津波で児童死亡の大川小裁判 2審も石巻市と県に賠償命令

津波で児童死亡の大川小裁判 2審も石巻市と県に賠償命令 | NHKニュース

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東日本大震災で犠牲になった宮城県石巻市の大川小学校の児童の遺族が起こした裁判で、仙台高等裁判所は「地震発生前の段階で津波の被害を予測できたのに防災対策を怠った」として、石巻市と宮城県に対し、1審より多い14億3000万円余りの賠償を命じました。遺族の弁護団によりますと、地震発生前の対策の不備を認め、賠償を命じる判決は初めてだということです。

津波で児童死亡の大川小裁判 2審も石巻市と県に賠償命令
津波で児童死亡の大川小裁判 2審も石巻市と県に賠償命令

宮城県石巻市にあった大川小学校では、74人の児童が津波の犠牲になり、このうち児童23人の遺族が起こした裁判で、1審の仙台地方裁判所は、おととし10月、地震のあとの避難についての過失を認め、石巻市と宮城県に賠償を命じました。

双方が控訴した2審の審理では、地震の前の防災対策が適切だったかどうかが重点的に争われました。

26日の判決で、仙台高等裁判所の小川浩裁判長は石巻市と宮城県の責任を認め、1審よりおよそ1000万円多い合わせて14億3000万円余りの賠償を遺族全員に支払うよう命じました。

判決では、「地震発生の前の段階で石巻市が作った地域防災計画では、大地震が発生した場合、学校近くの河川の堤防が決壊して周辺が浸水する事態が想定され、校長らは津波の被害を受ける危険性を十分予測することができた」と指摘しました。

そして、「危機管理マニュアルに避難場所や避難経路などを定める義務があったのに怠り、市の教育委員会も指導しなかった」として、1審では認めなかった地震発生前の防災対策の不備を認めました。

また、判決では、「児童は教師の指示に従わなければならず、行動を拘束される以上、校長や教頭らは児童の安全について、独自の立場から信頼性を検討するべきだった」と述べ、子どもたちを預かる校長らには地域の住民よりはるかに高いレベルの知識や経験が必要だと指摘しました。

遺族の弁護団によりますと、震災の津波をめぐる裁判で、地震発生前の防災対策の不備を認め、賠償を命じる判決は初めてだということです。

遺族 涙流して抱き合う

賠償を命じる判決が言い渡されると、法廷では、遺族たちが天井を見たり目頭を押さえたりしながら涙を流す姿が見られました。

また、涙をこらえるように目をつむったままうつむく人や判決を読み上げる裁判長をじっと見つめる人もいました。

言い渡しが終わると、裁判所のロビーでは「よかったね」「苦しかったね」などと言って肩を震わせながら涙を流して抱き合う遺族の姿も見られました。

原告団長「今後の防災に役立つ判決」

仙台高等裁判所の前では、午後2時半すぎ、遺族たちが、「勝訴」とか、「子どもたちの声が高裁にも届いた」、「組織的過失を認める」と書かれた旗を掲げ、外で待ち受けた人たちに判決を報告しました。

原告団長の今野浩行さんは「多くの方のご協力やご支援をいただき、きょうの判決につながったことを感謝しています。現場にいた先生だけでなく、学校の校長らの責任や石巻市教育委員会の責任も認められました。組織的責任が認められたことは今後の防災に役立つと思います」と話していました。

裁判所の前では、遺族たちが涙を流しながら肩を抱き合う姿も見られました。

遺族「息子は常に心の中にいる」

裁判所の前で「子どもたちの声が高裁にも届いた」と書かれた旗を掲げた遺族の1人、佐藤美広さんは「勝訴という文字の中に、子どもたち一人一人の字が入っている。子どもたちの声が高裁に届いたなと思い、本当にほっとしたというのが最初の気持ちです。息子は常に私の心の中にいるので、こうやって旗を持って話している様子を息子は見ていると思います。息子は『7年間よくやったな。ちゃんと見てるよ』と、そういう感じだと思います。ほっとした涙と、この7年間、心の支えになってくれた人たちに感謝したい」と話していました。

遺族「声を届けることできた」

原告の1人で小学6年生の三男を亡くした佐藤和隆さんは「とりあえずほっとしています。息子があの日、『死んでしまうから避難を』と訴えていたことが認められてうれしい。裁判は長く、逃げ出したくなることもあったが、いろいろな人たちのおかげで自分たちの声を届けることができました」と話していました。

弁護士「画期的な判決 高く評価」

判決のあと、遺族と弁護士は仙台市で記者会見し、この中で吉岡和弘弁護士は「地震が発生する前の平時の段階で、子どもの安全を確保する学校側の義務を認めていて、全国の学校防災にも大きな影響を及ぼすものだ。画期的な判決で高く評価したい」と述べました。

そのうえで、「かけがえのない子どもたちのために遺族一人一人が証拠を集める努力をしてきた。子どもたちの声が高等裁判所に届き、画期的な判決を勝ち取ることができた」と振り返りました。

被告側弁護士「結論が先にある印象」

裁判のあと、被告側の石巻市と県の代理人を務める弁護士、合わせて3人が記者会見を開きました。

この中で、石巻市の代理人の松坂英明弁護士は「津波の予見可能性について、従来の裁判所の判断の枠組みと大きく異なるもので驚いた。児童と教職員が大勢死亡したという結論が先にあり、そこに至るための道筋を作っていったという印象を受けた」と話していました。

そのうえで、「今回の判決は、今後の防災に関する裁判所のメッセージとしては評価できる。一方で、学校側の法的な責任とは別の話であり、震災前の段階で学校に対策を講じるべきとするのは不可能を強いるものだ」と話していました。

そして、今後の方針について「代理人としては、上告できる条件はそろっている。市や県と協議したうえで対応を判断したい」と話していました。

石巻市長「厳しい判決と受け止めている」

判決のあと、石巻市の亀山紘市長が会見し、「現時点では判決の内容を詳しく把握していないが、市の主張が認められず厳しい判決になったと受け止めている」と述べました。

また、2審で新たに認められた市などの事前防災の責任については「判決でどのような表現で述べられているか精査しないと回答できない」と話しました。

さらに、上告するかどうかについては「判決の内容を精査し、あす以降、弁護士と協議して対応したい」と述べました。

専門家「学校現場はしっかり受け止めを」

判決について、学校の防災に詳しい徳島大学環境防災研究センターの中野晋センター長は「判決は、事前の防災対策が不十分で、津波からの避難方法や場所を定めていなかったことが大きな過失だと指摘している。ここが前回の判決と大きく違うところで、全国の学校現場はしっかり受け止めて、学校の安全対策を進める必要がある」と話しています。

そのうえで、「学校の危機管理マニュアルは形だけのケースが多かったが、いったん作って終わりではなく、状況に応じて見直す必要がある。学校だけでなく、地域や行政も含めて組織的に取り組んでほしい」と話していました。

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今度こそ、予算組んで堤防整備しろよ。