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公正取引委員会は7月11日、独占禁止法違反の疑いがあったAppleに対する調査結果を発表した。ドコモ、KDDI、ソフトバンクとの契約を問題視し、調査を進めていたが、問題になりそうだった一部の内容をAppleが自主的に改定したことで疑惑が解消。公取の審査も終了した格好だ。Appleとキャリアの間では、「iPhone Agreement」と呼ばれる契約が結ばれていたという。では、これが改定されたことで、どのような影響があるのか。今後の業界に与える影響を分析していきたい。
Appleと3キャリアの間で結ばれたiPhone Agreementとは
AppleがiPhoneを納入する際の条件などをまとめた契約が、iPhone Agreementだ。公取の調査結果で、この存在が公にされた。独占禁止法違反の疑いがかけられていたのは、次の4点だ。
1つ目は、3キャリアがAppleから、販売ノルマやノルマ未達成時のペナルティーを課せられていたのではないかというもの。2つ目は、iPhone提供にあたって、特別な料金プランを用意する契約があったのではないかという疑惑だ。3つ目は下取りしたiPhoneの扱いに対する内容。キャリアが買い取った端末の流通を制限されている可能性があり、事実であれば独占禁止法に抵触する恐れがある。
最後の4点目は、月々サポートや毎月割、月月割といったいわゆる「端末購入補助」の有無や額をAppleが3キャリアに指示している恐れがあるというものだ。販売ノルマや提供価格の指定に関しては、業界内でもウワサとして語られていたが、公取の調査では、これらが白日の下にさらされた。
公取の調査結果を見ると、部分的にはこれらが事実だったことが分かる。例えば、販売ノルマに関しては、「MNOが1年ごとにApple Japanに注文するiPhoneの数量が、一部の年についてあらかじめ具体的に定められていた」とある。詳細はキャリアごとに異なっており、具体名は伏せられているが、過去の状況とすり合わせると、ソフトバンク、KDDI、ドコモと納入先が増えるに従い、契約内容が緩くなっていることがうかがえる。
ただし、過去にノルマ自体はあったが、未達の場合でも具体的なペナルティーはなかったため、公取は「Apple JapanがMNOの 事業活動を拘束していたとは認められなかった」と認定している。Appleも公取の審査中に1社との契約を改定し、他2社と同様、注文数量がキャリアの目標であることや、未達の場合でも契約違反にならないことが明記されたようだ。
2点目のiPhone専用プランを作る契約も、存在そのものはあったが、「iPhoneプラン以外の料金プランの提供も可能であるとされていた」ために、「Apple JapanがMNOの事業活動を拘束していたとは認められなかった」としている。実際、過去には、iPhone専用プランもあったが、徐々に料金は統一されていった。今でもプラン名に「(i)」が付くなど、その名残はあるものの、金額は他のプランと同額になっている。
ただ、iPhone専用プランは他のスマートフォン向けより割安だったこともあり、あえてそれ以外の料金プランを選ぶユーザーは少なかった側面もある。例えば、ソフトバンクはiPhoneに、フィーチャーフォンと同じ4200円が上限のデータプランを提供してきた経緯があり、他のスマートフォンよりも料金が安価に抑えられていた。Appleとキャリアの関係に焦点が当たる独占禁止法では、別のプランを選べれば問題はないのかもしれないが、公正競争の観点では少々疑問も残った。
ユーザーから買い取ったiPhoneの用途に制限がかけられていた疑惑も、「MNO3社のうち1社による下取りiPhoneの国内での用途を定めるにとどまるものであったこと等から、Apple Japanが下取りiPhoneの国内での流通を制限していたとは認められなかった」といい、問題視しない方針。この1社に関しては、買い取ったiPhoneを端末補償サービスにのみ使うことが定められていたが、公取の審査開始後、iPhone Agreementが改められたという。
端末購入補助に関する規定は見直しに、分離プランでの提供も可能に
4つの疑いのうち、公取の調査で大きく状況が動いたのが、端末購入補助の扱いに関してだ。端末購入補助とは、ドコモの月々サポートや、auの毎月割、ソフトバンクの月月割を指す言葉で、実際には端末ではなく、主に料金が24回に渡って値引かれていく仕組みのこと。公取の報告書によると、Appleはこれを事実上の端末割引と見なしていたことがうかがえる。
そのうえで、端末購入補助を必須としていた点が、公取に問題視されている。キャリアは端末購入補助がない代わりに、もともとの料金が安い分離プランを導入しづらくなるためで、報告書には「移動体通信サービスを提供する電気通信事業者間の低廉で多様な料金プランの円滑な提供を通じた競争を減殺するなどの場合には、独占禁止法上問題となり得る」と記載されている。
事実、KDDIは2017年、「auピタットプラン」「auフラットプラン」を導入したが、当初、iPhoneは新料金プランの対象外になっていた。当時の代表取締役社長(現・代表取締役会長)田中孝司氏が、iPhone向けに提供しない理由を問われた際に、「ダイレクトにはお答えできないが、(Appleと)協議中。(新iPhoneが発売になる)秋に向かっていろいろとあるので、お互いを理解しながら」と語っていたように、交渉がまとまっていなかったのがその理由だ。Apple側が、端末購入補助が付かないことに難色を示したという。
ただし、その後KDDIは交渉を重ね、iPhone 8/8 Plusの発売に合わせ、iPhoneでもauピタットプラン、auフラットプランが選べるようになった。また、ソフトバンクも3段階制の分離プラン「おてがるプラン」の対象端末に、iPhone SEを含めている。こうした状況から推察するに、iPhone Agreementの契約には残っていたものの、交渉次第では、分離プランも提供が可能になっていたとみられる。
さらにAppleは公取の調査を受け、iPhone Agreementの条項を改定。ユーザーに対して新旧両方のプランを適切に説明することを条件に、端末購入補助があるプランとないプランを選択可能にした。これをもって公取は「契約改定は、独占禁止法違反の疑いを解消するものと認められる」として、おとがめなしの結果に落ち着いている。
大勢に変化はなし、docomo with入りも実現するか?
とはいえ、KDDIが既にiPhoneで分離プランを導入している以上、この改定をもって何かが大きく変わることはないだろう。auピタットプラン、auフラットプランはユーザーからも好評で、4月8日時点ですでに700万契約を突破している。auのスマートフォンユーザーの約3分の1が、1年たたずに新料金プランに移行したというわけだ。Appleにとっても、端末購入補助に固執するより、分離プランを受け入れた方がプラスになったはずだ。
一部には料金が下がり買いやすくなるという論調もあるが、分離プランでは逆に端末の実質価格が上がるため、ユーザーの負担が大きく変わることもなさそうだ。ただし、au以外のキャリアでも分離プランが選べるようになれば、端末を長く使う人にとってはメリットが出てくる。特にiPhoneは、iOS 12で旧端末の高速化を売りの1つにするなど、端末のライフサイクルが長い。結果として、端末の買い替えサイクルは低下してしまうかもしれない。
ドコモは、「今回の公正取引委員会の事件審査の結果、iPhoneの販売方法に一定の選択肢が増えたことは事実」としながら、「これにより、お客さまにとってメリットがあり、かつ分かりやすい料金プランが提供できるか、今後検討していく」とコメント。検討の結果がどうなるかは未知数だが、docomo withにiPhoneを導入するハードルも低くなっている。
あくまで可能性の話でしかないが、iPhone SEのようにもともと廉価なiPhoneや、型落ちになったiPhoneを、docomo withとして販売する可能性もありそうだ。ドコモの吉澤和弘社長はdocomo withの対象を「ミドルレンジの下の方」と語っていたが、「LG Style」のように、docomo withは4万円を超える端末にも広がっている。現状では、最も安いiPhone SEの32GB版が4万3000円程度で、docomo withの対象になっても不思議ではない。
ただ、あるキャリア関係者は「今さらこれでは……」と語っていたように、公取の調査は時機を逸している感がある。ドコモがiPhoneを導入する前や、KDDIがauピタットプラン、auフラットプランを始める前であればまだ分かるが、このタイミングでの調査結果公表は、キャリアにとって肩透かしだったはずだ。公平性という観点では、iPhone Agreementの改定をもって、過去の疑いを不問にする姿勢にも疑問は残った。
関連リンク
情報源:Appleに独占禁止法違反の疑い 公取の調査が“iPhone販売”に与える影響は?(ITmedia Mobile) – Yahoo!ニュース
情報源:Appleに独占禁止法違反の疑い 公取の調査が“iPhone販売”に与える影響は? (1/2) – ITmedia Mobile
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