申請1万9000人に対して認定は20人 日本の入管が認めない背景に”偽装難民”? | AbemaTIMES

そもそも、なぜ日本に来るのかが理解できない。


20日は世界難民の日だ。紛争や迫害から逃れようと母国を飛び出した人の数は過去最悪の6800万人を超え、世界のどこかで2秒に1人が家を追われている状態となっている。

日本でも難民認定を申請する外国人は増加しており、昨年は過去最多の約1万9000人が申請を行っている。難民申請者には、申請者には留学や観光などの「在留資格」を持つ人と持たない人がいる。そんな彼らの申請を国連で採択された難民条約に基づき審査するのが入国管理局(入管)だ。法務省の内部部局で、出入国する人の管理、外国人の在留管理、不法入国者に対する強制退去、難民の認定といった業務を行っている。

申請の審査には時間がかかり、結果が出るまでの処遇も人によって分かれる。難民条約の原則によって審査期間中は強制送還できないため、無期限の収容が可能になっていることから、許可も出ず、強制送還もされず、ただ施設に長期間収容され、自由を奪われる難民申請者が増えているというのだ。2017年末の時点で、全国1351人の申請者のうち、576人が長期収容されていており、中には6年近くも収容されている人もいるという。

難民申請中のクルド人・レイラさん(仮名・36歳)は、夫が入管に収容されて5か月が経った。兄弟たちの支援を受けながら、3人の子どもと夫の帰りを待ち続けている。子どもたちは「父が収容されてとても大変な日々が続いています。この生活がいつまで続くか分かりませんが、こんな生活に慣れることはできません。1日でも早く父を返してください。母は毎日、父やぼくたちのために頑張っています。どうか父を返してください。お願いします」という手紙を入管へ送った。

クルド人は国を持たない世界最大の民族とされており、100万人以上が難民となっている。レイラさん一家は2006年、特に弾圧が激しいトルコから来日し難民申請。条件付きで身柄が解放される「仮放免」を受け、以来12年間、家族5人で支え合いながら暮らしてきた。

「仮放免」について、20日放送のAbemaTVAbemaPrimeに出演した児玉晃一弁護士は「本来、在留資格がなければ『収容令書』によって入管の身体拘束を受けるが、一定の保証金を払えば外に出られる状態になる。これを仮放免という。行動には制限があり、就労は禁止、県外からも出てはいけないという不自由な状態だ」と話す。さらに仮放免の場合、入管の意向次第でいつでも収容される可能性がある。

今年1月、それは突如として現実となった。事前の通達もないまま、突然その場で夫だけが入管施設に収容されてしまったのだ。「ただ2か月の仮放免のハンコを押しに行った時に急に収容された。あなたの難民申請が嘘みたいだと」と、レイラさんの妹は振り返る。

こうした措置が取られるようになった背景には、就労目的での申請が、いわゆる”偽装難民”の増加に伴う法務省の基準見直しがあるようだ。児玉弁護士は「2015年くらいから仮放免中の人の監視を厳しくする通達が出たり、仮放免の人を簡単に収容できるようになったりしているのは間違いない。ただ、偽装難民かどうかを判断するのか非常に難しい。はっきりした理由も明かされず、裁判所も”入管には幅広い裁量がある”という言い方をする」と話す。さらにレイラさん一家がクルド人であることが、より事態を深刻化させている可能性もあるという。他国では難民と認められているクルド人だが、弾圧を行ってきたトルコへの政治的な配慮から、日本では難民認定のケースがないというのだ。

上川陽子法務大臣も、「一旦申請をすれば送還が止められることを承知の上、退去強制処分が決まった後になって申請を行う者もいる。個人的事情や雑ぱくとした生活不安を述べるなど、明らかに難民に該当しない申し立てが散見される。仮放免の是非を慎重に判断するというのは、むしろ当然のことと考えている」と説明している。

夫との面会のため、入管に毎週通うレイラさん。「全てのサービスが悪い。必ず週に何回かパンやその他の食べ物に虫や毛が見つかる」と話す。1年前まで入管に収容されていたというレイラさんの義弟・バフマンさんも「外の病院に行かせてと言ってもすぐには行けず、1か月ぐらい待つ。倒れる人もいたけど病院に連れて行かない」と訴える。

収容された人の過酷な実態も報じられている。昨年には虫垂炎の手術を受けた収容者が数日後に激しい腹痛を訴えたものの、1か月にわたって放置された疑いがあると報じられた。今年4月には長期収容を悲観していたという収容者が自殺。さらに5月にも自殺未遂が起きている。

■イギリスの入管制度がお手本に?日本が目指すべき道とは

法務省が基準見直しに踏み切った結果、昨年の実績では難民申請数1万9000人に対し、認定されたのはわずか20人という規模にまで縮小している。

パックンは「難民の問題は先進国共通の課題。アメリカでは不法入国した親子を引き離して別の施設に入れたり、親だけ強制送還し、子どもは施設に収容したりと、非人道的な措置を取って抑止しようとしてきた。日本政府の立場からすれば、家族は外で暮らすこともでき、2年くらいの期間を経て無事に審査が通れば歓迎もされる。その意味では他国に比べればまだマシ、ということなのではないか」と指摘する。

児玉弁護士は「審査を入管がやっているのが原因だろう。真正なパスポートを持っていると、国境で身分がバレてしまったり、本当は国を恐れていないんじゃないかと言われてしまったりするため、難民は偽造パスポートでやってくることの方が多い。そのため、国連の難民審査のハンドブックでは、真正なパスポートを持っているというだけで難民不認定にしてはいけないと書いてある。にもかかわらず、入管の人たちは偽造パスポートに対して”悪いことをした。不法入国だから返さなきゃいけない”というマインド。本来、難民審査する人は”真正なパスポートを取る余裕がなかったんですね、保護しないといけない”というスタンスでなけれないけない」と話す。

元入国警備官の久保一郎氏は「仮に私たちが真正なパスポートを持って海外に行き、”迫害を受けてます”と主張しても、”なぜ旅券を受けらたれるんだ”と言う判断をされると思う。ただ、難民であればパスポートもなしに海を渡るだとか、偽造のブローカーに頼んで偽造パスポートを持って出てくる方が、より難民として認められやすいはずだが、それを扱う入管では違反者として扱うから、最初からスタンスが違う」と指摘。

「難民条約を受け入れる段階で、難民を認める数を設け、退去強制手続を取り仕切っている部門の人間を続けてトップに据えた。私はそれを見て、難民を受け入れるというよりも、選別するための組織になると感じた。ただ、当時はベトナム難民くらいで数も多くなかった。今のシリア難民のような切迫感はあまりなく、ゆったりとした気持ちで結果的に退去強制に持っていこう、という意図だったと思う。難民認定を申請後、とりあえず6か月後に就労できるという措置も、入管が手一杯という状況を打開するためのものだろう。本当の難民であれば、その間に状況もわかってくるだろうし、2年くらいかけて、”働いてお金も稼いだんだから、そろそろ国に帰ったらどうだ”、ということをやりたかったんだと思う」。

ジャーナリストの堀潤氏は「難民条約に加盟している日本が責任を果たすのは当たり前。その上で、きちんと審査・認定する機関を整備していないのは政府の不作為ではないのか。また、シリアのことを思い浮かべてみれば、内戦状態で、政府側が非人道的な行いをしているから離脱するというのに、その政府が発行しているパスポートを持てるわけがない。そういう中で杓子定規に今までの制度の中で対応できるのか。国際感覚を持って、シリア難民、クルド人、南スーダンと、一括りにせず対応ができるようにすべきだ」と訴えた。

入管が変わっていくためにはどうすればいいのか。そのヒントがイギリスの制度にあるという。イギリスでは仮放免の判断を裁判所が行なっており、申請期間も日本が1〜3か月かかるのに対し、イギリスは3〜6日と短く、収容継続の理由も明らかにされるという。

児玉弁護士は「収容されている人が裁判所に対して保釈請求ができ、裁判所は3営業日以内に公開法廷でのヒアリングを行わないといけないルールになっている。入管側も収容継続を必要とする理由を提出しなければならず、弁護士や収容されている人が反論できるようになっている。裁判官は保釈を認めない場合も懇切丁寧に理由を教える」と話した。(AbemaTV/『AbemaPrime』より)

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