マジか・・・
今から1986年4月26日、今から約32年前のことだ。チェルノブイリ原子力発電所事故によって辺り一帯は非常に有害な地域となってしまった。
だが、徐々に自然が戻ってきた。野生動物が増え始め、絶滅を危惧されていた動物たちがまたこの地に戻って来たという話をお伝えしたと思うが(関連記事)、最新のニュースによると、事実上の自然保護区となったチェルノブイリでは、オオカミが繁殖し、大胆な若い野生のオオカミが遠出をしているという。
チェルノブイリから遠出するタイリクオオカミの追跡に成功
4300平方キロに広がるチェルノブイリの立入禁止地域は、今もなお放射能汚染が残っているが、区域内に人間の干渉がないことから、一部の野生動物が繁殖しているらしいことも分かっている。
そうした動物たちの活動範囲は立入禁止区域に収まらない。
アメリカ・ミズーリ大学コロンビア校で生態学を研究しているマイケル・バーン氏らの研究チームによると、ある1頭の若いオスのタイリクオオカミが、そこから369キロ先まで冒険をしていることがわかったという。
動物がこれほどまで遠く区域から離れて移動していることが判明したのは初めてのことである。もしかしたら、将来的にこの個体が広まるサインである可能性がある。
オオカミにとりつけたGPSで移動を測定
このデータは1、2歳のオオカミにGPS内蔵の首輪を取り付けることで集められた。その行動を追跡すると、立入禁止区域からウクライナまでの長距離にわたる主に森や農地を移動していることが分かった。
こうした長距離移動はタイリクオオカミにとって珍しいことではないが、チェルノブイリ立入禁止区域で誕生した個体で確認されたのは初めてのことだ。
GPS内蔵の首輪は計13頭のオオカミに取り付けられたが、年長の個体は概ね立入禁止区域内に留まっている。
チェルノブイリの動物が生態系にどのように影響を与えるのか?
チェルノブイリで育ったオオカミは遺伝子が突然変異を起こしている可能性が否定できない。その為、生態域を広げた野生動物が生態系に悪影響を与えるかもしれないと懸念する声もある。
だが今のところ、生態系に影響が出ているかどうかを裏付ける証拠はまだないという。
「チェルノブイリ立入禁止区域は、生態系のブラックホールと化さずに、野生動物の宝庫となり、他の地域の個体数を支えてくれるようになるかもしれません」とバーン氏は話す。
今回観測されたのはオオカミだけだが、もしかしたら他の動物でも似たようなことが起きているとも考えられるという。
チェルノブイリから出たオオカミの今は?
しかしチェルノブイリを出たオオカミの現状は不明だ。GPS首輪が最後に通信を送ってきた場所は、それが自動的に外れたはずのタイミングより数ヶ月後のことだからだ。
研究者は首輪を回収できておらず、そのために誤作動なのか、オオカミが首輪をつけたまま死んでしまったのか、確かめる術がない。
チェルノブイリ事故が野生動物に与えた影響
チェルノブイリの災禍が地域の野生動物に与えた全体的な影響はまだはっきりしない。特定の動物で突然変異発生率の上昇が見られているのと同時に、個体数が増加したという証拠もある。だが全体像についてはあいまいだ。
タイリクオオカミは特に繁栄した。いくつかの推定によれば、立入禁止区域のオオカミ密度は外の自然保護区の7倍にも達するという。
今、少なくとも1頭のオオカミが立入禁止区域の外に足を踏み出したことが判明した。これは区域外への動物の移動に関するさらなる研究のスタート地点である。
そうした研究からは、放射性降下物が野生動物に与える影響だけでなく、遺伝的突然変異が野生に広がる程度も明らかになるだろう。
だが、こうしたオオカミが遺伝的にほかのオオカミと違いがあるのかどうかを知る確かなデータはない。見た目はごく一般的なタイリクオオカミだ。
「チェルノブイリ立入禁止区域が、これまで考えられていたような野生動物の空白地帯ではなく、その源になる可能性については調査する価値がある」と研究チームは報告している。
オオカミの個体密度が近隣の非汚染区域と比べて高い(最大で7倍)ことを考えると、立入禁止区域で生まれたオオカミが周辺地域に定期的に散らばっていると推測しても間違いではないだろう。
「自然淘汰」と「突然変異」はチェルノブイリに限らず自然界で繰り返されている。生物は潜在的に遺伝子の多様性を秘めているのだ。
この調査結果は『European Journal of Wildlife Research』に掲載された。
References:sciencealert / mysteriousuniverseなど
情報源:野生の王国となったチェルノブイリ、オオカミたちが繁殖し生息域を広げつつある(ウクライナ) : カラパイア
ほぉ・・・