国際免許制度なんてやめちまえ。
関西の観光地などで横行する違法な「中国式白タク」。警察が取り締まりを強化する中で、中国人観光客の間では新たな移動手段として、レンタカーが人気を集めています。国際免許証があれば、外国人でも気軽に利用できるとあって、利用者が急増。しかし、そのレンタカーをめぐって「ある違法行為が繰り返されている」との情報が取材班に寄せられました。
謎の「国際免許証」
関西空港にあるレンタカー会社のカウンターに、車を借りようとしている中国人男性の姿がありました。男性は妻と幼い子ども2人とともに、中国の東北部にある都市・大連から来たといいます。
「Q.日本での運転は?」(記者)
「初めてです。まぁ大丈夫。ほかの国でも運転したことがあるから。」(中国人男性)
「Q.日本の免許は持っていますか?」(記者)
「国際免許を持っています。」(中国人男性)運転に自信がある、というこの男性。免許証を見せてもらうと、そこにはなぜか「フィリピン」の文字が。
「Q.免許はどこで取得したのですか?」(記者)
「ヨーロッパです。」(中国人男性)
「Q.ヨーロッパのどこで?」(記者)
「忘れました。時間が経っているので。」(中国人男性)フィリピンの国際免許を、ヨーロッパで取得したと説明する中国人男性。いったいどういうことなのか?詳しく話を聞こうとすると、男性は言葉を濁し、足早に車に乗り込んでしまいました。取材班はその後を追いました。
あわや事故…危険な運転の連続
関西空港を出発してすぐ、男性が運転する車に異変が。
「あ、車が車線からはみ出してますね。」(記者)
「(中国で)普段乗っているように、右側が(追い越し車線ではなく)走行車線と思っているかも知れない。」(取材班のドライバー)高速道路の料金所のゲートにも、フラフラしながら近づいていきます。
「危ない、左に当たる当たる!危ない!」(記者)
車と左側の壁との間は、わずか10センチ足らず。スレスレの状態で通過して行きました。さらに…
「方向指示器を出さずに、今度は車線変更をしました。」(記者)
高速道路を下りた後も、男性のおぼつかない運転は続きます。交差点では…
「左折するのに、指示器を出さないですね。あー、自転車にぶつかる!」(記者)
左に曲がろうと進み続ける車のすぐ先には、道路を横断する自転車が。あわや自転車との衝突事故になるところでした。結局この日、車は大阪市内のホテルに入り、そのまま男性の一家はそこに宿泊しました。
日本国内で運転できない中国人がなぜ?
なぜ中国人の男性が、フィリピンで発行された国際免許を使い、日本で車を運転していたのでしょうか?中国人は通常、日本国内で運転することはできません。道路交通に関する国際的な取り決めである「ジュネーブ条約」に中国が加盟していないためです。日本で車を運転するためには、フィリピンなど、条約に加盟している第三国の国際免許を手に入れる必要があるのです。
ただし、国際免許を発行する「フィリピン自動車協会」によりますと、この方法にはある条件がありました。
「外国人がフィリピンの国際免許を申請するには、現地を訪れる必要があります。」(「フィリピン自動車協会」からのメールでの回答)
大阪市内のホテルで宿泊した翌日も、男性一家は車で出かけました。
「高速道路に乗るようです。あ、また停止した。乗るのか、乗らないのか。あ、急に左に行った!」(記者)
今度は高速道路の入り口で止まり、その後すぐに急ハンドル。中国人男性はなおも危険な運転を繰り返します。
「停車位置を越えてますね。」(記者)
「あー、道路上で止まっちゃいました。」(記者)男性の国際免許証は本物なのか…。取材班は車を降りた男性に疑問をぶつけたところ、こう話しました。
「国際免許はちゃんと正式な手続きで取った。どこで、どうやって取ったかは、はっきり覚えていない。」(中国人男性)
結局、男性がフィリピンの国際免許を手に入れた経緯は明かされませんでした。
「国際免許証」販売業者がネット上で暗躍
日本を訪れた、ある中国人男性が投稿したインターネットの動画では、ドライブの風景が流れる中、「ネット通販で買ったフィリピンの国際免許でレンタカーを借りた」と説明しています。中国のネット上ではこうした投稿が多く見られます。
さらに中国の通販サイトに「国際免許」と入力すると、「日本でドライブ」「本物を保証」とうたう宣伝文句が画面上にずらり。国際免許を代理で作成する業者が多数存在しているのです。販売されていたフィリピンの国際免許の価格は、日本円で4万円ほど。業者に電話で話を聞いてみると…
「Q.この国際免許は日本でも使えますか?」(記者)
「はい。日本でも使えます。」(中国の「フィリピン国際免許」通販業者)
「Q.滞在歴が必要と聞きましたが?」(記者)
「大丈夫です。中国の運転免許証があれば。うちにはルートがあって、関係者がいるので。」(通販業者)取材班は、その業者から「フィリピンの国際免許証」を入手。はたして、日本で使うことができるのでしょうか。日本のレンタカー会社に問い合わせると…
「ジュネーブ条約の免許証だったら大丈夫です。一応、ちゃんとした本物であれば。」(日本のレンタカー会社)
「Q.インターネットで買っています。これで大丈夫ですか?」(記者)
「ちょっと偽免許証かはわからないですね。」(レンタカー会社)
「Q.本物を確かめる手段はありますか?」(記者)
「ありませんね。」(レンタカー会社)「本物であれば使える」とのこと。ただ、レンタカー会社では発行元への照会まで手が回らず、免許証が本物か偽物かを確認することは難しいということです。
偽の免許証による運転横行で潜む危険
「フィリピン自動車協会」では、国際免許証発行の最低条件として「1ヶ月以上の滞在経験」と「1年以上滞在できるビザの取得」が必要としています。つまりネットで取引されている免許は、すべて偽物だと言います。
中国事情に詳しい、ABCテレビ「キャスト」コメンテーターの拓殖大学教授・富坂聰さんは…
「中国の通販サイトでは、本当にありとあらゆるものが売られている。どこかの身分証だとか、偽造したものが売られています。」(富坂聰さん)
富坂さんはこうした偽免許を使う中国人ドライバーたちには、ある危険が潜んでいると言います。
「中国では歩行者優先ではないので、歩行者が車をよけてくれる。そういう感覚で日本で運転すると大変なことになる。日本と中国とでは、感覚的に非常に遠いところがあると思います。」(富坂さん)
日本からすれば乱暴に感じるような運転が、驚くべきことに中国では一般的だと言います。こうした交通意識の違いが、日本で事故を引き起こしかねないと言うのです。
「正しい手順で国際免許を必ず取ってくださいと、そういう一つの道を示しながら、きちっと取り締まることが大事です。」(富坂さん)
情報源:【ABC特集】本物?ニセモノ? 謎の「国際免許」を持つ中国人観光客の運転が危ない(ABCテレビ) – Yahoo!ニュース
というか、国際免許はオンラインに情報登録して、本人認証しろよ。