(棋道愛楽)棋士と進学 「規律ある生活 プラスに」:朝日新聞デジタル

ほぉ・・・


杉本昌隆七段
杉本昌隆七段

杉本昌隆七段の「棋道愛楽」

究極の専門職である将棋の世界。進学するか否かは悩ましい問題です。

私たちが棋士を目指すための養成機関「奨励会」に入会するのは、10代の真っただ中。昔は中学を卒業する15歳が入会の目安でしたが、今や小学生で入ることも珍しくありません。

奨励会は例えるなら、将棋の専門学校。ただ、何年通ってもプロ棋士が約束されるわけではなく、無事四段になって「卒業」できるのは全体の約2割。狭き門です。

昔は高校へ進学せずに将棋一本に絞る考え方も普通でした。進学に「棋士になる自信がないからだ」という、ちょっと乱暴な考え方まであったほどです。

今はAI(人工知能)の進化もあり、自宅で効率よく高度な技術が学べる時代です。学びの「時間」ではなく「密度」が問われます。何を学ぶかではなく、何を切り捨てるか。今は奨励会員の高校進学率は、ほぼ100%。保証がない勝負の世界だけに自然な流れでしょう。

私は弟子を取る際、「学業をおろそかにしないこと」と、「高校、大学進学も視野に入れること」を全員に念押しします。当時、小学4年生だった藤井聡太六段にも伝えました。

藤井六段が高校進学を表明したのは昨年10月。すでに職業を持っている藤井六段に、いわゆる「学歴」はさほど必要ではありません。若い棋士には、生活のすべてを将棋に費やせる環境は何より魅力であり、それだけに悩んだことでしょう。

将棋の指し手同様、やはり自分で決めることが大事なので、私は特にアドバイスをしていません。強いて言えば、将棋一本に絞った場合はデメリットも多く、日本将棋連盟の公務なども増えることは説明しました。

藤井六段の選択は尊重すべきで、非常に良かったと思っています。規律ある生活は、将棋にもきっとプラスになるはず。また、将棋に関係がない同世代の友達と付き合うことは視野を広げ、後にかけがえのない財産となることでしょう。今後は高校の「出席日数」とも戦わねばなりませんが、体力をつけて乗り越えてもらいたいものです。

すぎもと・まさたか 1968年、名古屋市生まれ。90年に四段に昇段し、2006年に七段。01年、第20回朝日オープン将棋選手権準優勝。藤井聡太六段の師匠でもある。

情報源:(棋道愛楽)棋士と進学 「規律ある生活 プラスに」:朝日新聞デジタル



へぇ・・・