力ぶつかる、最高峰の戦い 佐藤天彦名人×羽生善治竜王 第76期将棋名人戦七番勝負、11日開幕:朝日新聞デジタル

へぇ・・・


佐藤天彦名人(30)に羽生善治竜王(47)が挑戦する第76期将棋名人戦七番勝負(朝日新聞社、毎日新聞社主催、大和証券グループ協賛)が11日、東京都文京区で開幕する。将棋界で最も歴史がある最高峰の座を、2大タイトル保持者が争う注目の対決。決戦を控えた両者に意気込みを聞いた。(村瀬信也、村上耕司)

■注目される対局、やりがい 佐藤天彦名人

佐藤天彦名人=迫和義撮影
佐藤天彦名人=迫和義撮影

2年前、羽生さんに初挑戦した時は、初めてタイトルを取れるかどうかという瀬戸際の意識で戦っていました。今回は心理的に多少の余裕はあります。ただ、追い込まれていたからこそ出る力もあるし、余裕がないと指せない手もある。タイトルを守りたいという気持ちも出てくるとは思いますが、自然な状態にある自分の将棋を指すということは変わりません。

昨年、名人を防衛してから、振り飛車をやったり、雁木(がんぎ)をやってみたり、今までやってこなかったような将棋を意識的に指してみました。正直、なかなか結果が出なかったこともあるけれど内容的にはいろいろな発見がありました。将棋に対する興味もしっかりあって勉強もできているので、調子は悪くないと思う。この1年で培ったもので、少しでも前回との違いを出せたらいいなと思います。

羽生さんはプレーオフの印象が強い。豊島(将之)さん、稲葉(陽〈あきら〉)さんと若手2人にいい内容で勝っている。去年は不調じゃないかと言われた時期もありましたが、秋から冬にかけてしっかり持ち直し、誤解を恐れずに言えば最近は非常に調子を上げられていい状態です。相手としては脅威なんですけれども……。

国民栄誉賞を受賞され、タイトル100期がかかる羽生さんとの戦いは必然的に注目されるし、アウェー感もあるかもしれない。ただ当事者として自分が指すことができるのは、やりがいもある。人生でそういう出来事は多ければ多いほど面白い。楽しみです。思いっきりぶつかりたい。

さとう・あまひこ 1988年、福岡市生まれ。2006年10月に18歳でプロ四段。08年と11年に新人王戦優勝。15年、王座戦でタイトル初挑戦。16年の名人戦で当時の羽生名人を破って初タイトル獲得。17年、名人戦初防衛。16年に第2期叡王戦で優勝し、翌年電王戦でコンピューターソフトと対戦。

■タイトル100期、目指したい 羽生善治竜王

羽生善治竜王=迫和義撮影
羽生善治竜王=迫和義撮影

今期のA級順位戦は、前半で2敗して、挑戦を目指しているという感覚がないまま、1月に佐藤康光さんに負けて4敗目を喫し、終わってしまったなあという感じでした。最終局は抜け番で気楽に見ていたので、6者プレーオフになってもう一度ギアを入れ直しました。せっかく名人挑戦という機会をつかめたので、気持ちを切り替えて臨みたい。自分の調子は今がまずまずの状態。この緊張感やコンディションを七番勝負まで持続できればと思っています。

2年前の佐藤(天彦)さんとの名人戦は終始押されているような感じで、完敗でした。非常に攻撃的なスタイルで、受けるときにはしっかり受ける。バランスの良さが大きな特徴です。さらに最近はいろんな作戦を試みている印象もあります。

この2年、いろんな手が出てきて戦術も変わってきました。今回はどんな戦いになるのか、予想がつきにくい。名人戦は期間も持ち時間も長丁場なので、入念な準備が大切です。自分なりに納得できる、満足できる、全部の力を出し切れたというシリーズにしたい。

故米長邦雄永世棋聖は49歳で名人に挑戦しました。もう25年くらい前の話ですが、自分もそういう年齢に近づいているんだと思うとちょっとあぜんとします。最近は若い人の挑戦を受ける機会も随分増えました。ただ特別に変わった感じはないし、向かっていく気持ちは大事だと思います。

タイトル100期については、一つの数字として目指していきたい。

はぶ・よしはる 1970年、埼玉県所沢市生まれ。85年、15歳でプロ四段。96年に史上初の七冠独占。2008年、名人通算5期で十九世名人の資格を得る。17年、永世竜王の資格を獲得し「永世七冠」に。今年2月に将棋界で初めて国民栄誉賞受賞。タイトル獲得99期。現在は棋聖を併せ二冠。

■長期戦強い名人、駆け引きの挑戦者 深浦康市九段

深浦康市九段
深浦康市九段

佐藤名人のフットサル仲間で、羽生竜王とは6回タイトル戦を戦っている深浦康市九段(46)に七番勝負の見どころを聞いた。

A級順位戦は史上初の6者プレーオフになりましたが、羽生さんは混戦をよく勝ち抜きました。王位、王座を失った後に竜王を奪取するという波の激しい1年でしたが、チャンスをものにしました。

最近は以前より踏み込む場面が目立ち、一言で言うと「吹っ切れた」感じがします。プレーオフ4回戦の豊島将之八段戦でネット中継の解説を務めましたが、図の局面で羽生さんが指した△4八とを見た時は、何かの間違いではないかと思いました。稲葉陽八段との挑戦者決定戦は、うまく粘りました。いいイメージを持って七番勝負に臨んでくると思います。

プレーオフの豊島将之八段―羽生善治竜王戦で、先手の豊島八段が▲3五桂と打った局面。4三を守る△3三金が予想されていたが、羽生竜王は△4八とと踏み込み、勝利を収めた。
プレーオフの豊島将之八段―羽生善治竜王戦で、先手の豊島八段が▲3五桂と打った局面。4三を守る△3三金が予想されていたが、羽生竜王は△4八とと踏み込み、勝利を収めた。

佐藤さんは最近、対局では結果がなかなか出ていませんが、目に見えて調子を崩しているという印象は全くありません。取材などの仕事も以前より多いでしょうし、年下との対局も増えています。良くない意味で名人というタイトルに慣れ、バランスが難しい時期なのかもしれません。私も王位のタイトルを取った時、自分は変わっていないつもりでも、周囲の見る目が変わったのを感じました。ただ、佐藤さんは名人戦の長い持ち時間が合っているので、開幕すれば調子が上がってくるでしょう。

私は棋士仲間とフットサルをしているのですが、佐藤さんとも月に1回程度、ご一緒しています。佐藤さんの将棋をサッカーに例えると、90分走れるミッドフィールダータイプで、長期戦に強い選手と言えるでしょうか。羽生さんは駆け引きがうまく、相手の意表を突くループシュートもできるフォワードというイメージです。

2年前の七番勝負は横歩取りシリーズでした。佐藤さんが後手番なら、今回も横歩取りになりそうなので、羽生さんは対策を練っていると思います。プレーオフに続いて羽生さんは積極的に指すでしょうし、佐藤さんも結果が出ていないだけに、前に出ようとするでしょう。中盤のせめぎ合いが激しい将棋が見られそうです。

 

■両者の成績(3月末現在)

◇タイトル戦登場(76期名人戦を含む)

<羽生> 134回(獲得99期)

<佐藤> 5回(獲得2期)

◇通算成績(勝率)

<羽生> 1398勝565敗(0.712)

<佐藤> 319勝149敗(0.682)

◇2017年度(勝率)

<羽生> 32勝22敗(0.593)

<佐藤> 16勝19敗(0.457)

◇対戦成績

<羽生> 6勝

<佐藤> 8勝

■第66期以降の名人戦(★が勝者)

<名人>      <挑戦者>

66期 2008年 森内俊之  2―4 羽生善治★

67期 2009年 羽生善治★ 4―3 郷田真隆

68期 2010年 羽生善治★ 4―0 三浦弘行

69期 2011年 羽生善治  3―4 森内俊之★

70期 2012年 森内俊之★ 4―2 羽生善治

71期 2013年 森内俊之★ 4―1 羽生善治

72期 2014年 森内俊之  0―4 羽生善治★

73期 2015年 羽生善治★ 4―1 行方尚史

74期 2016年 羽生善治  1―4 佐藤天彦★

75期 2017年 佐藤天彦★ 4―2 稲葉陽

■七番勝負の日程

第1局 4月11、12日 ホテル椿山荘東京(東京都文京区)

第2局 4月19、20日 辻のや花乃庄(石川県小松市)

第3局 5月8、9日   興福寺(奈良市)

第4局 5月19、20日 アゴーラ福岡山の上ホテル&スパ(福岡市)

第5局 5月29、30日 万松寺(名古屋市)

第6局 6月19、20日 天童ホテル(山形県天童市)

第7局 6月26、27日 常磐ホテル(甲府市)

※持ち時間は各9時間(2日制)。どちらかが4勝した時点で決着。

◆熱戦の模様は、紙面のほか朝日新聞デジタル(http://www.asahi.com/)でもお伝えします。棋譜は有料の名人戦棋譜速報(http://www.meijinsen.jp/別ウインドウで開きます)でも見られます。

情報源:力ぶつかる、最高峰の戦い 佐藤天彦名人×羽生善治竜王 第76期将棋名人戦七番勝負、11日開幕:朝日新聞デジタル





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