示す柔軟な指し手を通じて、先が見通しづらい序中盤の感覚が磨かれたという。序盤戦術に詳しい村山慈明(やすあき)七段(34)は「序盤は、ソフトの影響を感じることが多い。高校に通っていて他の棋士と研究する時間がないので、使うことが多いのでしょう」と分析する。

聡太は一方で、AIが「もろ刃の剣」になり得ることも自覚している。今年4月の朝日新聞への寄稿には、こう記した。

「(ソフトの活用は)一つ間違えれば、思考そのものをソフトに委ねて、自ら考えるのを放棄することになりかねない」=敬称略

(村瀬信也)

◆毎週日曜に掲載します。

情報源:(大志 藤井聡太のいる時代)修業編:13 「序盤が上達しない」、AIに活路:朝日新聞デジタル


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