ふむ・・・
耳が痛い話をヒントに
「もうPTAをやめたい」。福岡県内にある小学校のPTA副会長だった紀子さん(44)=仮名=のもとに昨年2月、学校を通じて一人の母親の声が届いた。「自分の学校でPTAの非加入問題が起きるなんて」。4月から新会長になることが決まっていた紀子さんは、突然の出来事に戸惑いながらも、母親に直接会って話をしたいと申し出た。
1対1での話し合いは4時間に及んだ。最初は紀子さんが何を言っても「とにかくやめたい」の一点張りだったが、やがて母親は「役員決め」での苦い記憶を語り始めた。
フルタイム勤務の夫婦共働き。仕事が忙しく、家庭の事情もあって「今年の役員はできない」と訴えると、別の母親から厳しい声が投げかけられたという。「みんな仕事はしている。そんな事を言ったら、ここにはもう住めませんよ」
「なぜ、そこまで言われなければいけないの」。泣きながら訴える母親に、紀子さんは間違った対応だったと謝罪。「本来のPTAの姿を見てほしい」と、PTA会費の使い道や活動について丁寧に説明した。すると、母親はこう言った。
「私はお金を払うことが嫌なんじゃない。PTAの活動自体には賛同しています。でも…」
◇ ◇
母親は、当時のPTAに関する疑問や不満を話し始めた。
「PTA新聞はただの学校活動報告になっている」「PTA開催の講演会に、なぜ動員をかけるのか。本当に必要な講演会なら、動員はいらない」「登校時の保護者の旗振り(見守り)は、なぜ月2回だけの決まった日なのか」
どれも耳が痛い話で一理あった。「おかしいと思うことをもっと聞かせて」。紀子さんは懸命にメモを取った。「言われたことは必ず変えます。だから1年間、会員のまま、PTA活動を見守ってもらえますか」。母親は渋りながらもうなずいた。
紀子さん自身も、希望してPTA役員になったわけではなかった。
友人の推薦で最初は書記に。4年間本部役員を務め、5年目に会長に就任。行事の度の飲み会や膨大な業務に何度もやめたいと思ったが、「会長になれば変えられるかも」という思いもあった。
目指したのは「業務のスリム化」。とにかく仕事を減らそうとの思いだったが、母親の話を聞いて、考え方が少し変わった。
「負担軽減」よりも、むしろ「目的と意味」から活動のあり方を見直すべきではないか。それが結果として、スリム化にもつながるのではないかと。
PTA新聞で本当に伝えるべき内容は何か、講演会は何を学ぶために行うのか?
話し合った結果、PTA新聞は締め切りをなくし、活動報告が必要な時期に絞って発行するようにした。講演会は「何を学ぶための講演会なのか」をはっきり示した上で、自由参加方式に切り替えた。月1回の定例会も、会長が必要と判断した時に開くようにした。
◇ ◇
見直し論議で、活動量が増えた部分もあった。
児童の安全安心に向けた登校時の「旗振り」。それまで月2回、約20カ所で実施していたが、信号がない横断歩道や三差路など、特に危険なポイント5~6カ所について、決まった日だけではなく保護者が毎日交代で立つようにした。スリム化には逆行するが、意味のあるめりはりだと思っている。
何をどう変えたのか。紀子さんは非加入を申し出た母親に逐一、報告メールを送り続けた。1年後、それまで一方通行だったメールに初めて返信があった。
「すごく変わったことが分かりました。今年はどのようにPTAに関わっていくか考えていきます」。今年、その母親は講演会企画などを担当する成人委員会の委員になった。
「『一人のために』が『みんなのために』。今は彼女に感謝しかないです」と紀子さん。素朴な疑問に耳を傾けることからPTA改革の一歩は始まった。
◆PTA Parent-Teacher Associationの略。学校の教員と児童生徒の保護者の連帯組織。米国から戦後導入された。児童生徒の成長や活動を学校内外から支援する。
一般的な組織は会長や会計などの本部役員のほか、学年や地域、広報などの委員会で運営。学校単位のほか、市区町村、都道府県、九州ブロック、全国組織もある。法律に基づかない任意団体のため、入退会は自由。ただ、入学と同時に自動・強制加入となる学校が多く、入退会を巡るトラブルも少なくない。
=2018/06/03付 西日本新聞朝刊(教育面)=
情報源:「もうPTAやめたい」一人の母親の声がヒントに “目的と意味”から考える改革(西日本新聞) – goo ニュース
情報源:「もうPTAやめたい」一人の母親の声がヒントに “目的と意味”から考える改革(西日本新聞) – Yahoo!ニュース
情報源:PTA改革(1)素朴な疑問 傾聴から新たな一歩|【西日本新聞】
はぁ・・・